「ディパーテッド(2006)」感想。完璧なオリジナル作品をハリウッドがリメイク、その違いを確認!

タ行
引用元 映画.com




オリジナルは香港サスペンス映画の金字塔、言わずもがなの「インファナル・アフェア」。




その素晴らしい設定と、驚愕の完成度の高さで日本でも西島秀俊さん主演でリメイクされました(未見)。




で、オリジナルの本家は100分弱、今回のリメイク作品「ディパーテッド」は150分弱。

この五割増しの上映時間は何処から来るのか?

今回はその変更点について言及します。



その変更に、ハリウッドらしいなあと思う点もあり。
それでもオリジナルの方がいいなあと思う点もあり。

その違いを楽しみつつ、リメイクについて考えるのに良い映画かなと思います。


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分析


警察とマフィアのスパイ二人を描く。
大まかな設定はオリジナル、リメイク共に同じです。


アンディ・ラウの役をマット・ディモン。
トニー・レオンの役をレオナルド・ディカプリオが演じます。

ちなみに制作にブラッド・ピットが名を連ねています。
何故、マット・ディモンの役を演じなかったのか不思議。



では、冒頭に述べた上映時間が五割増しになっているその理由。

大雑把に言うと、主演二人のキャラ紹介、掘り下げに60分のオリジナルエピソードを作り、それを丸々、冒頭に加えた構成です。



本家はいきなりスパイ二人を主軸にした警察とマフィアの攻防から始めてます。

私も以前ブログで「これは本来、クライマックスにもってくるようなエピソード」と書いたのですが、今回のリメイクではこの攻防にいたるまでに、じっくりと主役キャラを見せてます。


よって、このリメイク作は前半のこの60分をどれだけ魅力的に見せられるかが肝。



しかしそこはさすがのマーティン・スコセッシ。
お得意の激しいバイオレンス描写で一切飽きさせません。



それでもこのリメイク作を「冗長」と述べる方もいます。
その場合、理由はこの前半があるからと言えます。

はっきり言って、オリジナルの方を「冗長」と言う人はいない。

あの作品のテンポの良さは異常値ですから。



でもこのキャラ紹介を前半に持ってくるのはハリウッドらしいなあと思いました。

ハリウッドスターは脚本を読む折、自分が演じる役の深み、変化を重視するらしいので、キャラの掘り下げが必須なのでしょう(まず最初と最後だけ読んでどれだけキャラが変化しているかを見ると聞いた事もあります)。



よって脚本の構成を見ると、オリジナルでは60分の地点にあったミッドポイント(トラウマ級のショックシーン!)が、リメイクの今作では105分の地点にあります。

冒頭のキャラ紹介に使用した60分、ほぼまるまるずれ込んでます。

しかし綺麗にずれ込んでいるのを見ると、時間配分に関しては計算通り。
よって、後半は時間配分も含めてほぼオリジナルと同じです。




さて、今回のリメイク、一番の売りは何と言っても監督がマーティン・スコセッシという点と、豪華なキャスト。


冒頭、いきなり流れるローリング・ストーンズの「ギミー・シェルター」とジャック・ニコルソンの不穏極まりない存在感からして凄まじい破壊力です。



この顔でカフェ店員の少女に「いい女になったな、月のものはきたのか?」と尋ねるニコルソン。
流れるのはあの「ギミー・シェルター」。

引用元 シネマトゥデイ

この瞬間、誰もが脳内からおかしな何かが分泌されて、叫びたくなる衝動に駆られます。


もはや少女が無事でいられるとは到底思えない。


この日の夜にでも拉致られて犯されるのだろうと確信してしまうこの不穏さ。



この不穏さを出せるのはニコルソンだけ!

ニコルソンとスコセッシのコラボがこれほどの破壊力を生むとは。
完全に混ぜるな危険!状態です。

しかしもう十年以上、映画出演していないけど、最近はどうしているのだろうか。





そしてレオナルド・ディカプリオの上司について。
オリジナル作ではアンソニー・ウォン一人だったのですが、今作はマーティン・シーンとマーク・ウォールバーグ、二人います。


中でもこの作品で高く評価されたマーク・ウォールバーグの存在感が素晴らしい。

毒舌キャラなんだけど、その台詞の数々は脚本家の確かな筆力を感じます。


マークの迫力はこのリメイク作の大きなアクセントになっており、彼だけでも見る価値あり。

明らかにノリノリです。


本人のありあまるSっ気が隠せていない。


ストーリー上、後半いなくなるのが寂しかった。



しかしオリジナル作では一人だった役を何故マーティン・シーンと二人に分けたのか謎だったが、ラストまで見て疑問は氷解。


そしてこのラストはやはりハリウッド的。

綺麗にまとめてるんだけど、私はやりきれない余韻の残るオリジナルの方が好きですね。



更に、このラストの変更に繋がっていくんだけど、マット・ディモンのキャラもオリジナルのアンディ・ラウの方が好みです。


アンディ・ラウはラスト、マフィアのボスを裏切るんですけど、その理由は「善人になりたい」という誰もが納得する動機でした。

今回のマット・ディモンは「自分もボスに売られる可能性があるから」という理由で裏切ります。
行動原理としては理解できるが、キャラに共感できる要素ではない。

結果、マットは悪人のまま終わるので、キャラの魅力はオリジナルに軍配が上がります。



更にオリジナルとの大きな変更点として、ヒロインの統一もあります。

オリジナルではアンディ・ラウとトニー・レオン、どちらにも恋人がいるんですけど、

今作ではレオナルド・ディカプリオとマット・ディモン、ヒロインのヴェラ・ファーミガの三角関係にして、主役二人の関係性を濃くしている。

ここは非常に上手い変更点だと思いました。

このリメイクでヒロインが二人いたら、キャラが多すぎて大渋滞していたでしょう。
さすが!

このヴェラ・ファーミガは当時無名だったけど、大抜擢に応えて見事な美貌と存在感。

ラストは「第三の男」のアリダ・ヴァリのような神々しささえ、醸し出していました。




前半一時間使ってキャラを掘り下げている今回のリメイク作品。

スコセッシのバイオレンス描写と音楽、何よりオールスターキャストを楽しめてアカデミー賞受賞も納得の完成度。


ただ、オリジナルとどちらがいいかと聞かれれば、あまりの構成力に唖然とした、異常なテンポの良さを感じるオリジナルをあげますね。


以上です。だから私は感動しました。





そして今日、部屋のコンポからずっと流れているのはギミー・シェルター。


エアガンでも撃ちまくりたい。

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