監督は「羊たちの沈黙」のジョナサン・デミ。
主演はトム・ハンクスとデンゼル・ワシントン。
主題歌はブルース・スプリングスティーン。
もはや名作になるのは確定しているようなこの豪華な座組。
作品はトム・ハンクスがアカデミー主演男優賞、ブルース・スプリングスティーンが歌曲賞を受賞して成功しましたが、最近、この作品が話題になる事はあまり無い気がする。
今回、見直してみたので、思う事をつらつらと。
ネタバレ度40%
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。
分析
トム・ハンクスがアカデミー主演男優賞をとった作品なんだけど、翌年に二年連続で主演男優賞を受賞した「フォレストガンプ」の方が有名です。
ただ、この二作以前は、有名テレビ番組出身のコメディアンとして知られていました。
実際、主演映画も「ビッグ」「スプラッシュ」などのコメディ作品がヒットして、コメディ俳優として一目置かれた存在だった記憶がある。
私も「ビッグ」が大好きで、軽妙な演技が得意な人気俳優というイメージでした。
それがこの作品で、シリアスなエイズ患者を魂の熱演。
初見時、唖然とした記憶があります。
その印象だけが強くて、作品の内容はほぼ忘れてました。なので今回、久しぶりに観賞。
その感想、
トム・ハンクスってこんなに凄かった?
今見ても凄い。もはや、ヤバい。
エイズ患者にしか見えません。
現在、エイズがどれほどの病気なのかは勉強不足なのですが、あの頃は完全に不治の病として恐れられていました。
あの時代のエイズへの恐怖、周囲の偏見や差別に対する焦り、戸惑い、絶望。
トム・ハンクスの演技はそれらを余すところなく表現しています。
この時期ですね、W主演のデンゼル・ワシントンは「グローリー」でアカデミー助演男優賞を既に受賞してて、名優の座を確実にしていました。人気も絶頂で。
なのにですね、コメディ俳優と思われていたトム・ハンクスが完全に食っています。
いや、もちろんデンゼル・ワシントンも流石の演技をしているんですけども。
作品はそんな彼がかすむほど、トム・ハンクスの独壇場。
それほどに凄い。
今ではアメリカの正義、良心を体現する国民的俳優ですが、そんな彼の一つ抜けたベストワークだと思います。
しかしこの映画、エイズで事務所を解雇された事に対する賠償請求の法廷劇なんだけど、脚本は少し弱いように感じる。
法廷劇ならでは丁々発止、見え方や認識が二転三転するようなやり取りがほぼ無い。
だからか、中盤、少し緊張感が欠けています。
トム・ハンクスの弁護を担当するデンゼル・ワシントンが演じる役は、実はホモが嫌いです。
エイズに対する偏見もがっつり持っています。
その初対面ではトム・ハンクスがエイズと知ると、握手している手を引っ込め、露骨に距離を置くほど。
妻にも「俺はホモは嫌いだ。古い男で結構」とのたまう始末。
そんな彼がトム・ハンクスの弁護を引き受けるんですが、ここ、その変化が見せ場になるのかと思いきや、さらっと描かれて、気付けば弁護を担当しています。
後の展開が面白いと、「あの省略はさすが!」と思うんですが、そうでもなかったので、ここをもっと掘り下げても良かったのかなとも思います。
脚本への不満点を書きましたが、良い点もあります。
それは序盤に、トム・ハンクスとデンゼル・ワシントンが弁護士として争っているシーンがある事。
その後、トム・ハンクスは事務所を解雇されて、自分の弁護をデンゼル・ワシントンに頼みます。
かつてのライバルに自分の命運を託す、これを私は「白い巨塔」パターンと呼んでおり、鉄板の激アツパターンです。
描き方次第では、もっと激アツにできたのに!と悔しくも思うんですが、この大好物パターンが出てきただけで良しとしましょう。
というわけで、脚本としては物足りなさもあるんですけど、トム・ハンクスの凄さを体感できる映画としておすすめしたい映画です。なんせ私、「フォレストガンプ」が少し苦手なもので。
やせ細っていくトム・ハンクスには狂気すら感じるレベル。
ここが役者人生の勝負だと認識していたんでしょう。
コメディ俳優の評価を大きく変えた、その覚悟が垣間見えます。
以上です。だから私は感動しました。
あと、テレビドラマ「グレイズ・アナトミー」が大好きな私は、ミランダ・ベイリー役のチャンドラ・ウィルソンを発見して嬉しかったです。
まだ完全に無名の時代ですね。
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