湊かなえさんの代表作を中島哲也監督が脚色、監督。
独特のプロット構成ながら、松たか子さんが圧倒的な存在感でど真ん中に居座る事で異例の高みに到達した傑作。
久しぶりに見直したら凄かったので今回もつらつらと書いてみたい。
ネタバレ度60%
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。
分析
邦画でこれほど高い完成度のミステリーはなかなかお目にかかれない。
ハリウッドからリメイクのオファーがあったのも頷ける。
まず色んな登場人物たちが告白する形でストーリーが進行するプロットが秀逸。
これは本屋大賞を受賞した湊かなえさんの原作の力が大きいでしょう。
読んだのは発売当初なのでどこまで原作通りなのかは思い出せませんが。
教師が自分の娘を殺した生徒に復讐する。
ミステリーと言っても冒頭三十分で犯人は明かされるので、犯人探しの映画ではない。
そこから殺人の動機、真相、更に教師がどのような復讐をするのかを様々な人物の告白を通して描写していく展開は非常にスリリング。
語り口の妙で一気に見せる。
そこで何より注目したいのは殺人の動機だ。
犯人が中学一年生だけあって、本人達は大人ぶってるけど傲慢で幼稚、中二らしさ全開。
それをここまでリアルに描くかと驚きます。
原作者と脚色者の瑞々しい感性が爆発してて本当に素晴らしいです。
デビューして間もない頃だった湊かなえさんだから描けたとも思います。
ベテランになるとこれはもう書けない。
若く、小説家としての野心が漲っていたからこそ、でしょう。
中学生の一人が放つ「殺人が悪なんて誰も教えてくれなかった」という台詞なんて、なかなか出てきませんよ。
余談になりますが、この原作が発表される少し前の2000年前後は少年犯罪が大きな話題になり、「命の大切さ」をテレビなんかがよく説いてたんですよ。
ニュース23だったかな、一般の若者たちを集めて座談会みたいなのをしてて、ある少年が「何故人を殺したら悪いのかがわからない」と発言して、その場にいた武田鉄矢さんとか大人たちが必死に説明してしどろもどろになってたのを覚えています。
私自身もショックを受けました。言葉で説明できない事に気付いたからです。
この「告白」もそんな時代の空気を感じます。
時代を捉えた映画ってやはり特別で、だからこそ、なかなか生まれないんですよね特に邦画は。その意味でも貴重。
この作品が異例の大ヒットとなったのは時代の後押しもあったんでしょう。
湊かなえさんはこの作品以後もヒットを連発して今や大作家ですけど、この「告白」はやはり特別だ。
次に役者陣の演技が本当に素晴らしいです。
主演の松たか子さん、トレンディドラマのヒロインをつとめる清純派女優のイメージを見事に打ち破る冷徹な演技は圧倒的だ。
そして更に注目したいのは、助演の岡田将生さんと木村佳乃さん。
特に岡田将生さん、今やサイコパスを演じたら右に出るものはいないんじゃないかとさえ思える。
正論を振りかざす、自分を正義と思い込んでいる人間が現実社会でも一番厄介だが、その一番ムカつくところを絶妙の笑顔と純粋さで見せてくれます。
本人もこの役で鉱脈を見つけたと手応えを感じたんじゃないかな。
サイコパスなら俺だと。
木村佳乃さんも息子に向ける一方的な愛情がはまってます。
これも本人は手応えを感じたと思う。
モンスターペアレントなら私だと。
そして生徒たちもみんな良かったんですが、やはり橋本愛さんの完成された美貌は驚きを超えてもはや引く。
公開時は14歳か、こんな美人が教室にいたら男子は勉強なんて手につかないだろう。
私だったら緊張して目も合わせられなかったに違いない。
素っ気なく接しつつ、心拍数は限界値だ。
席替えの度に神社に願掛けに行ったかもしれない。
美人は大変だ。
主題歌のレディオヘッドも非常に合っていて、クライマックスを効果的に盛り上げてくれる。
まあ、映画でレディオヘッドが流れると名作感が出過ぎるので反則だと思ってますが。
中島監督の映像は独特なので、好みが分かれるところ。
もうちょっと落ち着いて見せて欲しかったなという印象もありますが、シリアスな内容に独特の軽さが加わって、やはり面白い。
監督の作品では一番好きですね。
以上です。だから私は感動しました。
ちなみに「侍タイムスリッパー」で今や時の人、山口馬木也さんが出てます。
気付いた時はちょっと嬉しかった。
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