公開時、チャップリン36歳。
喜劇俳優としてはまさにピークだろう、サイレント時代の最高傑作とされています。
以前見た時は、わかりやすい「街の灯」や「モダン・タイムス」ほどの感動は得られなかったんだけど、改めて見ると凄まじい。
風刺とペーソスがチャップリン映画史上最高地点に到達してます。
その偉大さに圧倒された。
ネタバレ度70%
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。
分析
ゴールドラッシュに沸き立つアラスカで、一攫千金を夢見るチャップリン。
いきなりですが、序盤の山小屋のシーン、その完成度がこの映画を名作にしてる一番の理由です(「モダン・タイムス」でも同じことを書いたけど笑)。
雪山の、山小屋でのチャップリンを含む男たちのコメディ。
猛吹雪という設定を活かした笑いがまず抜群に面白い。
そして飢える男たちの表現が凄いです。というより、まず「飢え」をコメディにするという発想がとんでもないです。
ここに今までのスラップスティックコメディ(どたばた喜劇)からの大きな飛躍が見える。
多くの製作費を使えるようになった事も大きいけど、体を張った動きの笑いだけじゃなく、可能性を大きく広げている。
飢えたチャップリンはローソクを味付けして食べ、更には靴を煮て食べます。
この靴を食べるシーンは名シーンとしてよく紹介されています。
靴紐をパスタのように、釘を骨のようにして食べる姿はもは狂気。
本当に美味しそうに食べるその姿、笑えるんですが怖くもある。
そして飢えた男はチャップリンが鳥に見えるようになり、食べようとする。
もはや笑えない。いや、笑えるんだけども!
この序盤にある飢えの表現、それをコメディに仕上げる手腕、もはや異次元だ。
おそらく当時の観客はこんな笑いは初めてだったでしょう、凄いです。
そして映画はここからヒロインとの恋愛になり、いつものチャップリン映画になります。
この構成は後年の「モダン・タイムス」なんかと一緒ですね。
この時期のチャップリン映画ではテンプレなんですが、彼の純情が強くフォーカスされます。
片思いしているヒロインの写真を大事に持っているんですが、それがヒロインを含む女たちが知るところとなり、からかわれてしまう。
それでも彼女の言葉を信じて、クリスマスに一人、ご馳走を用意して来訪を待つチャップリン。
夢の中でかの有名な、ロールパンのダンスをするシーンがあります。切なくも美しい名シーン!
日本人なら自然と山下達郎の「クリスマスイブ」、あのAメロが聴こえてきます。
非モテの男子たちは悶絶する事間違い無しだ。
100年近く前の映画で、これほどの切なさを描いている事に驚かされます。
そして映画のクライマックス、文字通り崖っぷちの山小屋、やじろべえ状態でのコメディが展開されるんですが、これがスリル満点。
大がかりなセットで盛り上げてくれるんですが、これもやはり、当時の観客にしたら度肝を抜かれたんじゃないだろうか。
コメディでこんなにお金のかかったシーンは恐らく無かったでしょう。
こうして見ると、この「黄金狂時代」がいかに新しく、野心的であったかがわかる。
今見ても素晴らしい完成度、風刺とペーソスがチャップリン映画の魅力と言うなら、やはりこれが代表作だ。
以上です。だから私は感動しました。
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