「蒲田行進曲(1982)」感想。深作監督にしか撮れない、邦画の枠を超えたパワフル人情喜劇!

邦画
©1982 松竹株式会社

ヤクザ映画で名を売った深作監督と、少女映画や大作を量産した角川映画のコラボレーションが生んだ傑作。


原作、脚本がレジェンド舞台人のつかこうへいさんなのも何より強力。


そのため、舞台劇のような長いシーンが多く、深作監督のパワフルな演出とマッチして、痛快な人情喜劇が出来上がり、大ヒット。


軽快な主題歌も耳に残り、穴が無い。


クライマックスの盛り上がりも素晴らしく、エネルギッシュでとても楽しい作品です。



ネタバレ度80%
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。


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分析


スター俳優の銀四郎(風間杜夫)、その恋人で落ち目の女優小夏(松坂慶子)、銀四郎の付き人で大部屋俳優のヤス(平田満)が織りなす人間模様。




銀四郎はスキャンダルを避けるため、妊娠した小夏をヤスに押し付ける。

ヤスは承諾して、小夏と結婚する。


この三角関係、キャラ造形がまず抜群だ。


三人の葛藤が映画全編を通して、余す事無く、生き生きと描かれている。

そこはさすがのつか脚本。



映画冒頭、小夏をヤスに押し付ける際、銀四郎は小夏とセックスを始め、ヤスにしっかり見るように命令。

「やめて!」と抵抗しながらも、すぐに「銀ちゃあああん!」と求め始める小夏。




いきなりアクセル全開です深作演出。



ビデオをレンタルした初見の時は私もまだうぶな十代で、この大人の男女の情念に圧倒された記憶があります。







そしてヤスは小夏との生活を始める。

生まれてくる子供のため、お金を稼ぐために、危険なスタントをどんどん引き受ける。

当時、何かとパロディにされた「これがこれなもんで」という名台詞が繰り返される。



そしてここで日本が誇る本物のアクション俳優、志穂美悦子さん、真田広之さん、千葉真一さんのアクションシーンが並ぶ。



友情出演ながら、さすが深作監督、アクションに力が入ってます。

映画ファンにとってはこれ以上無いサービスシーンだ。






そんな中、小夏は銀四郎の部屋を訪れ、一人、丁寧に掃除をして、鍵を置いて帰っていく。

松坂慶子さんの一人芝居なんだけど、悲しみがビビッドに伝わってくる良いシーンです。





そしてヤスと小夏は結婚を決め、その報告にヤスの故郷へ。

村を上げての大歓迎を受けるが、その夜、小夏はヤスの母親から「お腹の子、誰の子でもええんよ」と告げられる。


母親は小夏のお腹の子がヤスの子じゃないと分かっている。
そうじゃないと、こんな美女がヤスの嫁になるわけがないと。


その上で、ヤスを裏切らないでくれと懇願する。


ここは母親役の清川虹子さんが素晴らしい演技を見せる。

映画の中では少し浮いたシーンだが、作品に奥行きを与えており、母親の情愛が沁みてきます。





その後、順調にヤスとの生活を育んでいるところ、偶然に銀四郎と再会する小夏。

ここで銀四郎は仕事も現在の恋人とも上手くいっていないと愚痴を零し、小夏に復縁を迫る。

小夏は戻りたい気持ちを抑え、ヤスを裏切れないと、銀四郎のプロポーズを断る。

必至に懇願する銀四郎と、泣いて別れを告げる小夏。


ここは銀四郎の孤独がしっかりと感じられる風間杜夫さんの演技と、「女は一緒にいてくれる人がいいの、銀ちゃん、一緒にいてくれないじゃない」と涙する小夏の長芝居がいい。


舞台的な演出もあって、二人の葛藤がこれでもかと表現されており、中盤の見せ場としてしっかりと機能しています。


このシーン、風間杜夫さんは特に良い。
スチュワーデスを教えているだけじゃなかったんだなと、初見の時はその役柄の振り幅に驚いた記憶があります。





そして銀四郎はこのままさらに凋落していく。
ここで復活するには、撮影中の映画のクライマックスで見せ場を作り、盛り返すしかない。


そのクライマックスは新撰組の池田屋襲撃シーン、見せ場となるのは8メートルもの階段落ちだが、死ぬ可能性もあってスタントする者がいない。


そこでヤスは銀四郎のため、死を覚悟して階段落ちのスタントをやると宣言する。




ここからクライマックスの階段落ちまでは緊張感が全く途切れない。



階段落ち撮影前夜、酔っぱらったヤスと小夏は大喧嘩の長芝居。

撮影が近づくにつれて、小夏を愛してしまった事で「死」の恐怖が募り、壊れそうになっているヤス。

愛し合っているからこそ、激しくぶつかってしまう、平田満さんの熱演が光る屈指の名シーンだ。



ここまで見ればわかるが、本当に三人が重なり合い、思いが、葛藤が十二分に表現されている脚本に唸る。

さすがレジェンドつかこうへいさんの代表作の一本だ。


そして当時、舞台人だった風間杜夫さんと平田満さんに「舞台の通りに演じろ」と指導した深作監督の演出が凄い。


角川春樹さんが「役者の熱気が初めてフィルムに焼きつけられた」と驚いた主演三人の熱演には本当に圧倒される。


邦画ではこの作品の前にも後にも、これほどパワフルな人情喜劇は生まれていない。




クライマックスの階段落ち、ドラマは最高潮に盛り上がります。

未見の方は是非、見届けて欲しい。



以上です。だから私は感動しました。




切ない場面で流れるのは桑田佳祐さん作詞作曲、中村雅俊さんが歌う「恋人も濡れる街角」。


名曲です。あの時代を生きた人間は抗えない。


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