「ライフ・イズ・ビューティフル(1997)」感想。地獄の沙汰も愛次第の感動作!

ラ行
引用元 映画.com


言わずもがなの名作です。


ここまで力強く「愛」を描かれると、ひねくれ者の私もひれ伏すしかありません。

ホロコーストをこのような視点で描くかという驚きと共に、映画の、フィクションの、無限の可能性にまで思いを馳せる。




ネタバレ度60%
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。

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分析


ホロコーストを題材にした映画と言われる事が多いけど、この映画、前半はシンプルなラブコメです。


ロベルト・ベニーニが意中の女性と出会い、結婚するまでを描く前半は脚本が無茶苦茶テクニカル。


「脚本は小道具」と言われますが、この作品における小道具の使い方はまさに教科書レベルで、帽子、卵、車、鍵などが効果的に使われます。

何気ない描写が見事な前フリになっており、その巧みさは誰が見ても「おー!」と感嘆するレベル。


脚本も担当したロベルト・ベニーニの上手さが光ります。何故こんなに上手いんだろう、コメディアンでもあるらしいのでコントでも書いてたのかな。




そして小道具を効果的に使いながら、主人公が意中の女性を口説いていきます。


この時期の映画を見てよく感じるんですが、この主人公の純愛も、今見ると若干微妙です。


一言で言うと、ストーカー的。


そう感じてしまう事に、愛する気持ちだけで猪突猛進する姿を「純愛」と呼ぶ時代は終わったんだなとつくづく思う。


この主人公、意中の女性が週末、舞台を見に行くと知るや、自分も同じ劇場に駆け付け、上演中は舞台じゃなく彼女をずっと見つめています。






怖いわ。





彼女を家まで送っていき、別れ際、「今夜あなたを抱きたいが、そんな事、とても言えない」というような口説き文句を繰り返す。







女性によってはひく。




ここまで見ていて、いまいちのれない自分がいます。

昔見た時は特に違和感感じなかったんだけど。

時代は変わった、私も歳をとった、そんな寂しさを覚える。




前述しましたが、この頃の映画って主人公の恋情、その純愛の描き方がやばいのが多かった。




名作「ニュー・シネマ・パラダイス」では意中の女性の家の前に毎晩、100日立ち続ける。


100日後、彼女が彼の元に現れ、熱烈にキス。マジか、逮捕されないなら私も立ちます。




邦画でも名作「Shall we ダンス?」では妻子持ちの役所広司さんが街で見かけた社交ダンス講師の草刈民代さんに恋して、その教室の生徒になり、彼女の帰りを待ち伏せして食事に誘う。


公開当時、誰も突っ込まなかったがこの行動、今やアウト過ぎる。


恋愛映画が減った理由はこの辺も影響しているんだろう。




というわけでこの映画、ラブコメの前半は、脚本の上手さは光るが、個人的にはのりきれない印象です。

女性のキャラクターがさほど魅力的に描かれていないのも理由でしょう。

この映画のヒロインはロベルト・ベニーニの実際の奥さんでもあるニコレッタ・ブレスキなんですが、観客に説得力を与えるほどの魅力を放つほどまでには至っていません。





だがこの映画の魅力はやはり後半にある。


結婚し、子供をもうけた二人。だが時代はナチスの台頭でユダヤ人迫害が進んでいます。



ロベルト・ベニーニは「ユダヤ人と犬はお断り」の貼り紙を見た子供に何故だと質問されます。

するとベニーニは答える。


「あっちの店はスペイン人と馬は入れないよ」と。「向こうの店は中国人とカンガルーが入れない」と。


この作品のユーモア、そして方向性が見える見事な台詞だ。




迫害が更に進み、ロベルト・ベニーニと息子、叔父の三人は捕らえられて、汽車に乗せられる。行先は強制収容所だ。


慌てて追ってきた妻は、自分も乗せるように訴え、三人と同じ汽車に乗る。

ここで初めてこのヒロインを好きになりました。





そして強制収容所についてから、ロベルト・ベニーニは息子に「これはゲームだ、一等賞には戦車が与えられる」と教える。


そして彼は息子に強制労働をゲームだと信じさせるために奮闘。





ここからのシーンはほぼ全てが名シーンと言える。



一つ一つについてはもう書くまい。見届けて欲しい。

人が持つ強さ、美しさ、と同時に醜さをも見せる。


特に所内放送で彼が妻に向けて愛の言葉を発信する姿は本当に感動的だ。




正直、無理はあるよ。


この映画に対して賛否両論があるというのも頷ける。ホロコーストの描き方には「甘すぎる」というような批判も多いようだけど、この作品のテーマはその悲惨さを描く事じゃない。


おそらくそのような批判が出るのも分かった上でロベルト・ベニーニはこの作品を撮っている。その覚悟こそが、この映画が持つ力強さだ。



ファンタジーと言えばそれまでだが、それでもこのストーリーでしか語れないメッセージが確かにある。

これほど優しく、残酷な映画は滅多にお目にかかれない。



人生は美しい。



この作品を見ると、強くそう思える。停止ボタンを押した後、狭く、汚い自室を見て一瞬で冷めるけど。



以上です。だから私は感動しました。

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