「エレファント・マン(1980)」考察。見る者の脳と心を鷲掴みする傑作!

ア行
引用元 映画.COM

デヴィッド・リンチ最大のヒット作。何と、日本では年間一位だったらしい。


「カルトの帝王」と呼ばれるリンチ、彼の作品がこれほどヒットした理由、それはやはりこの作品が持つ普遍的で、根源的なテーマによるものでしょう。

19世紀に実在したジョゼフ・メリックの伝記もの。あの時代ならではの生き様が胸に迫る。



ネタバレ度70%
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分析


やはり観客の誰もが気になるのはエレファント・マンの素顔でしょう。



当然ではあるが、簡単には見せません。

観客に見せるのは映画開始30分後。


そこまでの焦らし演出はさすがリンチ、わかってらっしゃる。


中でも初めてエレファント・マンと対面した折、アンソニー・ホプキンスが無言で流す涙、その表情が素晴らしい。


いやあ、良い顔ですね!



今や個性派で有名ですが、このようなニュートラルな役もさすがの演技派。

安定感のある演技で作品全体を支えています。




そして初めてエレファント・マンが観客に素顔を晒すシーンですが、食事を届けに来た看護婦、その悲鳴を被せて鮮烈に見せる。

この小さな工夫、上手いです。

カメラワークやアップの多用みたいな過剰な演出で見せないところに、リンチの品の良さがある。




そして医師であるアンソニー・ホプキンスの庇護の下、隔離病棟で暮らす事になるエレファント・マン。

起承転結の「承」、見世物として虐待されてきたエレファント・マンが徐々に人間性を取り戻していく過程が描かれます。


その知性の発露として、聖書を朗読するエレファント・マン。


アンソニー・ホプキンスの妻に優しい言葉をかけられ、不意に涙するエレファント・マン。



ベタではあるが、やはり有無を言わせぬ美しいシーンです。

エレファント・マンを演じるジョン・ハートの演技が素晴らしい。



人気女優の来訪を受けたりして、エレファント・マンが社会的にも認知されていきます。


段々自信を得たエレファント・マンは、スーツを着て、社交的に振舞うようになります。



それと同時に、医師のアンソニー・ホプキンスも名声を得ていきます。

ここまで来て、エレファント・マンを見世物にして利用していた男と自分も同じではないのか?と逡巡するアンソニー・ホプキンスの描写があります。

短いシーンですが作品として非常に重要。


エレファント・マンだけじゃなく、アンソニー・ホプキンスの葛藤も描く事で作品に一段深みを与えてる。

伝記映画ではあるが、このシーン、素晴らしい脚色です。



そして映画はクライマックスへ。

見世物として利用していた男に外に連れ出され、再び人々の好奇に晒されるエレファント・マン。

彼の元から逃げ出した後、ホプキンスの元に戻ってきます。





再び人間的生活を取り戻し、幸福の中、ラストでエレファント・マンが選ぶ選択、必見です。



深い余韻の残るラストシーン。


クライマックスで一度外に連れ出されたシークエンスが非常に効いています。アンソニー・ホプキンスの庇護の下にずっといたらこのラストにはなっていなかったでしょう。

何処まで脚色なのかはわからないのですが、見る者に色々な感情を沸かせて、本当に素晴らしいです。




この作品、伝記ものでもあるせいか、リンチ監督らしいカルトな演出は抑え目です。


でもやはりリンチと言うか、ところどころ「あー、リンチだなー」という映像が出てきます。これが作品の不穏さと相まって非常に効果的。

映画冒頭、エレファント・マンの母親、そして象のカットバック。

オープニングとして最高ですよ。




何よりこの作品の凄味は、見世物小屋にエレファント・マンを見に行く人間と映画を見る自分をダブらせてしまう二重構造。その皮肉。


映画って名作になるには「皮肉」が必要。

この作品はそれをわかりやすく、見事に証明している。



名女優アン・バンクロフト出演も嬉しい。「卒業」のミセスロビンソンとか大好きなんですよ。


画面に色が見える。さすがです。



以上です。だから私は感動しました。




映画中盤、スーツを着て、髪に櫛を入れ、香水を付けるエレファントマンに、中学時代、鏡を見ながら必死に自分がカッコよく見えるアングルを探し続けた頃を思い出した。




そんなアングルは何処にも無かった。


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