「マルサの女(1987)」感想。社会派エンタメを撮り続けた伊丹監督の最高傑作!

邦画
引用元 映画.com

一つ一つのシーンから、伊丹監督の才気が爆発してます。

何度見ても面白い。


ネタバレ度70%
未見の方はDVDで! ネタバレ上等な方はお進みください。




この記事を書いている2023年12月現在、動画配信はありません。


DVDで観賞したい方は私も利用している宅配レンタルがお勧めです。



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分析


脚本は伊丹監督のオリジナル。

昔、「さんまのまんま」だったかなあ、本人が出演した折にハリウッドの三幕構成について、語っていた記憶があります。


当時、邦画と言えば暗くて地味な印象で、エンタメを強く意識している映画作りをしている伊丹監督に驚きました。

日本にもこんな監督がいるのかと。



当然、この映画でも序盤にキャラ紹介、中盤にマルサの仕事ぶり、終盤にがさ入れと、しっかりとストーリーを作っています。




ただ、個人的にはそのようなプロット構成よりも、キャラクター造形や一つ一つのシーンの描き方に圧倒的な才を感じる。





冒頭、看護士のおっぱいを無心で吸い続ける余命僅かのジジイ。

看護士はじじいからしっかりと印鑑と通帳を貰っている。

このファーストシーンからただ事じゃない面白さ、この映画はちょっと違うぞと思わせてくれます。



そして全編、個性的なキャラクターが溢れており、演じる役者さんたちの演技合戦が見ていて楽しい。

芸達者な人たちに魅力的なキャラクターを与えると、こうも生き生きと演じてくれるのかと驚きます。



主人公の宮本信子さん、おかっぱとそばかすでインパクト大のはまり役。

敵役の山崎努さん、素晴らしい存在感です、ベストワークの一つでしょう。

他にも津川雅彦さん、小林桂樹さん、伊東四朗さんなど、嬉々として演じているのが感じられて、素晴らしい。




そして伊丹監督特有の、女性の描き方が特筆もの。

女性の裸が出てきても全く色気が無く、嫌らしさより生々しさが前面に出る。


行為の後、股間に数枚のティッシュを挟んだまま、ベッドを出る女。

査察を受けて逆ギレ、全裸になると、「女はここに隠すんだ!」と言ってM字開脚する女。



面白過ぎる。





シナリオに関しては、ハリウッド三幕構成を意識しながら、その定石を外している点もあります。


宮本信子さん演じる主人公はシングルマザーで五歳の息子がいるんだけど、その息子を一切、画面に出しません。

家庭での姿を一切映さない。そこは徹底している。


普通は彼女のマルサでの仕事ぶりを描きながら、子育てする姿もサブプロットで描くのが定石です。


それが観客の共感を得て、骨休めにもなり、作品に深みを与える。


なのに一切、描かない。



マルサの面白さを見せきる事に一貫している潔さ。

見終わって面白さ以外に何も残らないのはこの潔さにあるのかと。

とってつけたようなメッセージやテーマなんて必要無いと考えているんでしょう。




それなのに敵役の山崎努さんの息子、中学生の太郎と交流する主人公の姿がクライマックスの合間に描かれます。


そのおかげか、主人公と山崎努さんが会話を交わすラストシーンは敵対関係を超えて、まるで夫婦のようにも見える。

この辺りは独特の作家性を感じます。




以上です。だから私は感動しました。



あと、久しぶりに大地康雄さんを見た気がする。

「マルサのジャック・ニコルソン」と作中で呼ばれてました。

他の作品でももっと見たいです。


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