「バグダッド・カフェ(1987)」感想。ミニシアターブームの先駆けとなった伝説の一作!

ハ行
引用元 映画.com

そう、公開時から高い評価を受けた名作なんだけど、何故名作なのか、言語化が難しい不思議な映画です。


ヒューマンドラマなんだけど、不思議とファンタジーを見てるような感覚になる。

他に例の無い、唯一無二の作品かと。


今回見直したので、思った事をつらつらと。



ネタバレ度50%
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分析



何度もカバーされている主題歌「コーリング・ユー」の力がかなり大きいのは確かだけど、それだけでは名作にはならない。



そしてシナリオに関しては、それほど凄いとは思えない。


「バグダッド・カフェ」に集う人達の群像劇で、そこでの人々の交流を描く、言ってみればよくある設定。


邦画でもこの手の内容はよく見かけます。
ストーリーを構築する必要がほとんど無く、その上、個性を出しやすいので、若い映画作家の作品では特に多い。

その分、名作になるには相当な実力が必要になります。




この「バグダッド・カフェ」が名作になったのは、まずキャスティングの絶妙さ。

ドイツ映画なのもあるけど、有名な役者は皆無。

だけど主要人物のはまり具合、その存在感が見事です。



主役のジャスミンを演じたマリアンネ・ゼーゲブレヒト、太った中年女性だがその体同様、存在感の大きさが凄まじい。


このジャスミンのキャスティングは本当に当たりでしょう。
彼女以外のジャスミンは考えられないほどのはまり役です。



更にはバグダッド・カフェを取り仕切る女主人、ブレンダを演じるCCH・パウンダーのキャスティングも見事。

映画前半はとにかく不機嫌で他人に当たり散らす、迫力が凄いです。

激情家で亭主を追い出すが、その直後に泣き崩れる、その情緒不安定ぶり。

彼女の孤独、苛立ちが強く表現されながらも、同時に弱さ、優しさも同時に描かれます。



映画は群像劇ながら、この二人の衝突、そして友情を築いていく様子を縦軸にして展開します。

ここがしっかりしているので、散漫な印象ながらも統一感がある。




夫と別れて、行き場を失ったジャスミンがバグダッド・カフェに現れる映画序盤。

荒廃したバグダッド・カフェで日々を過ごし、店の人々と接していく。

勝手に掃除を始め、ファッションや音楽などを通じて、徐々にみんなから受け入れられていきます。

更に簡単なマジックを披露して、それが大ウケでカフェは繁盛していく。


こうして自分の居場所を構築していくジャスミンの姿が丁寧に描かれていく。



そう、この映画は宙ぶらりんの孤独な中年女性が自分の居場所を見つけ出す映画であり、そこが大きな共感ポイントになっているのが、他の群像劇とは一線を画すポイントです。





クライマックスではすっかり打ち解けたジャスミンとブレンダが店で歌い踊る。
このシーンは店員も客も笑顔が溢れていて、非常に楽しい。


更に言うと、ブレンダの歌が上手すぎて、ほぼミュージカル映画のような趣がある。


ファンタジーのような多幸感に満ちていて、この映画の魅力を存分に表しています。




こんなハッピーな映画なんですが、カフェの客の中には「みんな仲が良すぎる」と言って、去っていく女性もいます。

この描写は非常に秀逸。
ただのハッピーな映画じゃなく、苦みもしっかりと表現されている。


この奥行きこそが、この映画の魅力です。



以上です。だから私は感動しました。




でもやっぱり、主題歌「コーリング・ユー」の力はでかい。



そして今はオリジナル版より17分長いディレクターズカット版が普通に配信されているんですが、個人的には前半が少し長いかな。
見比べてないのでどこが追加されたシーンかはわからないんだけど。

初見の方は90分弱のオリジナル版の方が見やすくて素直に感動できると思います。


ディレクターズカットって、基本ファンサービスですから。


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