「黄金狂時代(1925)」感想。飢えの表現に狂気さえ感じる、チャップリンの最高傑作!

ア行
引用元 映画.com

公開時、チャップリン36歳。



喜劇俳優としてはまさにピークだろう、サイレント時代の最高傑作とされています。

以前見た時は、わかりやすい「街の灯」や「モダン・タイムス」ほどの感動は得られなかったんだけど、改めて見ると凄まじい。


風刺とペーソスがチャップリン映画史上最高地点に到達してます。


その偉大さに圧倒された。


ネタバレ度70%
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分析

ゴールドラッシュに沸き立つアラスカで、一攫千金を夢見るチャップリン。



いきなりですが、序盤の山小屋のシーン、その完成度がこの映画を名作にしてる一番の理由です(「モダン・タイムス」でも同じことを書いたけど笑)。



雪山の、山小屋でのチャップリンを含む男たちのコメディ。

猛吹雪という設定を活かした笑いがまず抜群に面白い。


そして飢える男たちの表現が凄いです。というより、まず「飢え」をコメディにするという発想がとんでもないです。


ここに今までのスラップスティックコメディ(どたばた喜劇)からの大きな飛躍が見える。

多くの製作費を使えるようになった事も大きいけど、体を張った動きの笑いだけじゃなく、可能性を大きく広げている。



飢えたチャップリンはローソクを味付けして食べ、更には靴を煮て食べます。

この靴を食べるシーンは名シーンとしてよく紹介されています。

靴紐をパスタのように、釘を骨のようにして食べる姿はもは狂気。

本当に美味しそうに食べるその姿、笑えるんですが怖くもある。




そして飢えた男はチャップリンが鳥に見えるようになり、食べようとする。




もはや笑えない。いや、笑えるんだけども!

この序盤にある飢えの表現、それをコメディに仕上げる手腕、もはや異次元だ。


おそらく当時の観客はこんな笑いは初めてだったでしょう、凄いです。




そして映画はここからヒロインとの恋愛になり、いつものチャップリン映画になります。

この構成は後年の「モダン・タイムス」なんかと一緒ですね。

この時期のチャップリン映画ではテンプレなんですが、彼の純情が強くフォーカスされます。




片思いしているヒロインの写真を大事に持っているんですが、それがヒロインを含む女たちが知るところとなり、からかわれてしまう。

それでも彼女の言葉を信じて、クリスマスに一人、ご馳走を用意して来訪を待つチャップリン。


夢の中でかの有名な、ロールパンのダンスをするシーンがあります。切なくも美しい名シーン!

日本人なら自然と山下達郎の「クリスマスイブ」、あのAメロが聴こえてきます。



非モテの男子たちは悶絶する事間違い無しだ。

100年近く前の映画で、これほどの切なさを描いている事に驚かされます。




そして映画のクライマックス、文字通り崖っぷちの山小屋、やじろべえ状態でのコメディが展開されるんですが、これがスリル満点。



大がかりなセットで盛り上げてくれるんですが、これもやはり、当時の観客にしたら度肝を抜かれたんじゃないだろうか。

コメディでこんなにお金のかかったシーンは恐らく無かったでしょう。


こうして見ると、この「黄金狂時代」がいかに新しく、野心的であったかがわかる。


今見ても素晴らしい完成度、風刺とペーソスがチャップリン映画の魅力と言うなら、やはりこれが代表作だ。


以上です。だから私は感動しました。



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