夏の絵日記のような作品。
内容もそうだけど、北野監督の画作りも。
この90年代前半、よく記事で書いてるけど、日本映画は暗黒時代。
その中で北野武監督は一筋の光でした。
私の場合、この作品で北野作品のファンになりましたね。
ここから「ソナチネ」「キッズ・リターン」「HANAーBI」と傑作が続きます。
ネタバレ度80%
未見の方はDVDで! ネタバレ上等な方はお進みください。
この記事を書いている2023年10月現在、北野監督作品は配信ありません。
DVDで観賞したい方は私も利用している宅配レンタルがお勧めです。
分析
この作品ね、脚本無いんですよ。
耳の聞こえない恋人同士の日常をスケッチ的に描いた作品で、キャラの葛藤は相当希薄。
北野監督が世界的に評価されているバイオレンス描写も封印。
一見、学生映画のよう。
ロングカットの長回しが多いしね。
この時期、そうゆう撮り方が流行ってたんですよ、学生映画でもみんなやってた。
ジャームッシュやヴェンダースが人気だったからね。
でもこの作品は学生には撮れない。
そこが北野監督のセンス、才能なのだろう。
主人公の茂(真木蔵人)はサーフボードを拾ったのをきっかけに、サーフィンを始める。
そのうち、恋人以外にも、次第に仲間が増えていくという内容。
ドラマ要素がほとんど無いので、脚本について語るのは難しい。
脚本について語るこのブログで、何故この作品を題材にしたのか、自分でもよくわからない。
ただ、画作りと編集で恋を描いている点がとても独創的で惹かれる。
「恋する惑星」の記事で、ウォン・カーウァイ監督は「恋する気持ち」を映像化していると書いたけど、あれはカメラワークと照明、役者の存在感。
この作品とは全然アプローチが違う。
それがとても面白い。
しかし北野武監督がこれほどロマンチストだとは驚きだ。
TVで毒を吐いている姿からは想像できない。
脚本は自分をさらけ出す作業だと言うが、あれほど有名な方がこれほどさらけ出している事が凄い。
照れとか微塵も感じない。
そう言った面も何気に感動ポイントなんだと思う。
そして音楽担当の久石譲先生!
脂が乗り切ってます、この素晴らしさはやばいです。
この時期、宮崎駿作品と北野武作品の高い評価は久石音楽の力も相当あるだろう。
そして何より印象的なのが映画のラストです。
主人公が海に消え、サーフボードだけが砂浜に流れてくる。
主人公の死を暗示させ、かつての恋人二人の回想カットを並べて、映画は終わる。
非常に印象的で、初見の時、友達と二人で見てて「お~!」と歓声を上げたのを覚えている。
14型の小さいTV画面で。VHSの汚い画像で。大阪の不潔な寮で。
ちなみに主人公の死は自死なのか、事故なのかは映画では描かれていません。
おそらく北野監督にとって、それはどちらでもいいのでしょう。
いなくなった事実だけが欲しかったと思われる。
私的には事故だと思っていますが。
そして恋人二人の回想カットが流れるラスト。
当時、監督はインタビューで「観客へのサービス」と仰っていました。
ちなみに北野監督を高く評価する黒澤監督は「あれはいらないね」と言ってました笑
以上です。だから私は感動しました。
作品のキャッチコピーは「一生にいちど、こんな夏が来る」でした。
そうなの?
まだ一度もありません。
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