「卒業(1967)」感想。若さとは暴走! ストーキングを純愛と呼んでいた時代がありました!

サ行
引用元 映画.com

いわずもがな、青春映画の名作とされています。


若い映画ファンが知らないような古い映画は記事にしないつもりだったんだけど。
近々「500日のサマー」を見直そうと思っていて、その映画に「卒業」が出てくるんです。

そのため、「卒業」も久しぶりに見てみたら凄い作品でした。



花嫁を結婚式からさらうラストがとにかく有名。

しかしよく見るとこの作品、上質なコメディ。



ダスティン・ホフマンの暴走にいちいち「おい!」とツッコミを入れてしまいます。
そんな非常に懐の深い今作、是非、紹介したくて記事にしました。



ネタバレ度90%
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。
素晴らしい作品なので何でもいいから見てほしい!





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粗筋

大学卒業後、ベン(ダスティン・ホフマン)は進学も就職もせず、父親の友人の妻、ロビンソン夫人(アン・バンクロフト)と不倫する。

だがベンはロビンソン夫人の娘、エレーン(キャサリン・ロス)を好きになってしまう。

分析

粗筋だけ読むと、ドロドロの三角関係を想像します。

だがベンの若さゆえの暴走が重苦しさを感じさせず、むしろ滑稽さを感じさせる。


「若さゆえの暴走は傍から見ればただのネタ」という事を思わずにはいられない。

その意味では確かに青春映画の傑作。
間違いない!

そしてまず言っておかなくてはならない。
作品を彩る音楽がとてつもなく素晴らしい。

全編に流れるサイモン&ガーファンクルの名曲の数々。
「サウンド・オブ・サイレンス」「スカボロー・フェア」

ベンの暴走の合間に繊細な歌声とメロディが流れ、内容はコメディなのに、上質なドラマを見せられている気分になる。


音楽の力は大きい。改めて認識させられる。


ここからはストーリーを追って、紹介していきます。
ネタバレになります、注意!




作品の冒頭。

親ほど年上のロビンソン夫人に誘惑されて、動揺し、なんだかんだとはぐらかす真面目なベン。

しかしこの人妻がとんでもなく肉食。

引用元 映画.com

見てくださいよ、ダスティン・ホフマンのこの完全にのまれてる表情!


結果、性交するんですが、そこまで何と40分!

肉食人妻が純情な青年を口説き続けるせめぎ合いを40分も見せ続けるこの狂った構成。

今の映画じゃまず無いですよ。

しかもそれが抜群に面白い。

逃げ回るダスティン・ホフマンと誘惑するアン・バンクロフトの演技が抜群。

結果、「あなた、童貞でしょ。ごめんなさいね」とバカにされた瞬間、「違うよ!」と襲いかかるベン。

この瞬間、わかりました。


こいつ、絶対に童貞です。


最高。

引用元 映画.com

一度やったらその後はもう猿。
真面目なベンはどこへやら。

わかりやすい青春。

最高。


その後、父親同士がベンとロビンソン夫人の娘、エレーンの二人をくっつけようとして、デートするよう強要します。
もちろん、ロビンソン夫人は面白くなく、怒ります。


ロビンソン夫人が怖いベンはエレーンとの初デートに何とストリップ劇場へ。


そこで意地悪するんですが、エレーンが泣き出して激しく動揺。
謝罪していると、泣いているエレーンが愛おしくなってキスをする。

おい。


やってる事が無茶苦茶ですベン。


この辺りのダスティン・ホフマンの混乱ぶりが最高に面白い。
これがデビュー作なんだけど、この時点で既に演技モンスター。



だがベンの暴走はこんなもんじゃあありません。更に加速します。


すっかりエレーンに惚れてしまったベン。

引用元 映画.com


調子に乗って、翌日もデートの約束をする。

そうと知ったロビンソン夫人は激怒。
この関係を娘にばらすと言いだします。

いいですね、夫人もなかなか狂ってます。


しかしベンの暴走はやすやすとその上を行きます。


夫人に脅されてわかりやすく動揺したベンはエレーンの元へダッシュ。
逃げようと言ったかと思えば、自分で「君の母さんと不倫しているんだ!」とばらします。

当然、嫌われて追い出される始末。そりゃそうだろう!



でも既にベンのスィッチは入っています。
嫌われたぐらいじゃあ、引き下がりません!



両親にエレーンと結婚すると宣言し、ストーキングを開始します。
エレーンが通う大学の近くにアパートを借り、毎日、大学まで行ってエレーンをつけ狙う。


アウトです。今なら完全に留置場です。

思い出してください、ここまでするけど、エレーンとの関係はデート一回しただけです。

母親と不倫してたのにここまでやるか。
一周回って尊敬の念さえ抱いてしまう。


そして衝撃なのは、ストーキングされて満更でもないエレーン。

そうなるとベンは止まりませんよ! でもそんな事あるの!


しかしもちろん、このまま平和には終わりません。

この作品の一番の被害者、ロビンソンさんが登場します。
暴走モンスターに妻を寝取られ、娘まで奪われそうという、観客の同情を一身に受けて。

ベンと対峙するんですが、この会話がもう凄い。

「家内とは別れる事になったよ」
「どうしてですか?」
「どうしてだと!?」
「僕が愛しているのはお嬢さんの方です」


ベン、わかった。お前、サイコパスだよ。

絶句するロビンソンさん。そりゃそうだろう、こっちまで泣きそうになる。
かたや太々しいベン。もう何やかんやで笑っちゃいます。


ロビンソンさんはもちろん激高。
エレーンにベンと会う事を禁止して、彼氏と結婚させます。

そう、エレーンには長年付き合ってる彼氏がいるんですよみなさん!



しかしもちろん諦めきれないベン。
ここであの有名な、結婚式当日に花嫁をさらっていくラストになります。

引用元 映画.com

見てくださいよ、この幸せそうな笑顔!
中ではみんな泣いてます。


だめだ、どうしてもみんなのように感動できない。

しかし最高だ、ベン。

若さとは暴走、それを具現化したあなたを愛さずにはいられない。
絶対に友達にはなれないけど。



エレーンを連れ出し、バスに乗り込むベン。
笑い合う二人が、段々、真顔になります。
将来に対する不安が一気に押し寄せてきている様子を見せて、映画は終わります。


ああ、最後のベンの真顔が忘れられない。

あの顔は「酔った勢いと雰囲気でコクってしまったものの、そんなに好きじゃなかった事に気付いた時」の私の顔です。



いや、ほんとこんなに素晴らしい作品だったかと、あらためて思いましたよ。
是非、みなさんにも見ていただきたい。全力で推す!


以上です。だから私は感動しました。



最近はもう言われないけど、昔は外れ作品のない俳優と言われていました。
ダスティン・ホフマン。

改めて作品群を見ると凄い。
この機会に見直したいな。

おすすめダスティン・ホフマン出演作品


○「わらの犬」
バイオレンス映画の巨匠、サム・ペキンパー監督の代表作の一つ。
クライマックスの暴力は凄まじいですよ、レンタルもなかなか無いんですよね、また見たい!



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