今回、分析するのはデヴィッド・フィンチャー監督の代表作の一つ。
この脚本は「すごい」を超えて、もはや「えぐい」ですよ。
ほとんどの脚本家はただただ唖然。
圧倒される二時間半だと思います。
もちろん、私も。
更に主演のロザムンド・パイクの演技は圧巻。
最後はもう得体のしれない怪物にしか見えません。
女優としてこんな役を演じられたら本望でしょう。
最初にオファーを受けて、この脚本を読んだ時は狂喜乱舞したと思います。
ストーリーはもう全く先が読めません。
何一つ予想通りに進まず、軽々と頭上を越えていきます。
この脚本を担当したのは原作小説を書かれた方です。何か納得。
綺麗にまとまっていなくて、何か歪な印象を受けるんですよね。
映画脚本をずっと書いてきた人だと、もっとまとまってるように思います。
ただ、その歪なところがこの作品の魅力です。難しいっす。
ネタバレ度90%
後半はがっつりネタバレします。
そこに来たらお知らせします。
粗筋
一見、幸せに見えるエイミー(ロザムンド・パイク)とニック(ベン・アフレック)の夫婦。
五回目の結婚記念日を迎えようとした朝、エイミーが失踪し、状況は一変する。
分析
妻エイミーの突然の失踪。サスペンスとしてはよくある出だしです。
失踪事件として捜査が開始され、
エイミーは児童書のモデルとして有名なため、マスコミにも取り上げられます。
すると夫、ニックが殺したのではないかとの憶測が広がり、警察も疑惑の目を向けます。
夫のニックは不倫をしていた事もおおやけになり、疑念は増すばかり。
この間にエイミーの視点で二人の出会い、そして幸せな結婚生活が語られます。
サスペンスの緊張感がどんどん増していきます。
見事な演出と演技で上質なサスペンス映画だと嫌でも感じさせる。
観客も夫が殺したのか? なら、死体は何処にあるのか?と考えだします。
はい、ここから少しネタバレします。
まだ未見の方は急いで鑑賞、そしてここにUターン!
夫ニックの犯行なのか? 死体は何処にある?
観客は考え始めます。
凡庸な脚本家が予想するなら、中盤で妻の死体が発見され、犯人は誰だ?みたいな展開でしょうか。
意外な人物が犯人として浮上する、みたいな。
そんな事を考えていたら、驚きです。
中盤(ミッドポイント)であっさり妻のエイミーが登場します。
そう、全ては妻の企みだったと。
驚きなのは、誰かが捜し回って現れたわけじゃなく、
エイミーがポーンと画面に出てくる事。
え、こんな事ある?
私、そこらのどんでん返しよりよほど驚きました。
夫ニックの犯行なのか、死体はどこなのか、なんて考えていたのが一瞬で吹っ飛びます。
もう何も考えられない!
でも、まあ、あるっちゃあ、ある。このような展開も。
と、気を取り直して、再びスクリーンに集中します。
ていうか、今書いてて思ったんだけど、これをやるなら普通は二幕の直前じゃないのか。
起承転結の「起」の終わり。でも、やっぱり「普通」じゃあ面白くないんだよねー。
そしてここからが「ゴーン・ガール」の真骨頂。
面白くなるのはむしろここから!
妻は夫を殺人犯に仕立て上げるため、様々な細工をしてきた事が明かされます。
この辺のロザムンド・パイク、まじやばい!
とんでもない女ですよ!
しかしお金を奪われて一文無しになったり、逃亡生活は計画通りに進みません。
夫は妻にはめられた事を知り、彼女を見つけて、自分の無罪を明らかにしようと奔走します。
TVに出て身の潔白を訴えたり。
不倫相手が勝手にTVに出たりして、計画が邪魔されたりするのも面白い。
クライマックスに向けて、観客の興味は、さあ、どちらが勝つのか?という点に集約していきます。
妻が逃げ切るのか、夫が見つけるか、さあ、どちらだ!?
はい、驚きです。どちらでもありません。
以下、本気のネタバレ。気をつけて!
所持金を奪われてしまった妻エイミーは昔、自分につきまとった元カレを頼ります。
暫く匿ってもらい、ベッドでは激しく愛し合う。
そして喉をカッターナイフで切りつけ、血だるまにして殺します!
何やねんこれ!
もう、わやや!
そして返り血を浴びたエイミーはそのまま、ニックの元に戻ります。
元カレに連れ去られ、監禁されていたが、隙を見て殺して逃げたというのが彼女のシナリオ。
夫ニックも彼女のシナリオにのり、妻を取り戻して安堵する夫を演じます。
そして二人は仲良く暮らします。困難に打ち勝ち、愛を取り戻したという体で。
演じ合う夫婦。それこそが夫婦。そして映画は終わります。
何一つ、予想通りに進まず。すごいです。えぐいです。
あと、怖っ! エイミー、まじで怖っ!しかしたまらなく惹かれてしまう。
ロザムンド・パイクの演技はマジで凄いです。
これ以上の悪女はちょっと思いつかない。
デヴィッド・フィンチャー監督作品って映像美が話題になるけど、何気にテーマが深い。
一級のエンタメ作品なのにいつも文学的な匂いがしますね。
「ファイトクラブ」「ソーシャルネットワーク」とか。好きだわ。
以上です。だから私は感動しました。
おすすめデヴィッド・フィンチャー監督作品
○「ゲーム」
デヴィッド・フィンチャー監督作品の中では有名じゃないけど、面白いですよ。
ウィキペディアによると、一部で熱狂的な支持があるらしいです。一部ってどこ?ここ?
○「ソーシャル・ネットワーク」
フェイスブックの創業者を描いた作品。
ラストシーンが個人的にとても好き。