「二十四の瞳(1954)」感想。戦前戦中戦後を疑似体験させてくれる不朽の名作!

邦画
引用元 松竹株式会社

木下恵介監督の代表作です。


木下監督と言えば名匠として有名なんだけど、今では映画ファンでも知らない人が結構いると思う。

古い邦画が好きな人じゃないと、なかなか話題にされない。


やはり作家性の強い黒澤、小津、溝口の三人の名が大きすぎる。

それでも当時の木下監督は黒澤監督と並ぶ、東西の横綱的な評価だったようです。



実際、この「二十四の瞳」はその年のキネマ旬報第一位。

二位も木下監督の「女の園」で、三位が黒澤監督のあの「七人の侍」です。

更には溝口監督の「近松物語」が五位、「山椒大夫」が九位。


さすがは日本映画全盛時代のベスト10。ラインナップが凄い。

その中で一位、二位が木下監督作品という事実は、当時の評価が相当に高かった事がわかる。


ゴールデングローブ賞外国映画賞も受賞しています。





個人的には木下監督はとにかく演出が器用で、上手いという印象。

どんな題材でも美味しく料理し、そして何より同時代の映画に比べて、圧倒的に見やすいと感じます。


何本か見ていますが、その中でもやはりこの「二十四の瞳」は集大成的な作品と言える。


というわけで、感想をつらつらと書いてみたい。


ネタバレ度80%。
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分析



壺井栄先生の小説が原作です。



教師と十二人の生徒たちの交流を描くオーソドックスな人情劇ながら、戦争を背景にして、その影響を色濃く感じさせる反戦映画でもあります。



昭和二十年代の小豆島で撮影している事が相当な強みになっており、昭和初期を感じられるリアリティが凄い。

今、どれだけ精巧なセットを作っても、やはり本物には勝てません。



そう、映っってる人の顔が完全に昭和。






映画は新しく赴任してくる大石先生(高峰秀子)の登場から始まります。

昭和初期、洋服を着て自転車に乗って颯爽と駆けていくその姿、そのハイカラさに島の人々は唖然呆然。

それだけでひそひそと噂話をする村社会。



いきなり時代を感じさせてくれる。


今から100年近く前の昭和三年という設定なんですが、この現代との価値観の違いは面白く、勉強になります。




そして映画前半は幼少の十二人の生徒と大石先生の交流を牧歌的に描く。


当時の子供たちの遊びなど、生活ぶりが知れてこれもまた勉強になります。
凄いよ、隔世の感が。




そしてこの映画、全編に色んな唱歌が流れるんですよ。


お堅い映画のようにも感じますが、日本人としてはやはりノスタルジーを禁じ得ない。




そして出てくる十二人の子供たちがみんな基本、貧乏なのがいい。


そう、あの頃の日本は貧しかった。


だが子供たちの笑顔からは現代には無い豊かさが感じられます。


このあたり、非常にリアルな演出も相まって、とても昭和初期の生活感が感じ取れます。

そしてとても見やすく、自然と情景がこちらに染み入ってくる感じ。

木下監督の非凡なセンスを感じます。



映画は少しずつ、悲劇的なエピソードが増えていきます。



何より秀逸なのは、中盤のまっちゃんのエピソード。

まっちゃんは家が貧しいため、学校を退学し、奉公に出されます。

それから月日が経ち、大石先生は修学旅行先で偶然、奉公先のまっちゃんを見つけ、再会を果たします。

大石先生はかける言葉が見つかりません。ただ「頑張ってね」としか。

別れた直後、まっちゃんは大石先生と同級生たちを乗せた船が去っていくのを遠くから、涙で見送ります。





いい。




過剰になり過ぎない、木下監督の絶妙の演出が光る。

素晴らしい「叙情性」を感じ取れます。




そして徐々に戦争がみんなの生活に忍び寄ってきます。

大石先生も正直な言動が多いため、何かと周囲から危ぶまれるように。



多くの男子が、軍人になるという憧れを持っている事が嫌でしょうがない大石先生。

「可愛い生徒が軍人になって死なれたら嫌」と零しただけで、アカと評判になり、校長から説教される始末です。



世は戦争一色になり、夫は戦死。

なのに長男は軍人になりたいと言い出し、大石先生は「命を大事にする普通の人になって欲しい」と諭します。

すると、「そんな事を言う母親はいない」と詰られる。


このあたり、戦中の空気感がとても感じられます。

描写がさりげないので、「ああ、こんな感じだったのか当時は」と自然に受け止められる。




そしてあの玉音放送があり、戦争が終わる。

大石先生の教え子でも戦死した者、行方が知れなくなった者がおり、重い空気はなかなか払えない。


そんな中、再び教壇に立つ事になった大石先生は、新しい教え子の中にかつての教え子の息子、娘を見つけ、思わず泣いてしまう。



かつての教え子たちが激励会を開いてくれ、そこで集まった数人の教え子から、自転車を送られる。

ここで自転車ですか。上手いです。


ひねくれた私でさえ、グッときました。





こうして映画は二十年の移り変わりを見せて、終わります。

あの激動の昭和初期、コロコロと価値観が変わる社会。



その戦前、戦中、戦後をこれほど疑似体験させてくれる映画は私の映画観賞歴では他に無い。




