「インファナル・アフェア(2002)」感想。香港映画が世界レベルにある事を証明した傑作サスペンス!

ア行
引用元 シネマトゥデイ

警察のスパイと、マフィアのスパイ、このW主人公。


この敵対する組織の二人のスパイ、その暗躍、対決を描くという素晴らしいアイデアが何よりの魅力。




2000年代前半はハリウッドも企画不足とよく言われていた。
そこへ、抜群の企画性を持つこの作品が公開されたもんだからあっという間にリメイク。

監督スコセッシ、主演はレオナルド・ディカプリオとマット・デイモンという豪華布陣で、見事にアカデミー賞受賞。




カンフー映画だけじゃない、香港映画のレベルを世界に知らしめた傑作です。


※ちなみにハリウッドの企画不足はアメコミの映像化というヒット鉱脈を見つけてからは言われなくなったなあと個人的には感じてます。




ネタバレ度80%。
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。


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分析

まず企画として、敵対する組織のスパイ二人を同時に描くというアイデアが抜群すぎる。


新しいアイデア、その発想法として「組み合わせ」はよく言われます。
他にも「逆さにする」とか色々あるけど。

これは足し算が成功した例だろう。



脚本家はこのアイデアを思い付いた瞬間、「この手があった!」と小躍りしたはず。


はっきり言って、このアイデアをしっかりと脚本化できたら傑作間違いなし。



それでも私は当初、このアイデアを聞いた時、ストーリーが複雑になって、観客は混乱するんじゃないかと危惧しました。

この設定だとプロットの可能性は無限。

どうにでも話を膨らませられる。
ストーリーが広がりすぎて、結果、破綻するんじゃないかと。


このアイデアを形にするには相当な筆力が必要なのは明らか。


日本公開時、「傑作」との評判を聞いて、どうストーリーを展開させているのか興味津々だった。




見て驚いた。


このどこまでもストーリーが膨らんでいきそうな設定を、プロットをどんどんシンプルにしていくやり方で観客の混乱を防ぎ、更には緊張感まで増幅させている。



まず冒頭、警察のスパイ(トニー・レオン)とマフィアのスパイ(アンディ・ラウ)を観客に紹介。


この二人がスパイとして暗躍する中、麻薬受け渡し現場での警察とマフィアの対決、その駆け引きを見せる。


何と、最初の30分でここまで見せる。



この組織間の対決をクライマックスに持ってくるだろうと想像していた私は驚いた。


よって、いきなり緊張感が凄い。
本来、クライマックスに持ってくるようなプロットをここに持ってきてるんだからそりゃあ、面白いよ(結果、スパイ二人が暗躍しての組織間の対決、情報戦をがっつり見せたのはここだけ)。



しかし私は思った。

そうなると今後の展開はどうするんだろう?


と思ったのも束の間、警察もマフィアもスパイが紛れ込んでいる事を確信し、そのスパイ探しのプロットに移行する。


なるほど…。


観客の混乱を避ける上手い展開です。



起承転結の承、三幕構成で言う二幕の前半は、このスパイ二人の正体がばれるかばれないかのサスペンスで見せる。


このばれるかばれないかという面白さはスパイものならではの面白さ。


ヒリヒリする緊張感の中、恋人とのサブエピソードも絡ませ、テンポよく進む。


二人の主人公、二つのストーリーを同時に進行させているようなプロットなので、とにかく密度が濃い。



そしてちょうど一時間が過ぎた中盤で、警察のスパイであるトニー・レオンの上司がマフィアによって殺される。


このシーンは非常にショッキングな演出がされていて、素晴らしいインパクト。


ここで状況が動き、更にギアが上がる。


守ってくれるはずの上司が死亡し、警察のスパイであるトニー・レオンの状況が悪化していく。


そして殺された上司の携帯を介して、主人公二人が電話で繋がる。


おお、展開が早い! しかしそれが良い!


ここまで来ると、もはや先は全く読めない。


組織の対決だったのに、気づけば主人公二人のドラマに絞られている。


それでもどう決着をつけるのか、さっぱりわからない。


期待を持って見ていると、トニー・レオンの誘いに乗り、アンディ・ラウがマフィアを裏切り、ボスを殺す。


ここで警察対マフィアの戦いの構図は終わる。
アンディ・ラウの裏切りによって、警察の勝利だ。


本来、ここで終わっても不思議ではない。


しかしこの傑作はそんな安易な道を選ばない。


トニー・レオンはアンディ・ラウこそがマフィアの犬であり、自分の上司を殺した人間だと知り、復讐に動く。
秘密を知られたと知ったアンディ・ラウもまた、トニー・レオンを殺しに動く。


クライマックスを前に、警察対マフィアの構図を終わらせ、二人の戦いに絞る会心のプロット。


上手い。


ストーリーをシンプルにしていく事で観客の混乱を防ぎ、更には緊張感を増す事に成功。


企画は足し算だが、プロットは引き算。

これこそ構成力だ。




二人の戦い、最後までどちらが勝つのかわからないクライマックスも見事。


ちゃんと勝者は決まり、ほろ苦い余韻の残るラストも好みです。




この内容を100分弱に収める力量。
見事すぎて溜め息が出る。

サスペンスにおいて、複雑な設定、プロットをどう整理していくかの非常に良いお手本。


改めて見ると、この設定を破綻なく見せるには、この方法しか無かったんじゃないかとさえ思う。



以上です。だから私は感動しました。



しかしトニー・レオン、かっこいいな。


「恋する惑星」ではブリーフ一丁でもカッコよかった。



私だったら大事故だ。




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