長谷川和彦監督はこの作品とデビュー作「青春の殺人者」しか残していない。
どちらも大好きなんだけど、特にこの作品はカルト的な人気を誇っています。
個人が原子爆弾を作って、政府を脅迫するというとんでもストーリーに説得力を持たせたジュリーのエキセントリックな演技がいつまでも印象に残る。
ネタバレ度70%
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分析
長谷川監督の若さか、異常な熱量を発している作品なんだけど、何より「個人が原子爆弾を自宅で作る」というアイデアがぶっ飛んでます。
プルトニウムがあれば誰でも作れると劇中でジュリーが語っているんですが、事実かどうかはわかりません。
でも、本当に作れるのかも?と思わせる事に成功している事が凄い。
カルト的人気を博す一番の要因です。
というわけで、脚本の面白さはジュリーが原爆を作る前半にある。
中学教師のジュリーがバスジャック犯と遭遇。
受け持つ生徒たちとジュリーを、菅原文太さん演じる刑事が救うという導入。
ここでまず菅原文太さんの存在感たっぷりの演技を堪能。
この事件に感化され、ジュリーは原子爆弾製造に乗り出していくんだけど、本来ならジュリーの境遇や思考を描き、原爆を作ると決意するまでの流れを描くのが普通。
観客にしっかりとジュリー演じるキャラの性格や魅力を見せるために。
だがこの映画は違う。
何の説明も無く、ジュリーはすぐに原子力発電所からプルトニウムを盗み、自宅で原爆製造を始める。
この製造過程は異常なほどにディテールに拘っており、ジュリーの狂気を丁寧に、しつこく描く事で特異なリアリティを生みだしています。
まあ、プルトニウムを盗むところは、昔のロジャー・コーマン映画を思い出すほどのチープさと強引さでしたが。
そしてこの脚本の魅力はまだある。
原子爆弾が完成して、ジュリーは一体、何に使うのか?という流れが凄く良い。
普通ならジュリーが恨みを抱く対象を爆破なり、殺害する流れだと思います。
できるだけスケールの大きいアイデアが求められるところですが、凄いです、ジュリー、何の目的もありません。
特に欲求が無いので、野球中継を最後までテレビ放送しろと警察を脅す。
更にはラジオDJと絡み、原爆の使い方を聴取者に募集する始末です。
さすがカルト的人気を誇る映画だけあって、定石通りに進まない。
いや、定石から外れる事で、ジュリーのエキセントリックさを表現しているように見える。
この映画、細かいところでも不思議な魅力に満ちています。
ラジオDJの池上季実子さんに捜査協力を求める菅原文太さん、何故か池上さんを抱きしめながら話します。
その渋い魅力に満更でもない池上さん。
こんな刑事いない。
ジュリーと接触する池上さん、二人でずっと歩きながら、海辺で「女はいるの?」と尋ねる。
ジュリーは答えず、そのままキスをする。
応える池上さん。
ジュリーは唇を離すと、池上さんを抱き上げて、そのまま海に投げ落とす。
ここもジュリーの無軌道ぶりが感じられる面白いシーンです。
そして池上季実子さん、キャリアウーマン的美人ながら男にほだされやすい感じがとても上手く出ています。
ああ、レコア・ロンドが重なる(※ガンダムファン限定)
そして後半、ジュリーが借金取りに返済を迫られて、政府に五億円を要求するんですが、こうなると普通の犯罪映画になります。
個人的にはここから面白さが失速してる印象ですが、異常な熱量を巻き散らすシーンが続き、ここからが好きという人も多いと思います。
普通なら五億円の受け渡しを巡る警察との攻防がクライマックスになる流れなんですが、ジュリーの居場所が逆探知で発覚し、この取引はすぐに終わる。
五億円を渋谷に撒く映像は迫力十分ですが、映画はここからジュリーがターザンしたり、文太さんがゾンビレベルで死ななかったりと時々コントかと疑ってしまうような流れに。
迫力のカーチェイスもあり、無茶苦茶ですが熱量が凄くて飽きません。楽しいです。
この映画の魅力を語る上で、主演のジュリーの功績は本当に大きいです。
この教師像、今の観客からするとぶっ飛びすぎに見えるだろう。
授業中にガムを噛み、昼休みには道着を着て奇声を上げながら蹴りの練習。
原爆の作り方を生徒に説明し始めたりも。
今のご時世なら絶対に教師になれていません。
まあ、昔はこの手の教師、普通にいましたけど。
ちなみに私の小学校の担任は授業中にかりんとうを食べてましたね。
この映画、ゲリラ撮影を繰り返しており、70年代当時の皇居や渋谷など、時代の空気を強く感じられるのも魅力です。
以上です。だから私は感動しました。
余談ですが、ジュリーのシャワーシーン、お尻がばっちり見れますので、女性ファンは必見です。
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