文部省推薦なので「その手の映画は嫌い」と敬遠する人もいるでしょうが、やはり見て損は無いと言うか、見るべき作品だと思う。


声高に戦争を批判するわけではなく、庶民レベルでの戦争を感じさせてくれます。


このような時代がついぞ数十年前にはあった事を胸に刻みたい。

これぞ抗えない、不朽の名作です。


以上です。だから私は感動しました。



そして18年の歳月を見事に演じる高峰秀子さん。

木下監督作品の多くに出演し、「デコちゃん」の愛称で人気を博した国民的女優です。


他にも名匠とされる成瀬巳喜男監督作品にも多く出演しており、「浮雲」という屈指の名作があるが、代表作にはやはりこの作品を選びたい。

その後半生はエッセイストとしても知られ、そのさばさばした気持ちの良い文章が印象に残っています。



好きです。

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二十四の瞳映画村紀行

年の瀬、岡山に帰省した折、小豆島に出かけて二十四の瞳映画村へ向かいました。



身近な島と言うイメージだったので、気楽にぶらりと出かけたのですが、なかなかの長旅になりました。


まず、岡山駅から小豆島行きのフェリーが出てる港に行くまでがなかなか遠い。

フェリーもそれほど多くの数が出ているわけではありません。

その点、日頃は都心で生活しているのもあって、舐めてました。

下調べしていかないと大変な目にあいます。私はあいました。




私はこの日、午前七時過ぎに家を出て、岡山駅に着いてルートを調べました。


ここで何と、瀬戸大橋を渡って香川県の高松からでる高速艇で小豆島に渡るのが一番早い事が判明。


それでも小豆島の土庄港に着くのは午後過ぎます。嘘だろ。




しかも土庄港から二十四の瞳映画村までもかなり遠く、バスで島を横断する事が判明。


バスの移動時間だけで一時間を楽に超える。停まるバス停は40以上。嘘だろ。




しかしここまでくればもう行くしかない。


意を決して香川県に回り込み、高速艇に乗る。

そして小豆島、土庄港へ。



下りると二十四の瞳の平和の像が出迎えてくれました。



さすが、わかってる。

これだけでもう達成感。


もう帰ろうかと思ったが、踏ん張ってバスに乗る。



ここから一時間以上、バスの旅へ。

途中には他の観光施設もあります。
回って見たかったんですが、一度下りたら次のバスが来るまで一時間以上。下りるわけにはいきません。


こうして見ると、レンタカーとか借りて自分のペースで回るのが一番良いと思います。

私がそれに気づいた時は、既に遅しでしたが。




映画村までの道中では、オリーブ公園とか、ふるさと村とか、人気の観光施設があります。


中でも潮の満ち引きで道が現れて、大切な人と手を繋いで渡ると願いが叶うと言われている、エンジェルロードなんか、恋人にはおすすめですよ!(※無表情で)





そして午後二時を大きく回り、やっと二十四の瞳映画村に到着。



帰りのバスを見ると、与えられた時間は50分。

逃せば二時間待ちです。ここ、もうちょっと余裕が欲しいです観光協会さま。




大晦日だったのに、映画村には結構、観光客が多かったです。


外国人の集団とか、ギャルの二人組とか、正直なところ、映画を本当に見たんだろうかと気になる方たちも多かったですが。





正直、村内は思ったほど、広くなかった。

ロケで使われていた校舎、その中の木下恵介監督の紹介パネルや写真などは映画ファンには感慨深い。



村内は昭和の家屋が並んでおり、ノスタルジーが感じられるのはやはり良かった。




もう少し建物の目玉が欲しいなとは思ったけど。

更に言うと、一番最初に入った家屋で、ノスタルジー皆無のフィギュアが展示されているのはどうなのかとも正直思ったけど。






個人的な目玉は映画「二十四の瞳」が小さな映画館でずっと上映されている事。

映画を見ずに、ここで初めて観賞するのもありですね。




あと、雰囲気あるカフェがありました。

そこでは映画関連の本が並んでいて、時間があればゆっくり楽しみたかったです。
何せ50分しか猶予が無かったもので。



昼食ではオリーブうどんの店がありました。時間があればゆっくり食べてみたかったです。
何せ50分しか猶予が無かったもので。


そしてこの映画村から離れて700メートルほど歩けば、岬の分教場にも行けます。
モデルとなった分教場なので時間があれば(以下、同文)




というわけで、素早く村内を回って帰りのバスへ。

映画村の入場料は890円。年中無休です。



回ってみた感想としては、邦画ファンなら二時間ほどかけて、じっくり回りたくなる場所ですね。




帰りは旅客船に乗り、岡山へ。

帰宅した時には紅白はがっつり始まってました。

ほぼ移動時間の一人旅で疲れもしましたが、こんな大晦日も楽しかったです。





ちなみにこの前日には映画でも登場した香川県の金毘羅宮へ。

実は石垣が有名な丸亀城が目当てだったのですが、時間に余裕があったのでぶらりと寄りました。


しかし、ここ、ぶらりと寄る場所ではありません。

1300段の階段を上るという、夕方にこれ以上ないハードトレーニング。



年の瀬に汗だくになりました。しかしこれまた楽しかったです。


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