言わずもがなのラブコメ群像劇の傑作。
「アバウト・タイム」も有名なリチャード・カーティス監督、脚本作品。
「ノッティングヒルの恋人」「ブリジット・ジョーンズの日記」の脚本家としても有名。
今回も唸る匠の技。
ラブコメの脚本といえば古くはビリー・ワイルダー、その師匠のエルンスト・ルビッチなど。
映画ファンなら誰でも知っているこれらの巨匠に並ぶレベルです、リチャード・カーティス。
「現代ラブコメの帝王」と勝手に任命したい。
新作全然発表しないけど。
誰よりもハッピーエンドな作品を書くリチャードだが、今回はいつにも増して極上ハッピーエンド。
色んなカップルの恋が成就していく様をこれでもかと見せてくる。
気付けば自分の恋も成就した気になってくるなってないけど。
ネタバレ度30%
未見の方はDVDや配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。
でもこの監督の作品ならハッピーエンドは約束されてるからね。
読んでから見ても面白いと思います。
この記事を書いている2023年12月現在、U-NEXTでは見放題配信されています。
DVDで観賞したい方は私も利用している宅配レンタルがお勧めです。
分析
クリスマスに向けて、数組の男女の恋愛を描いていく群像劇。
この場合、ストーリーの構成よりも大事なのは魅力あるシーンをどれだけ並べられるかにかかっている。
そしてそれこそシナリオの真の実力を問われるところ。
腕に覚えのない脚本家は絶対に真似しちゃいけない。
独りよがりのごちゃごちゃした脚本しかできない事を全力で保証する。
リチャード・カーティスの上手さを嫌味なほどに感じるシーンを列挙してみよう。
このようなシーンを見る度に私は打ちのめされていた。
デザイン会社社長ハリー(アラン・リックマン)と従業員のサラ(ローラ・リニー)が登場するシーン。
ハリーがサラに尋ねる。
「君はうちに来て何年になる?」
「二年と七カ月、三日と二時間です」
「カールに惚れてからはどれくらいだ?」
「二年と七カ月、三日と一時間半です」
どうですか、いきなりの登場でこの台詞のやり取り。
悶える以外に何ができますか。
ダニエル(リーアム・ニーソン)は11歳の息子と二人暮らし。
その息子が最近、ふさぎ込んでおり、その理由を尋ねる。
すると息子は恋に悩んでいるという。
「何だ恋か」と安堵する父親に対して、息子が言う。
「恋より苦しい事なんてないでしょ」
「そ、そうだな」
11歳の我が子に諭されるリーアム・ニーソン。
もう胸を掻きむしるしかありません。
イギリス国首相(ヒュー・グラント)が意中の秘書ナタリーに彼氏と別れた理由を聞く。
「足が丸太のようって言われて」
「首相命令でその男を殺そうか?」
自分の溜め息の大きさに驚きました。
これらの粋なシーンの数々。
まだまだたくさんあります、そのセンスに誰もが心地良くなるでしょう。
また、この作品はオールスターキャストと宣伝されてますが、そのキャスティングも絶妙。
誰もが知るところではヒュー・グラント、エマ・トンプソン、キーラー・ナイトレイ、リーアム・ニーソン、コリン・ファース。
他は名前は覚えてないけど、何かで見たなあと記憶を探りたくなるキャスト陣。
こうゆう人が出てきて、違う顔を見せてくれると嬉しい。
恋の助言をする優しき社長、アラン・リックマンはよく見たら「ダイ・ハード」のテロ組織のリーダー。改心したのか!
破廉恥ロックスターのビル・ナイは「アバウト・タイム」の優しいお父さん。牙を抜かれたか!
親友の奥さんを愛してしまった切なさを存分に見せつけるアンドリュー・リンカーン。
この数年後、「ウォーキング・デッド」でゾンビを殺しまくる!
女優陣がちょっと知名度弱いけど、みんな魅力的。何故か出ているローワン・アトキンソンは意味不明だが。
私的にはスタンドイン俳優の男女の恋がツボでした。
スターの代わりにリハーサルで演じる役者さんなんだけど、初対面でお互い素っ裸。
仕事中、おっぱいを揉みながら「今の首相をどう思う?」とぎこちなく世間話を始める。
そしてラストは告白して交際を始めるんだけど、設定が面白いよね。
これだけで一本撮れそう。
というわけで、さすがのリチャード・カーティス。
見せつけてくる匠の技に観客はみな、酔いしれましょう。
以上です。だから私は感動しました。
ちなみにこの作品、ラストでみんなの恋愛がどんどん成就していきます。
キスする映像を滝のように見せられ、ハッピーエンドのつるべ打ち。
そして気付けば自分も告白したくなってくる。
告白すれば必ず叶うものと思い込んでしまう。
気をつけてください。
外に出て、最初に会った異性に告白しようと一瞬、腰を上げそうになります。
実際は警察を呼ばれるのでやめましょう。
おすすめリチャード・カーティス監督作品
○「ノッティングヒルの恋人」
これは脚本だけ担当した作品だけど。
スターと一般人の恋という黄金パターンを作り上げたラブコメの傑作。
ジュリア・ロバーツとヒュー・グラントもこの作品で二度目の全盛期に。