内容としてはチープなキッズ映画なんだけど、スピルバーグの神がかった演出により、とんでもない没入感、そして深い感動を味わえる不朽の名作です。
何度も見てるけど、見る度に唸る。
あの時代の、あの時期のスピルバーグにしか撮れないという意味で、彼の代表作だと思います。
ネタバレ度60%
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。
分析
この時期、スピルバーグは文字通りの全盛期なんですが、その演出力の凄さはこの映画の序盤10分だけでも見ればわかる。
ETたちと彼らを捕えようとする大人たち、その様子を台詞無し、映像だけで見せている。
ETとはどのような生命体なのか、また、捕えようとする大人たちが何者なのか、そんな説明は一切無し。
双方の姿や顔をほとんど見せず、カメラの位置を低くして、ETの視点で不穏な空気を作り出している事、まず天才。
この序盤だけで観客はこの世界観に惹き込まれてしまう。
凡庸な監督なら「あそこにいるぞ!」みたいなどうでもいい台詞をキャラに言わせ、そのままありきたりな捕縛劇をサスペンスタッチで撮る。捕まえる寸前で逃げられた、みたいな。
しかしそれではこの没入感は作れないんだ。スピルバーグ、はい、天才。
そして場面は変わり、主人公エリオット少年の、家族や友人との描写。
パシらされているエリオットが物置にボールを投げたら、何者かが投げ返してくる。
ここでエリオットは「物置に誰かが隠れてる!」と大騒ぎ。
と同時に、観客には明らかに人ではない、ETの指をチラ見せ。
ETの全貌を見せる前にこのチラ見せを繰り返す焦らし演出、定番のテクニックですが流石です。
そして再度、エリオットは仲間とはぐれたETと遭遇する。だが、逃げられてしまう。
ここまでで映画開始15分。
展開はややスローだが、台詞じゃなく映像でじっくりと惹きつけているおかげで凄い没入感です。
ここまでの内容を台詞のやり取りで見せちゃうと一転、退屈になっちゃうんですよ。
そしてエリオットは家族に怪獣を見たと言うが、誰も信じてくれない。
この描写でエリオットに対する観客の感情移入もOK。スピルバーグ、抜かり無し。
その後、エリオットはETと再会して、交流を深めていく描写が続きます。
この様子、台詞を極力抑え、映像で表現していく演出が本当に素晴らしいです。
動物との交流を描く映画とかたくさんありますが、見比べるとよくわかる。
「映画は映像表現」と言われる理由はこれなんですよ。没入感が違うんですよ。
と同時に、ETを捜索する大人達をしばしば描写して、サスペンスを増す工夫も素晴らしい。
彼らの正体を説明せず、カメラ位置を低くして、ほとんど顔を映さない。
子供の視点、そしてETでの視点で語る事を何より重視してこの演出を採用したんだろう。大胆な方法だが、その効果はてきめんです。童心に返るとはこの事だ。
ETはエリオットと交流していくうちに、特殊な能力を見せ始める。
物を浮かせたり、枯れた花を咲かせたり。
本当に幻想的な美しいシーンなんですが、今後、この花を効果的に使用していきます。
映像で見せていく、表現していくという意味でこれほど素晴らしい小道具の使い方はなかなか無い。必見だ。
更には冷蔵庫のお酒を飲んで酔っぱらうET。
同時刻、学校にいるエリオットもETとリンクしているのか酔っぱらってしまい、学校で騒ぎを起こしてしまう。このエピソードの楽しさはどうだ。
二人の関係性、その絆を何の説明も無く見せている。上手い。
そしてETが星に帰りたい意志を見せる。ここがミッドポイントです。
ETは電話を改造して、宇宙にいる仲間たちと通信する。
電話で?
ここは「おい、嘘だろ!」と思わずツッコミを入れてしまうチープさだが、もはやそんな事はどうでもいい。
途中、エリオットとETが一緒に自転車で空を飛ぶシーンがあるんですが、その高揚感たるや。

そしてクライマックス前、体調を崩し、病気になったETは大人たちに捕えられます。
更にETとリンクしているエリオットも共に病気になる。
映画前半、二人がリンクしている事で楽しいシーンを見せていたが、ここでは主人公を追い込んで切迫感を増幅させる事に成功しています、素晴らしいアイデアだ。
大人たちに捕えられ、瀕死のETとエリオット、ここからどのようなラストを迎えるのか。
素晴らしすぎてもはや言葉では表現できない。
見てくれ。彼らの友情を。そして愛を。
本当に素晴らしい映画だ。
キッズ映画の枠を超えて、全人類が涙する。
私も幼少時、初見の折はエリオット少年と自分を重ねて深く感動しました。
今や外見はET寄りになってきてますが、大人になった今でも変わらず、いや、以前にも増して感動する。
数年前、映画館で見た折、まだ字幕の読めない幼児が夢中になって見てました。
この映画はあの時期のスピルバーグにしか撮れない。他の誰にも撮れない。
名作です。
以上です。だから私は感動しました。
そしてやはりもう一人のキーパーソン、音楽のジョン・ウィリアムスね。
感動のスコア、たまりません。
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