最近は「ジョーカー」の監督が参考にした作品として挙げて有名な作品。
今や押しも押されぬ巨匠、マーティン・スコセッシ監督の出世作です。
アメリカン・ニューシネマの流れをくむ作品で、しっかりとプロットが構成された作品じゃない。
しかしプロットありきの作品には表現できないものが溢れてる。
鏡に向かって銃を向けるデニーロから滲み出る狂気。
久しぶりに見たけど、やはり凄い作品。
でも今の日本人にはちょっときついかもしれない。
ネタバレ度80%。
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。
でもストーリーと呼べるものはほとんど無いので、読んで見ても大丈夫かな。
この記事を書いている2023年10月現在、U-NEXTでは見放題配信されています。
DVDで観賞したい方は私も利用している宅配レンタルがお勧めです。
分析
タクシードライバーのトラビス(ロバート・デニーロ)の孤独と狂気を描く内容。
前半はトラビスの日常が描かれる。
ここは人によっては見てて退屈かもしれない。
トラビスは街で見かけて気に入った女性、ベッツィーをデートに誘う。
しかし出かけた先はポルノ映画。
自分がいつも見ていて、カップルもいるからいいと思ったのだが、ベッツィーは怒って帰る。
うん、まあ、当たり前だけど。
でもトラビスはベッツィーが何故怒るのかわからない。
客席にはカップルもいるし、一体何が問題なのかと。
以降、ベッツィーに避けられ続け、「殺してやる!」と逆ギレ。
この辺りの不安定な精神状態を演じるデニーロはさすが。
ほんとにこんな奴いそうと思わせてくれるほどリアルです。
まあ、ほんとにいるけど。
更に自分の状況への苛立ちも募っていきます。
街を見れば娼婦や売人が跋扈している。
この泥沼から抜け出したいが、どうすればいいのかわからない。
同僚に相談すると、返ってきた答え。
「あまり考えるな、どうせ俺たちは負け犬だ」
この時の納得できないというデニーロの表情がいい。
このように前半はトラビスの孤独や苛立ちを執拗に描く。
そして中盤、トラビスは銃を購入し、同時に体を鍛えだす。
やはり面白くなるのはこの中盤からかな。
鏡に向かって銃を向け、試射を繰り返し、標的を捜す。
ここで明確な標的がいないのが恐ろしい。
ただ、何かをしたい、変えたいという思いだけ。
12歳の娼婦アイリス(ジョディ・フォスター)を助けようとするが、大きなお世話と拒絶される。
そこでトラビスは次に大統領候補を殺そうとする。
政治の事はよくわからないのに。
大物を殺せば、政治家たちもまともに仕事をするという考えか。
社会も少しは良くなると思ったのか。
しかも突然モヒカン。何でやねん。
この大統領候補殺害はSPに気付かれて失敗。
はっきり言ってストーリー的にはこの大統領候補暗殺未遂は無くても成立するんだけど。
でも映画的には絶対に必要。
モヒカンもこれ以上無く必要。どんな意味が?とか聞いちゃだめ。
そしてトラビスは娼婦アイリスを食い物にする男たちを次々と殺していく。
このクライマックスの銃撃、デニーロの狂気は凄いですよ。
当時としてはかなりショッキングなシーンだと思います。
見終わるとズシンと重いものが残ります。
誰かに恨みを持つわけでもなく、悪事を好むわけでもないトラビスがラスト、何故人を殺しまくるのか。
言語化できない感情を感じさせる傑作です。
確かに熱狂的にこの作品を愛する人、多いと思いますよ。
そんなトラビスに憧れる人、「俺もトラビスだ!」と思った方はどうかまず落ち着いてほしい。
これで満足してくれ。頼む。
脚本家も監督もこの作品に感銘を受けたらまず落ち着こう。
似たようなものをやろうとすると大火傷する。
今の若い映画ファンは知らないだろうけど、80年代の日本映画暗黒時代、とにかく暗い映画が多かった。
ヒット作は皆無。
映画ファンでさえ邦画をほとんど見なかった。
それは多分、予算の問題もあるけど、作り手側がアメリカン・ニューシネマの流れ、この作品とかに感化された人が多すぎたんじゃないか。
こうゆうの、プロット重視じゃないから誰でも書ける気がするんだよね。
しかしそうはいかない。
自分はマーティン・スコセッシにはなれない。その苛立ち。みんなトラビス。
以上です。だから私は感動しました。
あと、この作品、小さな描写がいいんですよね。
トラビスが偶然、強盗を射殺するんですけど。
店主にうながされて逃げるんだけど、その後、店主は半死状態の犯人を「これで五回目だ!」と殴り続ける。
街の闇の描き方がえぐい。
音楽も素晴らしいです。
映画音楽の巨匠、バーナード・ハーマンによるスコア、全編に流れるサックス。
都会の孤独が胸を打つ。
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