「500日のサマー(2009)」感想。サマーは天使か悪魔か論争に終止符を打つ!

カ行
引用元 映画.com

非常に共感性の高い恋愛映画です。


ラブコメなのに見るのが辛くなるほどだ。


かねてから私は恋愛映画には脚本家がその技術を駆使するタイプの作品と、自分の経験などを通して、共感性の高いリアルな恋愛を描くタイプの2つに分かれると主張している(※異論反論認めます)。


後者の作品群は100人が見れば100通りの解釈が生まれる。
それは自分の経験というフィルターを通して見るからだけど。

更に言うと、この手の作品はツボにはまると、生涯のお気に入り作品になる。



私にとってはそれが「ブルーバレンタイン」や「ラ・ラ・ランド」であり、中でも最強がこれ、「500日のサマー」だ。



おそらく似たような人も多いだろう。
この「500日のサマー」は今でもネット上でたくさん考察されている。


一つ一つのシーンの解釈に加え、もっとも意見が分かれるのは「サマーは天使か悪魔か」問題がある。


映画冒頭で脚本家の言葉が紹介される。
「この作品はフィクションであり、似た人物がいたとしても関係無い。特にジェニー・ベックマン。クソ女め」と。

このジェニー・ベックマンこそ、サマーのモデルなのだろう。


つまりはジェニーに捨てられた脚本家がその失恋経験を元に、怒りにまかせて泣きながら書いたのがこの脚本だ。

この「クソ女」という言葉が「サマーは悪女」とする根拠だろう。
しかしその判断は早計過ぎる。

ただの怒りだけなら、わざわざ冒頭でこんな言葉は書かない。
優れた脚本家なら猶更だ。






だが「サマーは悪女だ」と言いたい気持ちはわかる。




という事で、私も考察していきたい。

シナリオは技術的な点において特に言及する事は無いです。
時間軸が行ったりきたりする構成は当時見ても面白かったが、それが凄い効果あるかと聞かれれば特にはという感じがするし。

よく見ると実は時間軸通りにかなり進んでるしね。


ネタバレ度90%
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。
これはほんとみんな見よう。そして語り合おう。


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分析


トム(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)とサマー(ズーイー・デシャネル)の出会いから別れまでの500日を描く内容。


まずトムは「運命の出会い、真実の愛を信じる男」として紹介される。
映画「卒業」を読み違えたのが原因の一つとも。


あのダスティン・ホフマンが暴走を繰り返す衝撃の青春コメディ作品(※先日書いた「卒業」の記事参照)を純愛映画と思ってしまったという事か。
なるほど。



かたやサマーは愛なんて信じていないし、恋人を持つのも嫌だという。
ルックスも無茶苦茶可愛いというわけじゃない、だが男にはモテる。
何故か事あるごとに男たちに助けられて、大した苦労をしていない。
いるよね、そうゆう女子。
なるほど。


まず、この二人の何処にでもいそう感が凄い。



トムはサマーに出会った瞬間から気になって仕方ない。

最初の会話はエレベーターで二人になった時。
「ザ・スミス」をイヤホンで聴いていたら、かなりの音漏れ。
するとサマーが「私もスミス好きよ」と話しかけてくる。

これでトムはわかりやすく脈ありと思っちゃうわけですよ。



わかるぞトム。



しかしこんな出会い、あるのか。最高やん。
私も明日からがんがん音漏れしよう。
迷惑なんて考えちゃあだめだ。
そして「音楽の趣味良いわね」と美女に言わせてやろう。

流すのはガンズ・アンド・ローゼズでいいですか。


しかしトムとサマーの仲はなかなか進展しない。
再びエレベーターで二人。

「最近どう?」
「週末、最高だったわ」

この会話だけでトムは地獄に堕ちる。
「もう終わりだ! 男とセックスしてたんだ、あの尻軽女め!」




わかるぞトム。




職場で気になる女子が有給で休んだと知った時。
よく見たら、他にも男が一人休んでいる時な!

