アカデミー作品賞を逃した時、「何故だ!」と私が憤慨したミュージカルの傑作。
夢を追った経験を持つ観客なら誰もが「これは私を描いた映画だ!」と叫ぶ非常に共感性の高い映画です。
ラブストーリーではあるんだけど、夢を追う男女、その青春ドラマの要素が強い。
そう、ラブストーリーとしては実は普通で極めてオーソドックス。
そこに唸るような、特別な描写は無い。
そのためだろう、職場で恋愛ドラマ好きな女性たちに激推ししたら、あまり反応は良くなかった。
普通、ラブストーリーは成就するのを阻む障害を設定するんだけど、この二人の恋に障害は無いしね。
ラブストーリーとしては実は盛り上がりに欠ける。
ここがラブストーリー好きの方たちに不評な点でもある。
これは夢を追う若者の不安や挫折を描く青春ドラマなのだから。
その分、夢を追う者たち、何かを掴もうともがいた者たちには確実に刺さる。
この作品を熱狂的に支持する人たちはそうゆう人たちだ。
そして私もその一人(※異論反論認めません)。
ネタバレ度90%。
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。
分析
いつもブログでは脚本について書いているんだけど、上で指摘した通り、実はこの作品、特筆すべき点は無い。
しかし大好きな作品だけに、分析というより、感想を書きます。
この作品の共感ポイントはやはり後半、「夏」「秋」のパートだろう。
セバスチャン(ライアン・ゴズリング)は愛するミア(エマ・ストーン)のために売れるバンドに入った。しかしそれは彼がやりたい音楽ではない。
ミアは一人芝居の舞台を自分でプロデュース。
しかし客席はガラガラで、ショックを受ける。
この挫折と戸惑いが、多くの観客の共感を呼ぶ。
ここが弱ければラストの圧倒的高揚感は無い。
高く飛ぶには一度低くしゃがむ必要があるからだ。
ここで「私がそばにいる。大丈夫」と歌われる。
誰もが過去の恋愛を想起するだろう。
そう言ってくれる人がいる、どれだけ認められなくても恥をかこうとも才能を信じてくれる人がいる、それだけで人は何度でも立ち上がれる。
この強く、普遍的なメッセージ。
ここでほとんどの者が「これは私の映画だ!」と一気にテンションが上がる。
新しさは無い。
だがベタで上手い。
その後、二人は別々の道を歩み、夢を掴んだ。
セバスチャンは自分の店を持ち、ミアはスターになった。
そしてラストの再会。
「夢を掴めたのは、あの時、あなたがいてくれたから」
離れた二人が交わす数秒の笑みは、そう力強く語っている。
切なさもある、最高のハッピーエンドだ。
最高だ。
脚本以外に触れると、まず音楽が素晴らしい。
そして高揚感を感じさせる、見事なカメラワークの撮影。
原色を多用して、見るだけで楽しい美術、衣装。
何度見ても圧倒される。
豊かな人生を得るのに、一番必要なのは情熱だ。
それは全てのカットから情熱をびんびんに感じさせるこの映画の成功が語っている。
傑作です。
以上です。だから私は感動しました。
そりゃ、エマ・ストーンが隣にいたら頑張れるって…。
おすすめライアン・ゴズリング出演作品
おすすめデイミアン・チャゼル監督作品
記事を気に入ってくれた方、ぽちっとお願いします!