「HANA-BI(1998)」感想。バイオレンスとセンチメンタルの融合。北野映画の最高傑作!

洋画


ベネツィア映画祭グランプリ受賞作。

一般的には北野武監督の代表作と呼んでいいと思います。



まあ、北野作品はバラエティに富んでいるので代表作を何にするかは意見が分かれそうですが。

ちなみに私が一番好きなのは初監督作品の「その男、凶暴につき」です。



正直なところ、北野映画ファンの私ですが、好きなのはこの作品までと言っていい。以降の作品は私にはあまり刺さらない。

抽象的過ぎたり、暴力描写だけが売りの作品だったりと(具体的な作品名は挙げませんが)、やりたいテーマが見つからないようにも見える。


もう一度、原点に戻った作品を見たいといつも願っています。



ネタバレ度60%
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分析


「世界のキタノ」の代表作と呼ばれるにふさわしい傑作です。



北野作品には「その男、凶暴につき」「ソナチネ」などの暴力描写に特色があるバイオレンス路線と、「あの夏、いちばん静かな海」「キッズ・リターン」などのセンチメンタリズム溢れるドラマ路線があります。


厳密に言うと、コント路線とか、不条理路線とか、他にも色々あるが。


そしてこの作品こそ、暴力描写とセンチメンタリズムを見事に融合させた、北野映画の最高到達点であると言える。





同僚が殉職し、責任を感じて刑事を辞職した男が借金と罪を重ね、妻との逃避行に出る。



見せ場はやはり後半の妻との逃避行、台詞を極力抑えた詩情性だろう。

行く場が無く、破滅に向かっていく中、小さなやり取りで妻とただ笑みを交わす、その一瞬一瞬の幸せ、切り取り方が絶妙。


寺のシーン、雪のシーン、海辺のシーンなど、素朴ながら情感あるカットの数々が印象的です。


いよいよ追いつめられた中、最後に妻が放つ二言、「ありがとう」「ごめんね」の破壊力たるや。







お笑い芸人として大きな富と名声を得たビートたけしさん、その内実、小さな幸せを求め続ける本人の夢、理想が垣間見れて、より一層の感動を覚えます。





あんた、どこまでロマンチストなんだ。


寺島進さんが「あんな風には生きられないなあ」と呟くんですが、この生き方こそ北野監督の憧れなんでしょう。


恥も外聞もなく、監督が自己を投影させた作品はやはり訴求力が違う。




少し話は逸れますが、「紅の豚」の主人公はまんま宮崎駿監督だと庵野監督が言ってました。

だから評価しにくい、と。カッコつけすぎてて見てて恥ずかしくなる、と笑

あれもおじさんのロマンチストが爆発してますね。そのためか宮崎作品の中でも独特の立ち位置の作品になっています。

今では大好きですけど、若い時に見た時は「何やねんこれ」と思いました。





大杉蓮さん、岸本加世子さんの名演も胸を打ちます。

二人のベストワークと言ってもいい。少ない台詞の中、表情や仕草で心情を見事に表現されています。

特に岸本佳代子さんは快活なイメージが強く、この寡黙で儚げな妻役は当時驚きました。




シナリオに関しては特に上手さを感じる箇所は無いんですが、映画前半、主人公の同僚が殺される事件の全貌を見せるのに時系列をかなりいじっています。

北野作品にしては珍しく編集に工夫が見られる。この時期、タランティーノとか流行っていたからかな。

この編集の工夫で観客を惹きこむことに成功しています。







余談になりますが、この作品、ベネツィアでグランプリを受賞した折に絶賛の声が多く聞かれたんだけど、故大林宜彦監督が「北野監督が初めて『映画』を撮った」と評していました。

言いたい事はわかるんですが、やはり「初めて」ではないと思う。

前作の「キッズ・リターン」なんかははっきりと「映画」でした。

この点、大林監督のプライドなんかも感じられて、面白いですね。




以上です。だから私は感動しました。

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