「トレーニングデイ(2001)」感想。振り切った悪役を演じるデンゼル・ワシントン劇場!

タ行
引用元 映画.com


やばい映画です。




ベテラン刑事が新人刑事に捜査のやり方を教える一日を描く。

このログラインだけ読めばよくあるバディものなんだけど、この作品は全く違う。


シナリオの定石を悉く破っていき、上映後、残るのは嫌ーな後味だけ。



なのに傑作という恐るべきクライム映画。



ちょっと色々と書いてみたくなったので。




以下、ネタバレ含みます。
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。



DVDで観賞したい方は私も利用している宅配レンタルがお勧めです。



分析


ロスを舞台に、新人刑事(イーサン・ホーク)が表彰までされているベテラン刑事(デンゼル・ワシントン)に麻薬捜査のやり方を教わるんだけど、全編がとんでもなく不穏。


出てくるギャングたちが本気で怖い。

撮影には本物のストリートギャングに協力してもらったらしい。



そりゃ恐いわ!




そしてストーリーなんだけど、起承転結というものがほとんど無い。

いや、あるにはあるんだけど、観客にカタルシスを与えるような作りをしていない。


そこに何より驚かされる。



こうゆうのって例えばノンフィクションが原作だとか、そうゆう理由があれば納得するんだけど、驚きです、完全オリジナルです。



よくこの企画通ったな!





イーサン・ホークがこの悪徳刑事デンゼル・ワシントンに振り回される様子をただただ二時間ずっと見せていくという内容です。



そしてこのデンゼル・ワシントンが最初から最後まで本当にクソ野郎。



普通、刑事ならちょっとした良心とか、彼なりの正義とか見せて、観客の共感を得るキャラクターにするところ。


しかもデンゼル・ワシントンという名優のイメージから、悪ぶってるだけで実は何か理由があるんじゃないかと誰もが考えてしまう。




そんな観客の淡い期待をあざ笑うかのように、本当に見事なクソ野郎。




だが、二時間、ずっと目が離せない。


イーサン・ホークはデンゼル・ワシントンが本当にクソ野郎なのか、判断に迷う。
それは見ている観客も同様で、本当は良い奴なんじゃないかと信じたい。




そんなイーサン・ホークや観客の期待を裏切り続ける事で二時間引っ張り続けるという、ある種、逆転の発想。



正直なところ、いつも悪役を演じてるような役者がデンゼル・ワシントンの役をやっていたら、ただの凡作で終わってる可能性が高い。


デニス・ホッパーとかね!






この映画、こんなサスペンスの作り方があったのかと、感心する。

邦画だと「孤狼の血」の役所広司さんが演じた役が近いけど、悪のレベルが一段違う。


デンゼル・ワシントンは保身のため、金のためなら仲間だろうが友達だろうが平気で殺す。

自分の子供さえ盾に使うという清々しいまでのクソっぷりだ。




つまりはただの犯罪者。




自分は警官だ、この街では何でもできると豪語する、完全な悪党です。


こうなると映画のクライマックスとしてはどうしてもイーサン・ホークVSデンゼル・ワシントンにしないと収まらない。



そして予想通り、この二人が対決します。


ここでイーサン・ホークが死闘の末、デンゼル・ワシントンを倒すみたいな展開ならカタルシスも得られるだろう。




だが、この映画は違う。




一応、撃ち合うが、イーサン・ホークはそそくさとデンゼル・ワシントンの元から去る。

おい、イーサン…。




そしてデンゼル・ワシントンは自分を狙うロシアン・マフィアに蜂の巣にされて息絶える。




見事なまでにカタルシスを放棄し、観客の期待を裏切り続け、嫌な後味だけを残して映画は終わる。





凄いのは、なのに傑作だという事。



それはやはりデンゼル・ワシントン演じるベテラン刑事のリアリティが絶妙な塩梅だからだ。

刑事なのに全く良心の無い悪党だが、そうじゃないと麻薬捜査なんてやれないという面も確かにあるんだろう。
ロスという街なら猶更だ。


このキャラ、役者としては涎が出るような役だ。

ストーリーがほとんど無いだけに説明台詞が少なく、アドリブし放題(監督が認めるかは知らんが)。

どれだけキャラを立たせられるか、上手く演じれば自分のアピール映画として最高。


そしてデンゼル・ワシントンは見事に自分の演技力をアピールする事に成功し、アカデミー主演男優賞までとった。



そんな奇妙で、絶妙にぎりぎりを突いてくるクライム映画。

ちょっと他に類のない、唯一無二の映画です。

あえてカタルシスを放棄する事で、成功した映画として記憶に留めない。


普通の脚本家、監督が真似すれば大火傷するのは必定です。
凡庸、退屈と言われるのがおち。




以上です。だから私は感動しました。




カタルシスも感動も無く、嫌な後味を残す映画だが、本国では一億ドルを超える大ヒット。

全盛期のデンゼル・ワシントン、凄いな!



ちなみにこの主演と監督のタッグで、「イコライザー」を撮ってます。
こちらはちゃんとカタルシスを得られる定石通りの大ヒットアクション映画。

おすすめだけど、映画の格は「トレーニングデイ」が上。


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