佐々木のキャラクターで押し切る、勢いの作品。
脚本にも演技にも弱冠の硬さを感じるけど、それが良い意味で若者の不器用さの表現になっている感がある。
これもまた、青春映画の醍醐味か。
主人公、石井が役者として大成しない閉塞感にはやはり共感せずにはいられない。
役者を目指した事は無いが、鑑賞中、ついつい自分と重ねて見てしまう部分がある。
青春映画に求めるものってそれなんだよね。
ちなみにこの作品を見たのは、推しの女優さん、河合優実さんが出演しているからです。
この作品でも独特の存在感で良かったですよ!
ネタバレ度70%
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。
分析
役者を目指す石井のうだつの上がらない現在と、高校時代の仲間との日常が交互に描かれるという内容。
石井の友人、佐々木というキャラクターが強烈で、教室で全裸で踊り狂う。
それだけで「青春」と言わざるを得ない。
もはや何をしても映画においては勝ちだ。
この映画、プロットをがっちり組むタイプのものではないから、脚本分析はしにくい。
記事にしなくていいかなと思ったんだけど、見ていて自分の過去を色々と思い出したりした。
今回はそんな事をつらつらと書いてみたい。
ええ、つまりは映画の感想ではない。すまぬ。
映画は主人公、石井の現在と過去を交錯して進みます。
そして映画の終盤。
高校を卒業してほとんど顔を合わさなくなっていた佐々木が死んだと突然聞かされる。
死因は癌。
病気を知らされていなかったので驚く石井。
このシーンを見てて、私も友の突然の死を思い出した。
友達と呼ぶのは憚られるが、上京して働いたバイト先で知り合ったFさん。
彼は元お笑い芸人で、出会った時は役者をしていた。
年齢は九つ上だったかな。
五年近く、同じバイト先で苦楽を共にした。
Fさんも私が脚本家を目指していると聞いて、応援してくれていた。
バイトを辞めても交流は続いた。
彼が出演する舞台とか、見に行った事が何度もある。
そして十年前、彼に貸していたDVDを返してもらう必要性があり、連絡したが繋がらない。
SNSの更新も少し前からぴたりと止まっていた。
気になって調べたら、飲み屋で喧嘩になり、殴られた拍子に頭を打ち、そのまま昏睡。
救急車で運ばれて、すぐに亡くなったという。
「は?」と思った。
死んだなんて信じられない、あんなに元気で、何事にも楽観的な人が。
一緒にいるだけでパワーを貰えるような人だった。
しかし事実だった。
新聞にも小さく記事が載っていた。
彼のフェイスブックには、同級生らしき人たちが今でも時々書き込みをしている。
もちろん、返信は無い。
それでも彼と話そうと、書き込みを続けている。
私も気付けば彼が死んだ年齢を超えている。
会いたいなあと今でもふと思う。
突然、会えなくなる。
それが死なんだと、だから今、この一瞬を生きろと、彼は最後に教えてくれた。すぐ忘れるけど。
と、この作品を見ながら、そんな事を思いだした。
この映画でもう一つ、印象的なシーンがある。
旧友の木村、さえなかった彼がクラスのアイドルと結婚し、赤ん坊までいるのを知るシーン。
現実をしっかりと生きている木村と比べて、主人公の石井から滲み出る置いてきぼり感。
わかるぞ、石井。
私にも専門学校時代、共に自主映画を作った仲間たちがいる。
その仲間たち、とうに結婚した者も多いが、独身のままずっときている男が私を含めて四人いる。
だが二年前、私を除いた三人が続けて結婚しやがった結婚しましたおめでとう。
そのうち二人は今や赤ん坊までいる。
ラインで写真を送ってくる。頼んでもいないのに。
先月、娘の誕生日だったのか、大きくなった写真が送られてきた。
「もうモンスターだよ!」と楽しそうなコメントがついていた。
その翌日、私は派遣先で新人に仕事を教えている際、独身かどうか聞かれた。
私はその娘の写真を見せ、「もうモンスターだよ」と答えた。
誰も「俺の娘だ」なんて言っていない。嘘は言っていない。
「可愛いですねー」と言われて照れたのだが、ふと周りを見た時、同僚たちの視線が冷めきっていた。
泣けた。
と、そんな事をこの映画で思い出しましたよ!
以上です。だから私は感動しました。
これ、まったく映画の感想じゃないな。
まあ、たまにはいいか。だめか。
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