「恋人たちの予感(1989)」感想。ラブコメの女王メグ・ライアンを産んだ名作!

カ行
引用元 映画.com


何と言ってもメグ・ライアンの出世作として有名なんだけど、ウィットに富んだ男女二人の会話劇を延々と見せるスタイルはもはやラブコメの雛形。


主演二人の魅力はもちろん、洗練された脚本、美しい撮影、ムードある音楽と、相当に完成度が高いです。


ネタバレ度70%
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。

スポンサーリンク

分析


何と言ってもこの作品の魅力は脚本家ノーラ・エフロンが書いたユーモアたっぷりの台詞の数々でしょう。




映画の始まりは1977年。

大学生のメグ・ライアンとビリー・クリスタルは友人を介して紹介され、車でニューヨークへ向かう事に。

初対面、車内で交わす会話がいきなり面白い。


「僕は本を買うと結末を読む。読み終わる前に死ぬと困るからだ」

先ずビリー・クリスタル演じるハリーの変人っぷりを紹介する軽いジャブ。



そして「カサブランカ」のラストについて意見を衝突させ、何故か話題はセッ〇スに。

二人はカフェに入りながら、

「君は良いセッ〇スを知らない」
「良いセッ〇スなら山ほどしたわ!」

メグ・ライアン演じるサリーの大声に、カフェの客たちみんな注目。

二人、席に着き、

「相手の名前は?」
「シェル・ゴードン」
「そんな名前の奴は駄目だ」

意固地なビリー・クリスタルを見せつつ、メグ・ライアンも店員に異常に細かい注文をして、その変わり者っぷりを見せる。

「シェルとは何故別れた?」
「七色パンティのせいよ」
「解説してくれ」

メグが七色パンティの解説をする。そしてビリーの演説は続く。

「セックスが邪魔をして、男と女は友達になれない」(これ、映画のテーマです。ここでさりげなく観客に掲示)
「私にはセックス抜きの男友達が大勢いるわ」
「みんな君と寝たいと思っている」

呆れるメグ。ビリーは止まらない。

「男は女に魅力を感じると寝たいと思うんだよ」
「魅力のない女とは友達になれるわけ?」
「魅力が無くても寝たい」
「女がイヤだと言ったら?」
「その時点で友情は壊れる。友情は成立しないのさ」
「あなたと私の間にも?」
「そうさ」
「ニューヨークでの唯一の友人が消えたわね」
「…」

