アカデミー賞作品賞他、脚色賞など五部門で受賞した刑事サスペンスの名作です。
なかなか見る機会が無かったんですが、今回、BSで放送されてて観賞。
あまり見ないタイプの構成で、非常に面白かったです。
ネタバレ度70%
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。
分析
面白いと感じたのは特に映画前半です。
主人公である黒人刑事シドニー・ポワチエが本格的に捜査を始めるのが中盤になってから。そこにまず驚きました。
何よりその前半のプロットが抜群に上手いです。
映画冒頭、深夜、警官がパトロールの途中で死体を発見。
警官たちは犯人はヒッチハイカーだと決めつけ、早朝に駅で一人、電車を待つシドニー・ポワチエを容疑者として署に連行。
財布を取り上げると結構なお金が入っている。
差別主義者の署長を演じるロッド・スタイガーが「黒人がこんな大金を稼げるか!」と完全に犯人扱い。
更にシドニー・ポワチエの身分証明書を取り上げる。確認すると、彼が刑事とわかる。
母親に会いに来て北部に戻る最中だったという。
当然、署内は気まずい雰囲気。
ここまでシドニー・ポワチエが刑事だと名乗らないのが良いです。観客はわかってますけど、悪態をつく警官たちを眺めて、彼らがどんな反応を見せるのか、楽しみになる。
上手いです。
そしてシドニー・ポワチエが殺人課の腕利きという事で、死体を検分してもらう。
その仕事ぶりは完璧なプロ。田舎の警官たちは圧倒される。
ここまででシドニー・ポワチエのキャラ立ては大成功。60年前の作品ながら、キャラクター造形は見事としか言いようがない。上手いです。
そしてシーンが変わり、警察犬に追われる新たな容疑者。そして逮捕される。
ここまでで映画開始30分。
これからどうなるんだ?
もはや期待しかない。完璧過ぎるセットアップだ。
捕らえた容疑者と対面するシドニー・ポワチエ。
警官たちは自信満々。何故なら被害者の財布をこの容疑者が持っていたからだ。
しかしシドニー・ポワチエは容疑者が左利きだと見抜き、警官たちに「彼はシロだ」と告げる。死体を検分した折に、犯人は右利きだと見抜いていたからだ。
しかし署長たちは聞く耳を持たず、シドニー・ポワチエに逆ギレ。
FBIに報告すると言うシドニー・ポワチエを逆に逮捕し、留置場に入れる始末。
やべえな、田舎の警察!
この誤認逮捕の騒動時、署内には被害者の夫人もいる。被害者は町の有力者で、夫人も力を持っている。
夫人はいまだこの容疑者を犯人だと言い張る署長たちに「呆れた。それでも警官なの?」と吐き捨て、捜査の担当をシドニー・ポワチエにするよう要求する。
署長はしぶしぶシドニー・ポワチエを釈放。
北部に戻ろうと駅で電車を待つシドニー・ポワチエを、署長は引き留めて、捜査の協力を要請する。
そしてシドニー・ポワチエが本格的に捜査を開始する。ここがミッドポイントです。
シドニー・ポワチエと署長の駅でのシーンがまた良いんですよ。
お互いの意地がぶつかり合い、素直に頼めない、拒めない葛藤が滲み出る。
キャラクターが反映された台詞の妙、そして二人の演技。完璧だ。
刑事ドラマなのに、主人公の刑事が捜査を開始するのがミッドポイントという、ちょっと他では見ない構成、そしてその前半部分が抜群に面白いのが凄まじい。
まあ、だから後半は普通の刑事ドラマなんですけど。
しかしやはり人種差別の色濃く残る南部が舞台という事が、映画のアクセントになっています。
黒人の刑事が嗅ぎ回っているという事で、面白く思わない連中の妨害が始まる。
殺される危険を感じながら捜査するという、普通の刑事ドラマでは無い状況がスリリング。
そして事件に関しては、冗長に思った冒頭の警官のパトロールのシーンが見事な前フリだったとわかる伏線回収。
ここ、唸ります。本当によく計算されている。
そして映画はラストを迎えるんですが、気付けばシドニーと署長の間に友情が生まれています。
まるで「グリーンブック」の刑事版という趣き。
この脚本、完璧じゃないか!
今でも人種差別は残っているんでしょう。
北部と南部でも違っているんでしょう。
日本人には理解しにくい部分もありますが、刑事ドラマとして超一級。
なお、アカデミー主演男優賞を黒人で初めて受賞した事で有名なシドニー・ポワチエ。
すっかり受賞したのはこの作品だと思っていたのですが、この四年前の「野のユリ」だったんですね。そちらも機会があれば見てみたい。
この作品で主演男優賞を受賞したのは署長役のロッド・スタイガーでした。
どう見ても主演はシドニー・ポワチエだけど。
以上です。だから私は感動しました。
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