「グラディエーター(2000)」感想。壮大なスペクタル! 娯楽に徹した巨匠の集大成。

カ行
引用元 映画.com

そろそろ落ち目かと思ったリドリー・スコット監督が放った復活のアカデミー賞受賞作。

更に今年は続編も上映。最近は体力のいる大作ばかり撮っている86歳。



あなたが一番グラディエーターだ!




ネタバレ度80%
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分析


この作品、壮大な復讐譚なんですが、そうなるとやはり、主人公がどれほどの恨みを抱くか、どこまでどん底におとされるかが大事。


その点において、このシナリオは満点かと。

驚きます、昼ドラ並みにベタです。いい意味で。




冒頭、リチャード・ハリス演じるローマ皇帝が、ラッセル・クロウ演じる平民出身の将軍マキシマスに全権譲渡したい旨を伝える。


皇帝の息子、ホアキン・フェニックス演じるルキウスはその事実を知り激昂。

父親を暗殺し、更にはラッセル・クロウを反逆者として捕縛。



そのラッセル・クロウは死刑執行寸前で逃亡し、愛する妻子の元へ駆けつける。

しかし家族は生きたまま焼かれており、絶望し、自分は奴隷に身を落とす。



天下の大将軍から奴隷へ。

凄いです、まさに天国から地獄。恨みしかない。



このセッティングに42分。素晴らしい密度です。

ここまでやれば映画の成功は半分は束されたと言っていい。


皇帝を演じるリチャード・ハリスの名演が素晴らしい説得力を放っています。



そして映画は奴隷となったマキシマスが剣闘士、グラディエーターとしてホアキン・フェニックスに辿り着くまでを描いていく。

もうゴールは見えた。あとはどれだけの映像とアクションを見せていくかだ。


ここからはさすがリドリー・スコットと思わせる力強い演出でぐいぐいと観客を引っ張っていく。

剣闘士のアクションは流行りのスタイリッシュなものじゃなく、血生臭い、武骨なもの。

適度なグロ描写もあり、重い鎧と盾で戦う男たちの姿はなかなか新鮮です。




そしこの映画で面白いなと思うのは、冒頭から動物のカットを多く取り入れて、映画全編に野生の本能、野蛮さを加えている事。


虎VSラッセル・クロウなんて、この映画ならではです。

映像に凝るリドリー・スコットらしいなあと思う。





そして中盤、ラッセル・クロウとホアキンはコロッセオで再会します。



死んだと思っていた男が目の前に現れた折のホアキンの動揺、その演技は流石。


戦いぶりで多くの民衆を味方につけるラッセル・クロウ。こちらもカリスマ性が感じられる見事な演技です。



ここ、ラストに宿敵同士が再会するんじゃなく、中盤で再会させているのがシナリオで唸るポイントです。


相手が皇帝なんだからラッセル・クロウはすぐに殺されてしまうんじゃないかと観客は危惧するが、民衆を味方につける事で自分に手出しさせないという流れは抜群に上手い。

中盤に宿敵同士を再会させてる事でドラマの密度がグッと上がり、観客の予想を、期待を上回ってきます。




そしてここまで来たら興奮のクライマックスを期待するんですが、そこは意外とこじんまりとした印象。

がっつりネタバレですが、ラッセル・クロウとホアキンの一騎打ちはあまりに結果が見えすぎる。

でもだからこそ、ただの娯楽作とは違う余韻が残る。それがアカデミー賞受賞に繋がったのかもしれない。




新皇帝を演じるホアキン・フェニックス、当時は二十代半ばか。

その頃はあのリバー・フェニックスの弟という印象しかなく、知名度は低かったです。

もはやスターだったラッセル・クロウとがっぷり四つの演技を見せているのは流石だけど、やはり今の演技派ぶりと比べると薄いです。

ラストは悲哀を感じるまでにこの役を昇華しているけど、まだ素直に一生懸命演じている感じで、圧倒的だった若きジャック・ニコルソン、ロバート・デニーロとかと比べると相手にならない。

逆にここから今のホアキンのレベルまで演技力を上げた事に驚く。努力したんだなあ。





リドリー・スコット監督、若き頃の革新性こそあまり感じられないが、155分、存分に楽しめる娯楽大作に仕上がっています。

ここまで娯楽に徹した作品がアカデミー賞受賞というのも珍しい。


以上です。だから私は感動しました。





余談ですがメグ・ライアンが好きだった私は当時、ラッセル・クロウが嫌いでした。

彼との不倫スキャンダルで一気に人気凋落していき、映画出演が激減した印象だったので。

「女に苦労した事は無い」と得意げに語っていたインタビューも嫌だった。

ハンカチを嚙み締めて地団太を踏んだものです。


それでもこの作品の彼は圧倒的なカリスマ性を感じさせる。あっぱれとしか言いようがない。



でも今も好きじゃない。




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