去年上映された映画ではベスト級。
演出、脚本、演技、撮影、全てが高水準で本当に美しいです。
ミニシアター系でそれほど知名度が高い作品ではないんだけど、お勧めする意味でもつらつらと書いてみます。
ネタバレ度80%
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。
分析
この手の繊細な映画でシナリオについて書くのは野暮なのだが。でも、書きます。
レオとレミ、仲の良い少年二人が、周囲から「付き合ってるの?」と冷やかされ、友情に亀裂が入りだすのが映画開始十分過ぎ。
なかなかに展開が早い。
普通ならしっかりと二人の友情や、家族との関係を30分近く描くところだ。
これだけで好印象です。
説明不足を感じないという事は、とても自然に世界観を、人物を表現できているという事だから。
そしていきなりネタバレになるんですが、
レオはレミをどんどん避けるようになっていき、突然、レミが自殺する。
ここが開始45分。
ちょっと驚きました。
104分の上映時間、まだ半分も進んでいない。
ここまで、本当に展開が早いです。
この手の青春映画って、友情が壊れていく様子、その変化をじっくりと描いていくのがスタンダード。
つまり自殺というショッキングなエピソードが来るのは、クライマックス直前か、ラストです普通は。
正直、ここからどうするの?と思いました。
あと一時間近くもある、一体、何を描くのか?
しかし逆に、傑作の予感も感じました。
このブログでもよく書くけど、よくあるスタンダードな展開から外れる事で名作になるパターンって意外に多いので。
まあ、グダグダになっていくパターンがほとんどなんだけど。
映画はここから主人公レオの苦しみを描いていきます。
本人も観客もレミの自殺はレオのせいだと知っているんだけど、二人が喧嘩していた事を誰も知らないので、作中、彼は一切責められません。
むしろ、親友を亡くして、周りから労わられる状況。
レオはレミが自分を責めるような何かを遺しているんじゃないか、レミの母親は息子の死の理由を知っているんじゃないかと、気が気じゃありません。
探りを入れたりしますが、どうやらレミの母親は何も知らない様子。
ここ、はっきりとは描かず、レミの母親は本当は何か知っているんじゃないのか、レオを疑っているんじゃないのかと観客に思わせる、不安にさせる演出が絶妙です。
そして罪の意識に押し潰されそうなレオは、誰かに、いや、レミの母親に告白したいと思っています。
だが、言えない。
そう、つまりこの映画のテーマは「贖罪」。
いつ言うのか? それとも言わないのか?
この辺り、レオが行動に移すのかどうかが小さなサスペンスになっていて、観客を飽きさせない工夫になっています。
主人公の悲しみを描くだけだと、やっぱり地味で退屈になるところです。
レオは告白するのか?
また、告白を受けたらレミの母親はどうするのか?
このサスペンスがあるだけで作品の強度がグッと上がる。
繊細さを前面に出した、監督のセンスで撮った映画に見えるけど、その点、とてもテクニカル。
だからこそ、これほどの傑作になったのだと思う。
そして主人公の悲しみ、不安、恐怖、その心情の描き方が抜群です。
スポーツをして興奮していても、ゲームをして楽しんでいても、突然、悲しみと不安に襲われる。
普通に生活しているのに、おねしょをしてしまう。
ふとした瞬間に漏らす、「会いたい」という一言が胸を打つ。
そして映画はレオとレミの母親が対峙するラストに向かいます。
その内容は書きません。
未見の方は是非、見届けて欲しい。
本当に美しく、息を呑むラストです。
主演二人の演技にも拍手を送りたい。自然な涙が本当に美しかった。
以上です。だから私は感動しました。
誰もが友人を遠ざけた過去がある。
謝れずに、許せずに、後悔した過去がある。
そんな、遠くに遺してきた感情を嫌でも掘り起こされます。
自分を見つめ直す機会を与えてくれる、本当に素晴らしい映画でした。
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