私のあの不安感! 妄想は何処までも膨らみ続けて仕事どころじゃない!

結果、こうゆう時だけ何故か不吉な妄想が当たる。





そして会社の懇親会、二人になると愛について語り合うトムとサマー。
「愛なんてどこにあるの、見た事無いわ」
「愛は感じればわかる」

まったくもって対照的な二人。

だが懇親会終了後、トムの友人が酔っぱらってサマーに言います。
「こいつは君にベタ惚れさ」
慌ててはぐらかすトム。




わかるぞトム。




この気まずさね。

みんなと飲んでいる席で酔っぱらった友人が、ある女子に「何でtanimoto(※私ね)をフッたの?」と絡んだ事があった。

「tanimotoの何が不満なの?」と。ニヤニヤして。

これはその会で絶対に触れてはいけない案件だった。
男連中にそう頼んでもいた。

場の空気、まさに生き地獄。

飲み会直後、怒り心頭の私にその友人は答えた。
「盛り上がると思って」


書いてたら思い出してきた。あいつ絶対許さねえ。




そしてサマーはトムに尋ねます。
「私のこと好きなの?」
「ああ、友達として」
トムはまたもはぐらかす。


引用元 映画.com

だが翌日、職場のコピー室でサマーがいきなりキスしてきます。


ここ、「サマーは悪女」とする論拠でもあるんですが、私としては羨ましいの一言しかない。


私からすれば天使です。そのコピー室は何処ですか。



「真剣な付き合いは求めていない」とサマーは言う。
トムは納得して、二人は付き合い始めます。



ここから暫く幸福な二人の描写が続きます。
脚本家の経験がかなり投影されていると思われます。

引用元 映画.com

公園で「ペニス!」と大声で叫び合う二人。

アホな二人ですね。

でも若いカップルなんてみんな、はたから見たらアホ丸出しですから。
幸福感を感じる良いシーンだと思います。

真似しているカップルがいたら通報してやりましょう。



そしてトムはサマーの部屋にまねかれ、サマーが今まで誰にも言った事が無いという夢の話を聞き、自分たちは特別な関係になったと思うようになります。


ここ、サマーの「今まで誰にも言った事が無い」という台詞を素直に信じるトムのピュアさが羨ましい。


女子が言う「初めて」がほんとに「初めて」だったためしは無い。


そしてトムが特別な関係になったと思いこめば思いこむほど、サマーの気持ちは離れていきます。


ある日、二人で入ったバーで、チャラ男がサマーをナンパしてきます。
横に座っているトムを完全に無視して。

当然、サマーは誘いを断ります。
苛立ったチャラ男が言い放ちます。
「そんな奴がボーイフレンドか?」

この瞬間、トムがチャラ男を殴る!

