「ブラック・レイン(1989)」感想。日米オールスターキャスト、更には松田優作さんの遺作となった伝説的作品!

ハ行
引用元 映画.com

巨匠リドリー・スコットが監督、日米オールスターキャスト、中でも松田優作さんの遺作となった事でもはや伝説的作品にまでなっている本作。


日本人としては見所だらけなのだが、冷静に見ると、リドリー・スコット監督作品の中では並の完成度かなと思う。


その点について、少し書いてみたい。



ネタバレ度70%
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分析


オールスターキャストの映画って、基本的に多くの役者さんに見せ場を用意するためにどうしてもメリハリがないというか、散漫な感じになりがち。


そしてこの映画もその欠点を持っているように思う。



どのキャラにも、どのドラマにも踏み込めていない。よって、クライマックスのカタルシスが弱くなる。


具体的に言うと、やはりマイケル・ダグラスのバディであるアンディ・ガルシアが死ぬのを映画の中盤に、つまりミッドポイントに持ってきているからだと思う。



そこからマイケル・ダグラスのバディが高倉健さんになっていくんだけど、映画の中盤からではその関係性をろくに描く時間が無いまま、クライマックスに入ってしまう。



本来、このストーリーなら序盤にマイケル・ダグラスのバディが殺されて、その復讐のために日本に乗り込み、そこで新たなバディを組み、衝突を繰り返しながらもラストは協力し、犯人を逮捕するという流れが定石です。



バディものの面白さは全く性格の合わない二人が、徐々に理解し、協力していく過程、その変化にある。



なのにアンディ・ガルシアという売り出し中のスターの出番を中盤まで引っ張ったために、マイケル・ダグラスと高倉健さんの関係性、その変化をしっかり描けていない。



ここが弱いため、ドラマが希薄になり、カタルシスが弱くなっている。




もったいないなあと思う。







しかしだ、時折生まれる傑作というものは、脚本の定石を打ち破ったものが多いのも事実。


例えば「羊たちの沈黙」ではジョディ・フォスターが連続殺人犯バッファロー・ビルを追うストーリーなのに、印象に残っているのはジョディ・フォスターとアンソニー・ホプキンスが対面して話すシーンだったりする。



見ている途中、バッファロー・ビルなんてどうでもよくなる程の存在感を放つレクター博士。


ていうか、バッファロー・ビルの顔を全く思い出せない。



捕まえたところで、もはやどうでもいい。




シナリオとしてはどうかと思う。


しかし映画としては大成功だ。それほどにアンソニー・ホプキンス演じるレクター博士の魅力が特大過ぎた。






この「ブラック・レイン」でもアンディ・ガルシアが出演している前半に息を呑む名シーンでもあればまた違った印象を持ったのかもしれない。


健さんとカラオケするぐらいじゃあ、まだだ。




と、脚本の弱さが気になる本作ですが、それ以外では、特に日本人観客にとっては見所だらけです。



まずはやはり本作が遺作となった松田優作さんの怪演。マイケル・ダグラスを凌ぐほどの存在感は流石!



まず、髪型がイカれてる。いや、イカしてる。





日本人キャストの面々がまた異色で嬉しくなります。


若山富三郎さん、内田裕也さん、ガッツ石松さん、安岡力也さん、島木譲二さんなど。


中でも元世界チャンピオンのガッツ石松さんのファイトシーン、安岡力也さんと島木譲二さんが二人並んで吹っ飛ぶシーンなどは、思わず苦笑、確実に日本人のツボを押さえてくれます。




しかし我らが高倉健さんなんですが、助演では魅力を存分に発揮できないなと感じました。


不器用で真面目な役柄は良いと思うんだけど、やはりしっかりとマイケル・ダグラスとの関係性を描けていなかった事が理由だと思う。

W主演ならまた違っただろうに。




リドリー・スコット監督らしい映像のこだわりも良かったです。


松田優作さんとヤクザの親分、若山富三郎さんが会合で衝突するんですが、その場所が何故か製鉄所。



溶けた鉄が流れ、近未来的な雰囲気を醸し出しているんですが、「ヤクザの会合がここ?」というツッコミを禁じ得ない。



いいよ、リドリー。




大阪が舞台なんですが、見慣れた梅田や十三での撮影がやはりワクワクします。




クライマックスでは農民たちがサブマシンガンを撃ちまくるという、刺激が過ぎる映像で魅せてくれます。




やばいよ、リドリー。



更にはクライマックス、松田優作さんがマイケル・ダグラスとのタイマンで謎の構えを披露します。



思わず、「何それ?」と声が出た。是非確認していただきたい。




音楽は巨匠ハンス・ジマー。和の音楽を頑張って奏でていました。ありがとう。



以上です。だから私は感動しました。

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