今ならアウトでしょう。
平然と中学生女子の下着や水着、全裸を映しています。
厳しい演出で有名な相米監督ですが、それ以上にその狂気に圧倒されます。
ネタバレ度70%
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。
この記事を書いている2023年10月現在、アマゾンプライムでは見放題配信されています。
DVDで観賞したい方は私も利用している宅配レンタルがお勧めです。
分析
台風がやってくるまでの中学生の数日間を描く、青春群像劇。
エピソードの羅列で構成されており、ストーリーらしいストーリーはありません。
この手の映画だと、エピソードの一つ一つがどれだけの輝きを放つかにかかっている。
ましてこれは青春映画だ、若者たちの、その年代だけが発する輝きをどれほど切り取れるか。
その意味では、この映画は凄い。
邦画だけじゃなく、世界的に見てもこのレベルはそうは無いんじゃないかと思う。
というわけで、いくつかのエピソードをご紹介。
映画序盤、三浦友和さん演じる教師が授業をしている真っ最中に、交際相手の家族が教室に乗り込んできます。
「うちの娘をいつまで待たせるんだ!」と。
「100万も貢がせやがって!」と。
唖然とする生徒たち。
子供たちの世界に突然飛び込んでくる大人の世界。
やばい、いきなり無茶苦茶面白い。
直後、三浦友和さんと恋人が部屋で過ごす長回しのシーンも生々しさが感じられて、この瞬間に、相米監督のただごとじゃない演出力に唸る。
ちなみにそれまでは爽やか二枚目イメージだった三浦友和さんですが、この演技で役の幅を広げた事でも有名です。
相米監督と言えば、独独の長回し演出が有名です。
普通、長回しって演者同士の緊張感を生むものなんだけど(溝口健二監督作品とか)、相米監督の場合、生々しさが前に出るんだよね。
ちょっとクセになる感じがあります。
そして工藤夕貴さん、母親の布団に入って、「お母さん…お母さん…」とうわ言のように呼びながら、オナニーするシーンがあります。
何これ?
14歳の女の子に一体何をさせているのか。
ちょっとよくわからない。
そして他の女子同士でキスしたり、愛撫するシーンもあります。
もちろん、そうゆう関係はいつの時代もあるだろうけど、段々と監督の趣味、性癖を出してきているようにしか思えなくなってきます。本人は脚本通りに撮っただけだと言い張るだろうけど。
ちなみにこの脚本はコンクールで公募したものです。
相米監督がかなり気に入って映画化したとの事。
そしてその中でも、珠玉の輝きを放つエピソードがあります。
ある男子が、大西結花さん演じる女子に思いを寄せており、悪ふざけで彼女の背中に火傷を負わせてしまいます。
謝罪するが、当然、大西結花さんは無視。
それでも執着し、二人きりの時、「マクドナルドに行かない?」と誘います。
そして断られると、感情が抑えられず、大西結花さんを襲います。
逃げる大西結花さん。捕まっても、必死に抵抗します。
しかし男子の力には敵わない。
まるでプロレスのようにくんずほぐれつして、彼女はばてて動けなくなります。
激情を抑えられない男子は、大西結花さんのシャツをびりびりに破き、背中の火傷を露にする。
そして泣き出します。
二人で泣き続ける。
ここ、普通なら襲い掛かってレイプシーンでしょう。
しかしそこはまだ経験の無い中学生、自分の性衝動を抑えられないが、「セックス」には至らない感じがとても良いです。
彼のどうしていいのかわからない混乱と、思い通りにいかないもどかしさ。
ビンビンに感じました。長回しも効果的。
ちゃんと青春を描いてます。相米監督の少女趣味だけの映画じゃない。
そしてクライマックス、台風がやってきて、数人の生徒が夜のグラウンドに飛び出し、わらべの「もしも明日が」を歌いながら踊るというカオス極まりないシーン。
この後、女子はブラジャーをとり、パンティーも脱ぎ、全裸になります。
もちろん男子も。
はい、今ならアウトです。
ていうか、当時でもよく撮影できたなこれ。
私が親なら監督を殴りに行ってます、映画にかこつけて、俺の娘に何をさせているんだと。
スタッフも誰もやばいと思わなかったのだろうか、相米監督ならしょうがないと諦めていたのだろうか。
ちょっとよくわからない。
このシーン、少年少女の昂ぶりと狂気を表現しているんだろう。
しかしそれ以上に監督の狂気を感じる。
その危うさが、若者の危うさと重なり、この作品を唯一無二の青春映画にしています。
ていうか、中学生の時に女子が目の前で全裸になったら、台風だろうが何だろうがガン見してます、踊っている場合じゃない。
しかしここまでやるか相米監督、自分をさらけ出すその作家性、尊敬します。
本当に特異な青春映画です。
余談ですが、東京国際映画祭で審査員のベルトルッチが激賞し、その後も相米監督の活動を気にしていたとか。
以上です。だから私は感動しました。
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