帰宅して、サマーがトムに言い放つ。

「あなた、滅茶苦茶ださかった」

「君のために殴ったんだぞ?」

そして喧嘩する二人。


ここも人によって解釈が違うでしょうね。
多くの男たちがトムに同情してサマーにムカつくかもしれない。


でもトムはサマーのためにと言ってますが、どう見ても自分のためです。

ここの「君のために」という台詞は余計ですね。
この恩着せがましさにサマーは怒ったんじゃないのか。




でもわかるよ、トム。



私も昔、「え、こんなのが彼氏?」みたいな目を露骨に向けられた事がありました。
薄笑いしかできなかった俺を今ここで殴りたい。

そして映画中盤、二人は別れます。
ここではっきりと理由を明かしてないのがこの作品の考察ブームを更に加速させています。


まあ、一言で言えば「価値観の違い」なんだけども。


単純にサマーにとって、愛を声高に言うトムが重かったんでしょう。


しかしサマーが何故愛を信じないのか、そこもほとんど語られません。

だがヒントはあります。
「卒業」を二人で見るんですが、あのラストを見てサマーは号泣します。


そう、あの「花嫁をさらったはいいが、段々と不安を感じて真顔になるサイコパス、ダスティン・ホフマン」を見てです。


あの顔を見て、愛情はやはり信じられないと思ったのでしょう。
サマーは「愛」を誰よりも信じたかったのかもしれない。

「卒業」のラストを見て、運命の愛だと感動する脳天気トムとは全く価値観が違います。

そりゃ、別れるわ。



しかしトムはサマーと別れた後も未練たらたら。

そんな二人が偶然、知り合いの結婚式に出席します。

そこで二人で踊る。
サマーが週末のパーティーにトムを誘う。
帰りの電車で眠ってしまったサマーは隣のトムの肩に頭を置く。

この「勘違いしても無理はない」トリプルコンボでトムは復縁に向けてまっしぐら。


そしてサマーに誘われた週末のパーティーに出かける。

ここ、期待と現実を同時に見せる面白いシーンが展開されます。


誰もが恋した時は入念なシミュレーションをするでしょう。
しかしその通りにいく事は一度たりとて無いとまざまざと見せつける名シーン。必見!




そしてパーティーの最中、サマーが婚約した事を知ります。


ここもまた、「サマーは悪女だ!」と鼻息荒くなるところです。


しかしあらためて見ると、サマーがトムをもう友達の一人と思っているなら、それほど大した事はしていません。
もう別れたのだから。

そう、勝手にトムが盛り上がっていただけです。



恐ろしいです。

男とは未練の生き物。確かにまだ好きだったらサマーの行動は許せないかもしれん。


しかし落ち着け。女の切り替えの速さは異常だ。

お互い好きだと泣きながら別れたのに、その十日後、他の男と同棲を始めてると知ったあの日の私の混乱。
忘れられません。



そしてやっとトムはサマーを諦める。

その後、トムは結婚したサマーと昔デートした場所で再会します。

二人は語る。
トムは「真実の愛とか運命の出会いとか、無いよ。間違いだった」と。
サマーは「今の旦那と出会ったのは運命よ」と。

と言いつつ、サマーはトムの手を握ってきます。



ここはやばい! さすがにやばい!



サマーにとってトムは運命の男ではなかった、しかし今でも好きなんでしょう。
一緒にいれば傷つけ合うのはわかっている。だから別れた。

あの「ブルーバレンタイン」の二人のように。

そうです、好きな気持ちは残っているんです。





友達としてな。



まあ、ここまで見て「サマーは悪女」とする人たちの言い分もわかる。



わかるが、こらえてくれ。

はっきり言おう。


女性の行動や言動は全て、上手くいっている時は天使、そうでない時は悪魔なんだ。





女性はみんな、「サマーって悪いわ~」と言いながら自分も同じ事をしているんだ!
しかも自分では気付いていないんだ!



そんな事を思うこの作品。
人によって感想は全く違ってくると思う。


映画はトムの一人称で描かれており、サマーの気持ちはほとんど描かれない。
これは考察を呼ぶ上手いやり方だと思うけど、キャラクターが魅力的じゃないと簡単には成功しない。

脚本家が涙と鼻水を流しながら書いたからこそ、ここまでリアルなキャラが生まれた。
これぞ脚本家が一生に一度書けるかどうかの傑作。


どうか、恋愛談議に花を咲かせてほしい。

これほどの作品、他に無いよ。

こんなおっさんにこれだけ鼻息荒く語らせる映画だ、傑作なのは疑いようがない。


以上です。だから私は感動しました。



最後、トムには新しい出会いがあります。
その女性の名前がオータム。

ここは脚本のお洒落ポイント。にくいね。



ちなみにファンの一人がトム役のジョセフ・ゴードン=レヴィットにサマーの悪女ぶりを怒ったらしいです。

するとジョセフは「よく映画を見てくれ。全部悪いのはトムだよ」と答えたという。


愚かなトム。

しかし泣くな。君は全ての男たちの代表だ。

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