アカデミー作品賞受賞も納得。
エンドロールの頃には放心状態になるのが必須の、極限の人間ドラマ。
ただ、この作品、ロシアンルーレットを効果的に扱っているんだけど。
元々、ロシアンルーレットだけを題材にした脚本だったらしく、そこにベトナム戦争の要素を加えており、実際にベトナムでロシアンルーレットが行われていたわけではないらしい。
描かれる感情がリアルすぎて、その点、フィクションに思えないので、そこはちゃんと意識しておきたいところです。
ネタバレ度70%
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。
この記事を書いている2023年10月現在、U-NEXTでは見放題配信されています。
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粗筋
マイケル(ロバート・デニーロ)とニック(クリストファー・ウォーケン)、スティーブン(ジョン・サヴェージ)がベトナムに出征し、大きな傷を抱えて帰国する。
分析
この作品、脚本に不満を言うなら、前半の結婚式の長さ。
あまりに長い。
誰の葛藤も描く事無く、結婚式の狂騒を何と50分も見せ続ける。
普通、無い笑
正直、今の感覚なら、プロデューサーが絶対に切ると思う。
そして結婚式が終わり、狩りの詩情あるカットを挟み、映画も一時間を超えて突然、ベトナムに場面が変わる。
そしてデニーロ、ウォーケン、サヴェージの三人はあっという間にベトナム兵の捕虜になり、ロシアンルーレットを強要される。
このロシアンルーレット、ここでのデニーロたちの演技はまさに圧巻。
ここが作品の肝であり、このシーンだけで傑作決定。
前半の結婚式が長すぎると指摘したけど、観客として退屈していたところに、この狂気のロシアンルーレットを叩きつけられて、感情の振り幅がやばい。
ここが三人に大きなトラウマを植え付けるんだけど、そのあまりの迫力に観客のこちらがPTSDになりそうだ。
そう考えると結婚式があれだけ長いのも意味があると思ったりするが、いや、それでもあれは長すぎるかな。
そしてベトナム戦争を扱った映画なんだけど、実は戦場のシーンは少ない。
このロシアンルーレット、そして三人で逃亡するシーン、合わせて三十分も無く、これで戦場のシーンは終わり。
それでも戦場の恐怖、その異常さを十二分に表現してる。
ここはマイケル・チミノ監督の執念さえ感じる演出ゆえでしょう。
そして映画はミッドポイント。
デニーロが故郷に戻ってくる。
所在無げなデニーロだが、戦地で生き別れたスティーブン(ジョン・サヴェージ)が既に帰国していると聞く。
ベトナムでの逃亡時、デニーロは足を負傷したスティーブンを見捨てず、背負って逃げた。
特別な絆を持つ友だ。
だが現在の所在に関しては、誰もが口を噤む。
おそらくスティーブンはまともな状態ではないのだろう。
ここ、スティーブンとすぐに再会させないのが、脚本として上手い。
おそらくはスティーブンとの再会をクライマックスに持ってくるつもりなんだろうとここで考えるが、スティーブンの状態への興味も沸き、観客を飽きさせない。
デニーロはかつての仲間たちと一緒に狩りへ。
そこではデニーロも抱えている心の傷、ベトナムで戦った者とそうでない者との差、その壁を描く。
ウォーケンの恋人だったメリル・ストリープとも接近。
脚本としては少し緊張感を緩めて、スティーブンとの再会に備える。
そしてデニーロはスティーブンがいる病院へ向かう。
再会したスティーブンは両足を失っている。
だが何と、ここがクライマックスではない。
スティーブンにベトナムのニック(クリストファー・ウォーケン)からお金が送られている事を知り、デニーロは再びベトナムへ。
ニックに会いに行くために。
このニックとの再会がクライマックスになります。
ここで描かれる二人の再会、そこで繰り広げられる人間ドラマは尋常じゃない緊張感です。
注目はクリストファー・ウォーケンの変質ぶり。
僅かに正気を残しつつ、イッちゃってる彼の演技は本当に素晴らしく、アカデミー助演男優賞受賞も当然かと。
未見の方は是非確認してほしい。
デニーロをも圧倒する彼の狂演を。
そして美しいラストシーンを迎え、エンドロール。
この頃にはとんでもないものを見てしまったと放心状態になってます。
以上です。だから私は感動しました。
しかしデニーロは70年代がやはり一番好きだな。
無条件でカッコいい。
ちなみにマイケル・チミノ監督は次作の「天国の門」で莫大な赤字を出して、映画界を数年干されます。
その危うい片鱗は既にこの映画の前半に感じとれる。
ただこの攻めの姿勢、好きですね。
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