今や日本を代表する是枝監督。
作品はいつも話題になるので、ほとんど見ています。
しかし毎回、家族をテーマにしたヒューマンドラマなので、あまり新味を感じる事が無く、上映初日に駆け付けるというような、熱心なファンではない。
何となく、「こんな話だろうなー」というのが予想できちゃって、しかも見ると、概ねその通り。
なのでいつもレンタル待ちで、それでもなかなか手が伸びない。
結局、何だかんだで見るんだけど。
それで見てみたら、やはり感動する。
いつもハードルは高く設定しているんだけど、少し超えてくるんだよね。
というわけで、今回も良作でした。
でもそろそろ違うテーマ、ジャンルも撮っていいんじゃないかと思う。
それこそ、時代劇とか。
失敗しても挑むべきだと思うんだけど、日本映画界の現状、失敗は許されないのかもしれない。
と思ってたら、次回作は坂元裕二脚本らしい。
内容はどんな感じになるのかな、これは新味が期待できそうだ。
ネタバレ度50%。
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。
分析
ベイビーボックスに捨てられた赤ちゃんを攫い、子供を熱望している夫婦に売っているソン・ガンホとカン・ドンウォン。
今回は赤ちゃんを捨てた母親のイ・ジウンと共に、赤ちゃんを買ってくれる夫婦の元へ出向くロードムービーになっています。
なかなかシビアな設定です。
そして脚本の上手さを感じるのは、この三人を尾行するペ・ドゥナ(日本の映画ファンにはおなじみ!)とイ・ジュヨン(「梨泰院クラス」でトランスジェンダーの役を演じた彼女!)の刑事二人の存在。
この二重構造はロードムービーでは珍しく感じる。
この刑事二人も価値観が異なっており、物語が進むうちに意見の衝突を見せて、見事な群像劇になっている。
この点、是枝監督らしく、多面的に見えるように工夫されています。
そして普通、この五人ががっつり絡み合うような脚本にするんだけど、是枝監督はいつもそういった流れから少し外すんだよね。
観客が望むものを素直に提示しない。
そこが評価されている部分でもあるんだろうけど、私なんかは物足りなく感じたりもする。
もっと言うと、映画は一番葛藤する、変化するキャラクターを主人公に据えるのが定石。
それは観客が一番共感し、感動できるから。
だからこの映画で言うと、本来なら主役は赤ちゃんを捨てる母親なんだよね。
この企画ならほとんどの脚本家は赤ちゃんの母親、イ・ジウンを主人公に据える。
ちなみにこの女優さん、シンガーソングライターで大人気だそうな。
「国民の妹」と呼ばれてるとか。
そう考えると、この作品、オールスターキャスト。是枝監督、凄いな!
そして今の主人公のソン・ガンホはそれほど葛藤も、変化も無い。
何故、この立ち位置で主人公なのか。
でも是枝監督はこの点、確信犯だろう。
彼を主役にとあて書きしたらしいしね。
しかし、こうゆう「ずらし」が、私が是枝作品が苦手な部分ではある笑
と、文句を言いながらも、やはりラストに向けていいシーンが並びます。
いつもよりヒューマニズムな、前向きなメッセージだけど、これは監督の変化だろう。
集大成的な印象を持ったので、今後はどんどん違うジャンルに挑戦してほしい。
いつもそう言ってる気がするけど笑
そして台詞でも作中、ハッとするような瞬間がいくつかあって、やはり素晴らしいです。
母親が赤ちゃんを捨てる事を責められて言い放つ一言。
「産む前に捨てるのと、産んでから捨てるの、何が違うの?」
ドキッとしました。
これだけで良作になるのが決定したような、核心を突く台詞。
他には、赤ちゃんを売る現場を押さえるため、今か今かと待っている刑事がふと言い放つ一言。
「自分たちが一番赤ちゃんを売りたいみたいですね」
これもまた、ドキッとする良い台詞です。
何だかんだ、是枝監督、やはり凄いな。
でもあえて言う。少し苦手だ。
以上です。だから私は感動しました。
でもこれ、何で韓国で撮ったんだろ? 日本でよくない?
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