「街の灯(1931)」感想。言葉はいらない。映画史上最高と言われるラストシーンの感動よ!

マ行
引用元 映画.com

公開時、チャップリン41歳。


映画史上最高とまで言われたラストシーンで有名な、チャップリンの名作です。


風刺の効いた作品たちも名作として有名ですが、これは純度100%のラブストーリー。




一番好きなチャップリン映画はどれかと聞かれれば、昔から変わらずこの作品をあげます。


チャップリンに興味を持つ若い映画ファンの方には先ずこれからと、全力でおすすめしたい。




ネタバレ度70%
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。

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分析


ラブストーリーの名作とされているんですが、改めて見ると、笑いのレベルがチャップリン映画史上最高地点にある。


動きの笑いもさる事ながら、非常に細かい演出を駆使しており、練り込んだギャグの数々に唸らされる。


それは序盤の除幕式でのチャップリン登場シーンから見受けられる。いつも以上にいきなり面白い。






そしてチャップリン演じる浮浪者が、盲目の花売り娘と出会うシーン。

新人女優ヴァージニア・チェリル演じるヒロインの目が見えない演技が良い。

そして彼女の勘違い、すれ違いをこの1シーンで完璧に描くテンポの良さも見事です。



その後、チャップリンは富豪の男が自殺しようとするのを止める。

富豪と仲良くなったチャップリンは、一緒に食事に出かける。

この自殺騒動、そして食事のシーンでの葉巻のやり取り、椅子の出し入れ、パスタと紙テープの間違い等、手の込んだ練られた笑い、その細かい動き、演出に唸る。


この頃にはチャップリンの完璧主義ぶりは異常なレベルに達しており、一つのシーンを繰り返しリテイクするのが慣例となっている。


演者は大変だっただろうけど、おかげでスラップスティックコメディのレベルがちょっと誰にも真似できないレベルに達しており、本当に面白い。


更に面白いのは、この富豪の男のキャラ設定。シラフに戻るとチャップリンの事を忘れる、酒を飲んだら思い出すというのがコメディならでは。


彼によってチャップリンが振り回され、ストーリーが動き、大きな笑いに繋がっていく、このキャラ配置が絶妙だ。

演者もこの理不尽なキャラをリアリティを持って演じています。




シラフの富豪に追い出されたチャップリンは、ヒロインの苦境を知り、ボクシングの試合に出場して賞金を狙う。


このボクシングの試合だが、レフェリーとゴングを巧みに使ったギャグの数々が物凄い事になっています。


個人的にはチャップリン史上最高の笑いだ。



チャップリンのサイレント映画、その笑いを見て、「何か他で見た事あるな」と思う事は実際多い。

それはあらゆるコントが、チャップリンの影響を受けた、その存在の大きさの証明でもあるんだけど、おかげで彼の凄さがいまいちわからないという事もあるだろう。


そんな方は、このシーンを見て欲しい。



どんな芸人にも真似できない、動きとギャグ、その圧倒的なレベルを。




結果、ボクシングの試合では負けるんだけど、酔っぱらった富豪からまとまったお金を預かり(ここででもどたばたがあるんだけど)、ヒロインの元へ。

そしてチャップリンをお金持ちと勘違いしている彼女に大金を手渡す。


直後、チャップリンは警察に追われて逃亡します。



そして月日が経ち、チャップリンから貰ったお金で受けた手術に成功、目が見えるようになったヒロインの姿が映し出される。

彼女は今でも、あの時、お金をくれたお金持ちの紳士を探し求めている。




そこに偶然通りかかった浮浪者のチャップリン。

チャップリンは目が見えるようになった彼女を見て、心から喜ぶ。だがあえて、名乗らない。



しかしこの運命の再会、彼女はある瞬間、目の前のみすぼらしい浮浪者こそが、自分を助けてくれた紳士だと気づく。


かつて目が見えず、チャップリンの姿を見た事が無い彼女が、何故、彼をあの紳士だと気付く事ができたのか?



どうか見届けて欲しい。





サイレント映画ならではの、映画史上、最高と言われるラストシーンを。




これはトーキーでは表現できない。

これこそが、時代がトーキーに移っていく中、抗うようにサイレントに拘った、チャップリンの矜持、そのプライドだ。



気付いた彼女に向けて、恥ずかしそうに笑顔を向けるチャップリン、その表情が絶妙すぎる。




泣ける。






以上です。だから私は感動しました。




この映画を初めて見た時は中学生でした。

ビデオで借りて家で見ていたら、日頃、ほとんど私とは会話をしない兄が風呂上がり、髪を拭きながら何気なく見始めました。


ボクシングのシーンで二人で爆笑し、同じ時間を共有したのを今でも強く覚えている。

あんな感覚はあれ一度だけだ。


映画は、何よりコメディというのは、他人と一緒に見る事でかけがえのない経験を得るのだと教えてくれました。



ありがとう、チャップリン。



今はいつも一人で見てるけど。

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