「隠し砦の三悪人(1958)」感想。スターウォーズの元ネタとしても有名。黒澤監督がド定番の時代劇に挑んだ傑作エンタメ!

邦画
引用元 映画.com

黒澤明監督初のシネマスコープ作品。
さすがに見事に使いこなしており、ワイド画面の迫力が凄い。


黒澤監督はここまでに「生き物の記録」「蜘蛛の巣城」「どん底」と三本、重い作品が続いたので、明るいものを作りたかったそうです。

おかげで黒澤作品にしては最もコメディ要素の強く、楽しさも太鼓判の傑作時代劇に。


「七人の侍」ではリアルな時代劇を志向したけど、この作品では歌舞伎や能のような、時代劇の定番の面白さを追求しているのも注目です。




ネタバレ度80%
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粗筋

時は戦国。
戦に敗れ、逃亡する雪姫と侍大将、真壁六郎太。
農民二人、太平と又七も連れて、同盟国を目指す。

分析


今の感覚で見ると、前半がちょっと長い。

農民の太平(千秋実)と又七(藤原釜足)、侍大将の六郎太(三船敏郎)と雪姫(上原美佐)の四人で出発するまで開始50分。



ストーリーが動くのはここから。
追っ手から逃れ、同盟国に辿り着くまでの困難をどう乗り切っていくかというストーリーなので、後半になるほど飛躍的に面白くなっていきます。




まずこの作品の面白さを支えるのは、二人のコメディリリーフの存在です。

太平と又七、ここまではっきりとしたコメディリリーフを用意している黒澤作品は他に無い。


とにかく金にがめつく、喧嘩ばかり、裏切りばかり、だけど憎めないトラブルメーカー。


そしてこのコンビの、その関係性と役割こそ、Cー3PОとR2ーD2の元ネタです。
(※スターウォーズの生みの親、ジョージ・ルーカスが黒澤監督に証言しています)


演じる千秋実さん、藤原釜足さんは黒澤組の演者でも飄々とした味わいを持つ名優で、このキャスティングが絶妙。


二人のやり取りを見てるだけでも面白く、黒澤監督の他の娯楽時代劇、「七人の侍」「用心棒」などとは違う、軽い作品のカラーを決定している。





そして一行の逃亡が始まってからは、日本を代表する脚本家たちの共作だけあって、そのエピソードの構成、繋がりはまさに珠玉。



まず、雪姫の性格がとにかく男勝りで目立つため、道中、その素性がばれないよう、六郎太は雪姫を生まれつき喋れない下賤の女に仕立てる。

姫の素性は同行する太平と又七にさえ、教えない。

この設定が、後に太平と又七が裏切って逃げ出そうとするのを姫が防ぐエピソードに繋がる。



そして道中、姫が六郎太に頼み込み、人買いに売られた娘を買い戻すエピソードがある。
男勝りながら姫の優しさを表現したエピソードだが、女が増えて旅の荷物が増えるだけ。

太平と又七は不平を言うが、逆に人数が増えた事で追っ手を撒く事に成功する。



その後、戻ってきた追っ手を六郎太が圧巻の馬上アクションで切り捨てるが、勢い余って敵陣に一人で突入。

そこで旧知の侍大将、田所兵衛(藤田進)との一騎打ちになり、勝利して、敵陣から逃亡する。

ここは見せ方も含めて、黒澤監督が昔ながらの「ザ・時代劇」に挑戦した箇所であり、作品の見せ場になっています。




その後もなかなか逃げ切る事ができず、雪姫包囲網は狭まっていく。

太平と又七が祭りに加わって身を隠そうと発案して実行に移すが、その思惑を追っ手方も見抜いており、窮地に陥る。
ここは六郎太の機転で難を逃れるんですが、その後も一難去ってまた一難、各キャラの性格と行動が次のエピソードに連結していく構成はまさに職人技だ。



まあ、トラブルはほとんど太平と又七のせいなのだが。


ほんと、コメディリリーフであり、トラブルメーカーというこのコンビの魅力は計り知れない。





結局、一行は同盟国を目前にして捕縛され、打ち首が決定します。


そんな絶体絶命の中、再び六郎太のライバル、田所兵衛が登場。


ここで彼は六郎太たちを逃がし、共に逃走するんですが、この田所の裏切りは姫の清廉な性格に感銘を受けてのもの。

姫の男勝りのキャラクターがこの清々しいラストに繋がります。


逃走する折の田所の「裏切り、御免!」という捨て台詞、格好いい!



この脚本、まったくもって無駄が無い。まさにエンタメのお手本であり、完成度に唸る。



このクライマックスの敵地からの逃走は、ワイド画面を十二分に生かした見事な躍動感でさすがです。

これほど開放感のある、気持ちの良いシーンは他の黒澤作品でも滅多に無い。

明るいものを撮りたかったという黒澤監督の思いが溢れています。





最後に触れておきたいのは、三船敏郎さんの馬上アクションだ。

この作品のハイライトでもあるアクションシーンなんだけど、全速力の馬上で、手綱を持たず、両手で剣を振り回す事ができる役者が今、どれだけいるのだろうか。

膝だけで馬を制御する、大変な技術です。

その殺陣の速さは黒澤監督でも目で追えず、フィルムで確認したというほどですが、馬の扱いも凄まじい。

やはり不世出の役者です。



以上です。だから私は感動しました。




この映画はゴールデン洋画劇場で放映された折、黒澤監督、千秋実さん、藤原釜足さん、上原美佐さんの四人の対談も放送されました。

映画公開から23年後です。
上原美佐さんは女優はとっくに引退してて、二児の母として出演しています。


今回、ユーチューブにアップされている動画を拝見しました。
作品の雰囲気同様、懐かしそうに語り合う四人の姿はやはり映画ファンとしては嬉しいですね。


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脚本の面白さで魅せる作品なのでリメイクしやすいのかな、舞台化されたりも。


こちらは旬の役者で映画リメイク。
不安で見れない。

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