リドリー・スコットって何気に化け物。
「エイリアン」「ブレードランナー」というSF映画に残る二大傑作を撮り、歴史活劇の名作「グラディエーター」を撮り、しかもこれ。
器用に思えるけど、どれも職人技を超えた芸術性を備えていて、レベルの高さが異常。
全盛期はさすがに過ぎたけど、いまだに良作を量産している。
尊敬します、そのパワー。
クリント・イーストウッドとか最近のお爺ちゃん、ほんと元気。
ネタバレ度80%。
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進み下さい。
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粗筋
テルマ(ジーナ・デイヴィス)とルイーズ(スーザン・サランドン)は旅行中、殺人を犯す。
正当防衛は認められないだろうと、逃亡を開始する。
分析
犯罪者コンビの逃亡を描いた映画は結構多い。
「俺たちに明日はない」「トゥルー・ロマンス」とか。
この作品もそのジャンルなんだけど、面白いのはこの逃亡を通して、テルマが本当の自分を見つける人間ドラマになっている点。
何よりテルマの変化、成長を楽しむ映画になっている。
それがこの作品に深みを与え、いつまでも余韻を残す名作にした。
その点に注目して見ると、脚本の上手さに唸ります。
さすがアカデミー脚本賞受賞作。
映画冒頭、テルマの境遇をさらっと紹介している。
夫が横暴なのはその口ぶりからすぐにわかるんだけど、口ごもるテルマを見て、その気弱な性格がわかる。
更に出色なのは以下のやり取り。
「夕飯は何がいい?」
「金曜だから戻れないかもしれん」
「金曜の夜は何故かカーペットが売れるのね。一体、何故なのかしら」
「店を任された支配人は忙しいのさ」
夫が浮気している事をさりげなく紹介している。
上手いわあ。
このテルマ、気弱なのに大胆、泣き虫なのに気が強い、うぶなのに男好きという、矛盾を孕んだキャラクター。
演じたジーナ・デイヴィスがとにかく絶妙。
彼女の人を信じやすく、すぐにだまされる悪癖が二人の旅をどんどん悪化させていく。
映画前半、レイプされそうになったテルマを助けるためにルイーズが殺人を犯すんだけど、当初は「人を撃つなんて!」と責める始末。
はっきり言って観客からは好かれない。
更には旅の途中で拾ったJD(ブラッド・ピット)とよろしくやって、お金を盗まれる始末。
ここがミッドポイントなんだけど、この事件をきっかけにテルマは変わり、ルイーズとの立場が逆転する。
全財産を盗まれて絶望するルイーズの手を引き、奮い立たせ、挙句、強盗してお金を作るテルマ。
あまりのテルマの変わりようにルイーズ同様、観客も驚かされる。
ちょっと唐突にも見えるけど、彼女はJDと出会って不倫、最高のセックスを経て、解放されたんだろう。
夫しか知らない人生から眼前が開けて、殻を破った。
観客が一気にテルマを好きになり、この瞬間から映画も加速度的に面白くなる。
テルマはもはや家庭への未練など微塵も無い。
夫に電話して、彼の「やあ、テルマ!」の返しを聞いた瞬間、警察の盗聴を悟って電話を切るシーンも切れ味抜群。
このテルマが自分を取り戻していくのと比例して、警察の手が伸びて、二人はどんどん追い込まれていく。
そして追い込まれていくほどにテルマとルイーズは一心同体になっていく。
その様が、友情を感じられて熱い。
後半になるほどリドリー・スコットも詩情溢れるカットを随所に挿入し、二人の高揚と焦燥を描いていく。
こうゆうところが並じゃない。
アメリカの美しい大自然もあり、画面に惹きこまれます。
主役二人以外のキャラ配置も絶妙。
二人の状況をどんどん悪化させていくJDの存在が特に効果的。
ブラッド・ピットの出世作だけど、これははまり役だし、儲け役でもある。
しかし無茶苦茶カッコいいな。
更には二人を助けたいと奔走する刑事役のハーヴェイ・カイテルも魅力的。
ラスト、車を追って走るカットは胸を打つ。
ラストシーンは有名で意見も分かれるだろうけど、私には爽快なハッピーエンドだ。
「ゴー」と言った時のジーナ・デイヴィスの表情には心底惚れる。
あと一つ。
冒頭から音楽がいいなと思って調べたら、やはりあなたか、ハンス・ジマー。
さすがです。
以上です。だから私は感動しました。
ブラピになりたい。
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