「俺たちに明日はない(1967)」感想。職業、銀行強盗。有名過ぎる二人のラストは必見だ!

ア行
引用元 映画.com


ボニーとクライドの逃走、その実話を元にした映画で、アメリカン・ニューシネマの代表作の一つとされています。


逃走ものは傑作が多い印象があるけど、その雛形ですね。


久しぶりに見直すと、二人のキャラクター、関係性が独特でとても面白かったです。



ネタバレ度80%
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分析

実話ベースなんだけど、サスペンス映画、アクション映画として出色の出来かと。



それはテンポの良さからも感じられます。


ボニーとクライド、二人が出会い、強盗をして逃亡するまで映画開始わずか8分。


これほどの切れ味はなかなかお目にかかれない。


その間にクライド(ウォーレン・ベイティ)の右足が不自由で、女性が苦手なのもサラッと紹介されます。



このキャラ造形が作品の大きなポイントです。

つまり二人は恋人ではなく、犯罪の相棒。


しかしボニーはクライドに恋心を抱いている。

クライドもまた、ボニーに好意を持っているが、不能なため、彼女との距離を縮めない。

ボニーの気持ちに気付かないフリをする描写など、とても印象的。


この微妙な感情の揺れが、他の犯罪映画とは一線を画す魅力を与えています。




ちなみに実際のクライドは同性愛者だったようです。

刑務所で巨漢の囚人に犯されて、同性愛者になったとか。
その後にその相手を殺しており、これが彼の最初の殺人になります。





映画でのクライドはとても魅力的に描かれています。

序盤、一人で銀行を襲うんですが、入って見るとその銀行は倒産しており、社員に金なんて無いと告げられる。

するとクライドはその社員を引き回し、車で待つボニーの元へ。
そして社員に倒産している事実をボニーに説明させます。

ボニーへの見栄、プライドが感じられて、可愛さが感じられる。上手いエピソードです。




更に、兄のバック(ジーン・ハックマン)とその妻のブランチ(エステル・パーソンズ)、車に詳しい少年C・W・モスを仲間にして、ギャング団を形成。

こうして二人は「商売は銀行強盗」と堂々と宣言し、次々と銀行を襲っていきます。



その道中、魅力的なエピソードが並びます。


自分たちに気付いた警官を捕え、わざと肩を組み、記念写真を撮ったりするお茶目な二人。

このような道中の写真が実際にも多く残っており、本当に楽しそうに見える。



映画ではこの警官がボニーに向けて唾を吐くんですが、その瞬間、烈火のごとくクライドは怒ります。

その怒りっぷりが凄まじく、クライドのボニーへの思いが感じられる。

強い絆、愛を感じられる、良いシーンです。




他、追っ手の警官たちとの激しい銃撃戦、カーチェイスなどあるんですが、その間、とても楽しそう。

逃亡の高揚感が表現されていて、犯罪映画なのに暗さが全く無く、爽やかささえ感じられるのが面白い。

この二人は新聞でも大きく取り上げられて、ヒーロー化していく様子もさりげなく描写されます。
実際でも、義賊的な見られ方をしていたらしい。





中でも唸るエピソードがあります。

このギャング団、新たに車を盗んで逃げるんですが、その持ち主であるカップルが他の車で追ってきます。

このカップルですが、追ってる途中で相手がやばい連中だとまずいと思い直し、Uターンして戻ります。

するとボニーとクライドもまたUターンしてこのカップルを追走。

このカップルを拉致し、自分の車に乗せ、気付けば仲良くなり、仲間に誘う。


ボニーがカップルの女性に年齢を聞く。
ご機嫌の女は「33よ」と答える。
するとカップルの男は驚く表情を見せ、女はしまったという顔を見せる。

更に男に職業を聞くと、「葬儀屋だ」と答える。

その瞬間、ボニーの表情が変わり、「追っ払って」と一言。

カップルは車から降ろされ、置いてきぼりに。


このエピソード、アーサー・ペンの切れ味鋭い演出で、このギャング団たちの憎めない面がしっかりと描かれています。


窃盗犯が持ち主を追い回すなんて、なかなか見ません。面白い。






そんな楽しい逃亡も、やはり終わりに向かいます。

ボニーの頼みを受けて、彼女の母親に会いに行く一行。

ここでの親類縁者みんなとの触れ合いは素敵なシーンなんですが、母が別れる折、ボニーに「一生逃げ回るしかないよ」と冷静に言い放つ姿が印象的です。



その言葉通り、警察の包囲網も狭まってきて、派手な銃撃戦の末、兄のバックは撃たれて死亡、その妻のブランチは警察に捕えられます。

ここでブランチが口を割り、ボニーとクライドは更に窮地に。

終わりが迫る中、ボニーとクライドはお互いの気持ちを確認し、その昂ぶりからセックスに成功。

幸せの絶頂、二人は未来を、夢を語り合う。

死の匂いが立ち込める中、この幸せそうな二人が辛い。


そして仲間のC・W・モスの父親が警察と取引きをして、二人は罠にはめられます。



そこであの有名過ぎる、87発の轟音が響くラストシーンへ。


この凄惨なラストこそが、アメリカン・ニューシネマの開幕を告げる号砲です。


それまでのアメリカ映画は基本ハッピーエンドでした。
「素晴らしきかな、人生!」のような(これはこれでもちろん名作ですが)。


未見の方は是非確認して欲しい。



以上です。だから私は感動しました。




兄のバックを演じるジーン・ハックマンが良いのはもちろんですが、その妻のブランチを演じるエステル・パーソンズが本当に素晴らしいです。

すぐに騒ぎ立て、パニックを起こす、この強盗団の中でも異色の存在。
映画の良いアクセントになっており、アカデミー助演女優賞を受賞の名演です。

ボニーを演じた新人フェイ・ダナウェイの魅力も見逃せません。


とにかく役者が揃い過ぎ!


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