「トゥルー・ロマンス(1993)」感想。売り出し中ながら既に確立されているタランティーノ節!

タ行
引用元 映画.com


タランティーノの脚本がとにかく魅力のトニー・スコット監督作品。

「俺たちに明日はない」的なカップルの逃走ものとして非常に見やすく、タランティーノ入門編としても最高です。



ネタバレ度60%
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分析

作品の魅力は何と言ってもタランティーノ脚本によるキャラクター造形と台詞の魅力でしょう。

前年に「レザボア・ドッグス」で監督デビューしてるんですが、若きタランティーノの才気が爆発しています。





クリスチャン・スレーターとパトリシア・アークエットの主人公カップル、その出会いからとても魅力的に描かれています。


まずクリスチャン・スレーター。

冒頭、飲み屋で隣の美女をナンパ、映画に誘います。

「ソニー千葉の映画を見に行かないか」
「ソニー千葉?」
「知らないのか。最高のカンフースターだ」
「私をカンフー映画に?」
「三本立てだ」

もちろんナンパは成功しない。このわずかな台詞のやり取り、噛み合わなさが最高です。

クリスチャン・スレーターのキャラクターが良く出ていて、美女をカンフー映画に誘い、「三本立てだ」と得意げに語るその様子、





絶対にモテません。


かつての自分を見ているようだ。


映画好きの私たちは文句なしに彼を好きになる。見事なセットアップだ。



そして映画館で一人でソニー千葉を観賞中、同じく一人でやってきたパトリシア・アークエットがポップコーンをぶちまけ、二人は仲良くなる。

そしてあっという間にベッドシーンですよ。ここまで映画はわずか十分弱、このテンポの良さよ!




翌朝、パトリシア・アークエットは自分はコールガールだと告白。クリスチャン・スレーターが勤める店の店長に頼まれたと。自分はあなたへの誕生日プレゼントだと。


だが「あなたを好きになってしまった」と。


泣きながらそう告白する彼女の演技はとても説得力があり、そしてキュート。

ここで観客は全員、彼女を好きになる。





そのまますぐに二人は結婚。


そこでクリスチャン・スレーターは彼女を殴ったというポン引き、ゲイリー・オールドマンへの怒りを募らせ、彼の元へ一人で出向き、殺害して大量のクスリを奪う。


ここのゲイリー・オールドマン、まさに独壇場です。



目がイッてます。楽しそうにもほどがある。






タランティーノの脚本は役者が本当に楽しそうに演じているのが魅力です。役者が言いたくなるような台詞がたくさんあるんでしょう。




クリスチャン・スレーターはパトリシア・アークエットの元に戻り、ゲイリー・オールドマンを殺害してしまったと告白。

夫が殺人を犯したと聞いて泣き出してしまうパトリシア・アークエット。




「殺したなんて…ロマンチックだわ」


そして二人は熱い抱擁。







こいつら、イカれてるな!




タランティーノ、最高ですね。しかもここまでで三十分弱ですよ、濃密が過ぎる。

タランティーノのキャラ造形、台詞の上手さが迸ってます。もはや誰にも真似できない。




そして逃走する二人は、まずクリスチャン・スレーターの父親、デニス・ホッパーに会いに行きます。


結婚した事の報告と、警察が自分を追っているかどうかを、元警官のデニス・ホッパーから聞き出すために。


ここ、三年ぶりの再会なんですが、二人の不器用なやり取りから親子の確かな絆が感じられ、静かな感動を呼びます。


やはり台詞がピカイチだ。

このシーンとか最高ですよ!


そしてこの再会が今後の布石になっています。ちゃんと前フリとして機能している構成も上手い。




そしてデニス・ホッパーの元へ、二人を追うマフィア、クリストファー・ウォーケンと仲間たちが現れます。

二人の行き先を尋ねるウォーケンと、絶対に口を割らないホッパーの対決。




このシーン、作品の見せ場として有名なんですが、やはり名優二人のガチンコは本当に素晴らしいですよ。

デニス・ホッパーが吐くハッタリがまさにタランティーノ節で最高です。




ちなみにここは起承転結の「承」にあたる箇所なんですが、「承」には作品の肝となる一番面白いシーンを持ってくるのが構成の定石です。


つまり、普通は主人公を描くシーンのはずなんですよ。


ここでこの脇役二人の対決を持ってきている事が凄いんですよ、他の脚本家はまずやりません、そして実際、一番面白いシーンなんだから猶凄い。



そして結局、クリスチャン・スレーターたちの行き先がばれます。ミッドポイントです、ちゃんと映画の中盤一時間のところになります。


マフィアに追われているとも知らず、クリスチャン・スレーターとパトリシア・アークエットは幸せの絶頂です。

日中の電話ボックスで事を始める始末。


このバカっぽさ、良いですね。



その後はクリスチャン・スレーターが友人を頼りにクスリを全て売ろうとします。

交渉する場所としてジェットコースターを指定するのも上手いです。


ただ交渉するだけじゃなく、画的にも面白く見せたいというタランティーノの工夫が見える。

絶対に普通には描かないという信念さえ感じる。




そしてこの作品の第二の見せ場、パトリシア・アークエットが追っ手のマフィア、ジェームズ・ガンドルフィーニから暴行を受けるシーンに。


ここもまたタランティーノらしく、ただ暴行するだけじゃなく、そのキャラクターを立体的に見せる面白い台詞で魅せてくれます。



「最初の殺しが一番難しい。今となっては相手の表情を楽しむ」とか。


演じるジェームズ・ガンドルフィーニが良いんですよ。

この時期はまだ無名ですが、この演技で注目されて、後に人気ドラマ「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」の主演でエミー賞を受賞しています。



ここまで読まれた方はもうお気づきでしょうが、キャストの豪華さが凄いです。

クリスチャン・スレーター、パトリシア・アークエット、ゲイリー・オールドマン、デニス・ホッパー、クリストファー・ウォーケン、ジェームズ・ガンドルフィーニ、他にはヴァル・キルマー、サミュエル・L・ジャクソン、ブラッド・ピットなど。





ヤバい。



まだ売り出し中なのに、タランティーノの名が既に映画人の中で知れ渡っていたんでしょう。


ブラッド・ピットなんて、前年に「リバー・ランズ・スルー・イット」でロバート・レッドフォードの再来とか言われ、そのイケメンぶりで人気が爆発した時期です。



それが今作ではこれ。ヤク中で口の軽い最低男。


今だと、それもブラピらしいなあと思う。




ここからクリスチャン・スレーターと仲間たち、警察、マフィアが一堂に会するクライマックスへ。


見ればわかる、「あー、タランティーノだなあ」と感じるシーンの連続です。



ちなみにエンディングに関しては、直しを要請されてタランティーノ自身は渋々改稿したとか。

確かに「レザボア・ドッグス」なんかと比べれば、甘すぎるエンディングです。らしくないとも言えるし、これは悔しいでしょう。

いまだに配信が無いのはそこも影響しているのかな。



それでもタランティーノの脚本を、テンポ良くまとめたトニー・スコットはさすがの演出。

おかげでタランティーノ演出作品より、見やすくなってると思います。




以上です。だから私は感動しました。



あと、とても音楽が印象的です。誰かと思ったらやはりですよ、ハンス・ジマー!



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