そして二人、ニューヨークに着いて別れる。

ここまで映画開始14分。

魅力あるキャラクター、ユーモアある台詞、既に元は取れたと思うほど面白い。



そして映画は五年後に。

メグとビリー、偶然再会し、飛行機に同乗する。

ここでももちろん、ビリーのユーモラスな演説が展開される。

メグは「見かけはノーマルだけど、相当病気ね」と呆れ返る。





映画は更に五年後に。

メグは弁護士のジョーと別れたばかりで傷心。
ビリーは結婚しているが離婚寸前。


ビリーはアメフトを観戦しながら、友人に妻の浮気を説明する。

その悲しみを訥々と訴えるが、途中、何度もウェーブで立ち上がるのが最高に面白い。




そしてメグとビリーが再会。食事をして、友人として意気投合。

「魅力的だが寝たいと思わない最初の女性だ」
「嬉しいわ、ハリー」

そして友人として仲を深め、「カサブランカ」をお互いの部屋で同時視聴したり、お互いのデートの報告、相談を繰り返す。




その中で、メグ・ライアンをラブコメの女王に押し上げた名シーンがあります。


レストランで食事中、ビリーは先日、女性とデートして、彼女をセッ〇スで満足させた事を報告。

メグは彼女が本当に満足したかどうかはわからないと返す。

「オルガズムのフリを女はみんなする」
「僕にはしない。見ればわかる」

自信満々のビリーを前に、メグはオルガズムの演技をしてみせる。

「イエス! イエス!」と大きく喘ぎ、興奮するメグをレストランの客みんな、何事かと注目。


メグはイッた演技を見せ終わると、普通に食事に戻る。

その名演に、ビリーは言葉も無い(ちなみにこのシーンのビリーの演技が好きだ)。

そして隣の女性客が店員に注文する。

「彼女と同じものを」


この女性客の台詞が抜群に上手い。今作で一番唸った台詞です。

二人のアップや台詞でシーンを終わらず、しっかりと笑いを挿入して終えている。

コメディは俯瞰で状況を捉える能力が必要だけど、この脚本家にはしっかりとその視点が備わっている事がわかる台詞です。


そしてこのシーンでのメグ・ライアンは全く嫌らしさを感じさせず、ただただキュート。


こんなシーンをこれほど魅力的に演じられる女優はいない。







この後も二人の友情を描いていきます。

チークダンスでお互いの恋情に気付くが見て見ぬふりしたり。


喧嘩もして、相手を詰ったりも。
だが、散々言い合った後に、

「一言いいか」
「どうぞ」
「ごめんよ、悪かった」

ハグする二人。

言いたい事を吐き出した上で、自分の非を認めて素直に謝るビリー。

この頃には冒頭の変人のイメージから、かなり魅力が増しています。



そしてお互い、相手に良い人ができそうになると嫉妬する様子も描かれて、友人の枠を超えてきている事が丁寧に示唆されます。


そんな折、メグが夜、泣きながらビリーに電話します。「すぐに来て!」と。

ビリーが駆け付けて事情を聴くと、元カレのジョーが結婚するとの事。

メグは結婚願望が出てきたせいで、彼と別れています。

「彼は結婚したくない人と思ってたけど、私と結婚したくなかっただけなのよ」


泣き崩れるメグを慰めているうち、二人は抱き合い、そして体を重ねる。



お互いの恋情に気付き、めでたしめでたしのハッピーエンド。








で、終わらないのがこの映画の良さだ。






翌朝にシーンが変わると、幸せいっぱいの顔のメグと、どうしようという顔のビリー、この対比が抜群に面白い(ビリーの表情は爆笑ものです)。



ここからクライマックスに向けて、セックスをして関係がおかしくなった二人、さあ、どうなるかを見せていくんですが、そのぎくしゃく感が上手く表現されています。


ここからビリーは段々とメグへの恋情に気付き、彼女に告白するという流れなんだけど、彼の台詞が良いんだよね。


「一日の最後に話したいのは君だ。誰かと一緒に過ごしていきたいと思うなら早い方がいいだろ」

「いつも憎めない事を言うんだから。あなたなんて大嫌い」

二人、熱いキスをするラスト。





95分の上映時間もちょうど良いが、全編、メグ・ライアンの可愛さが圧倒的です。


ニューヨークの街を美しくとらえた撮影も見事。


ハリー・コニック・ジュニアの音楽も作品を盛り上げます。


何よりやはりノーラ・エフロンの脚本ですよ、ラブコメは台詞が命だと、まざまざと教えられます。



あとは主演二人の魅力と相性ですよね、「この二人をずっと見ていたい」と思わせたらもう成功、その意味でこの作品のメグ・ライアンとビリー・クリスタルの掛け合いは最高です。


更に言うと、キャリー・フィッシャーがメグの友人役で出てきますが、見事なコメディリリーフぶり。

レイア姫とは違う魅力が見れますよ。



そしてやはり言及しなくてはいけない、ロブ・ライナー監督の確かな手腕。

その代表作、「スタンド・バイ・ミー」「ア・フュー・グッドメン」「ミザリー」「最高の人生の見つけ方」など。

あらゆるジャンルで名作を発表し続けたハリウッド屈指の職人監督です。

もっと評価されて欲しい。



以上です。だから私は感動しました。





ちなみにラブコメの女王になったメグ・ライアンはこの作品以降もノーラ・エフロン、トム・ハンクスとチームを組み、傑作を連発。

見事に映画史上最高のラブコメクィーンに。

しかしラッセル・クロウとの不倫騒動で人気失墜。整形で顔が変わり過ぎなど、色々あって出演作品も減っていきました。


そのためか私は今でもラッセル・クロウが好きになれません。


おすすめロブ・ライナー監督作品





にほんブログ村 映画ブログへ
参加しています。記事を気に入ってくれた方、ぽちっとお願いします!


タイトルとURLをコピーしました