「バトル・ロワイアル(2000)」感想。巨匠が命を燃やして遺した傑作!

邦画
引用元 映画.com


深作監督と言えば「仁義なき戦い」を筆頭にした実録ヤクザ映画。

他にも「蒲田行進曲」など、文芸やSF、ホラーなど、多作で守備範囲も広い。


そして晩年に撮ったこの「バトル・ロワイアル」が大ヒット。
深作監督が最期まで日本映画界最前線だった事を証明した作品として意義深い。


ネタバレ度70%
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分析




「中学生が最後の一人になるまで殺し合う」という圧倒的な強さを誇るログライン。



原作は高見広春さんの小説です。

これ、若い人は知らないだろうけど、発表当時は相当話題になりました。
中学生が殺し合うという題材が当時はあまりに過激すぎて、「不謹慎」「悪趣味」とか批判されましたね。


作者が投稿した日本ホラー小説大賞でも「不愉快」「こんな事を考える作者が嫌い」とか散々な言われようで落選。
作者の人格まで批判しているんだから相当やばい。


その後、紆余曲折を経て太田出版から刊行。

その内容から大評判となって大ヒット。
私も即買って、後ろめたさを感じつつ、あまりの面白さに貪るように読んだのを思い出します。



今や中学生が殺し合うデスゲームなんて漫画、小説で腐るほどあります。
目新しさなんて微塵もない。

それだけ、この原作はエポックメイキングというか、とんでもない新しさを当時、掲示しました。


今でも完成度においてこの原作に敵うものは無い。



そしてやはり映画化されるんだけど、当時、監督が深作欣二と聞いて、「大丈夫か?」と思ったのが正直なところ。
こんな若者を題材にした、新しい内容なのに、お爺ちゃんで大丈夫かと(失礼!)。



完成した映画を見て、やはりこの緊張感、アクション描写において、深作監督で良かったと思いました。





この映画の、荒唐無稽な設定。
まずこの世界観に観客を引きずり込めるかどうかが大事。

そして映画を見ると、冒頭20分のセットアップ、この緊張感は白眉です。


ゲームの説明をするビートたけしさんのぶっきらぼうな話し方が、狂気を生み、説得力が半端ない。

引用元 シネマトゥデイ




原作では金八先生のパロディなんですが、この映画の成功にたけしさんの起用はかなり大きなウェートを占めている。

そしてこのセットアップが成功すれば、映画の半分は成功したようなもの。


以降は少年少女の殺し合いを、監督お得意の迫力あるアクション描写で魅せてくれます。



そして今なら納得の、魅力ある若手俳優の方たちの熱演が多くの見せ場を作っている。
尺の都合上、原作からカットされたエピソードも多いので、興味の沸かれた方は原作の方も是非。



私的に最も楽しかったのは、鎌を持った柴咲コウ姐さんですね、あまりにも怖すぎます。

引用元 IMDb.com




この若さにして凛とした美しさを纏い、そして圧倒的な存在感。
薄笑いはもはや貞子レベルでホラー。

思わず「姐さん」と呼びたくなります、いや、呼ばせてください。



サブマシンガンを乱射しまくるサイコパス安藤政信さんとの対決はもはやゴジラVSキングギドラのような迫力ですよ。



更には「どうせ死ぬんだからヤラせろ」と襲ってくる男子のチ〇コをナイフで刺しまくる栗山千明さん。



爽快です。



そりゃタランティーノも惚れますよ。
ユマ・サーマンとも戦いますよ。




この中学生の殺し合い、プロット展開はほぼ原作通り。

構成に関して言うと、三幕構成とかミッドポイントとか、そんなものはもはや関係ありません。



誰が生き残るかの興味が強すぎて、構成なんて細かい事はいいんだよ状態。



優れたアイデアに勝るものなんてないんだなと、改めて思いました。





しかし、おおむね原作通りに進むんですけど、この映画化の特色として、クライマックスは少し違います。


クライマックスに持ってきているのはビートたけしさん演じる北野のドラマが展開されます。

北野の典子(前田亜季)への執着と偏愛、ここ、今見てもかなり異色で、正直、キモいです。


ビートたけしさんも自作の劇中画を出してきたり、協力も凄い。



そしてこの気持ち悪さこそ、この作品をただのアクション映画ではない、特異なものにしているのは間違いない。


脚本は深作監督の息子さんだけど、ここは深作監督のリアルを感じる。


この少女への執着こそが、深作監督の作家性、エネルギーなのだろう。
(確か、勃起しなくなるのが嫌で抗がん剤を断ったとか、以前何かで読んだな。さすがです)。




ちなみにこの時期、某ニュース番組である中学生が「何故、人を殺してはいけないんですか?」と質問しましてね。

その場にいた識者全員、まともな答えができなかった姿を見ました。

この件がかなり話題になったのを覚えているんだけど、その問いの答えがこの映画にはある。


無差別に人を殺しまくる姿が、逆説的に答えてる。


そんな事を当時、考えたのを思い出しました。
余談ですけども。


以上です。だから私は感動しました。




私的にこの作品の不満点を言うと、ところどころ挿入される字幕、これはちょっとださいかな。


あと、ラストのヒューマニズム。
必要無いと思う。

巨匠って生き物は晩年になるとヒューマニズムが過剰に出てくるので仕方ないかとも思っている。
黒澤監督もそうだった。
申し訳ないが、クリント・イーストウッド監督も最近そうだ。


頼むぞ、宮崎駿監督。
あなたは違うところを見せてくれ。

その新作のタイトル「君たちはどう生きるか」


今のところ、嫌な予感しかしない。





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