脚本を語るならやはり扱わないといけないタランティーノ監督作品。
監督デビュー作の「レザボア・ドッグス」はそのフィルモグラフィの中ではオーソドックスな作りなんだけど、それでも既に誰も真似できない個性が溢れてる。
はっきり言って手本にはできません。
やろうとすれば火傷します。
公開当時は凄い映画監督が出てきたみたいな感じで映画ファンの間ではかなり話題になりました。
次回作の「パルプ・フィクション」であっという間にメジャーになりましたけど。
ネタバレ度90%。
未見の方はDVDか配信で! ネタバレが無理な方はUターン。
分析
タランティーノ監督作品は必ず構成が独特なんだけど。
この作品も例に漏れず、構成が凄いのは一目瞭然。
六人組の強盗が犯行に失敗し、この中にいるスパイを探すというストーリー。
スパイを探す展開と同時に、キャラクター紹介の回想が挟まれるという凝った構成。
これ、回想を失くして時系列通りにすれば楽なんですよ、だがそれをしない。
これをやろうと思ったらシーンの組み合わせは無限大、実際に脚本を書き始める前にどれだけ思考錯誤したのかと思う。
何百回、何千回だろう。その粘りが凄いです。
脚本家って基本、さっさと書き始めたい生き物ですから。
やはり語るべきは、この作品でもっとも有名なバイオレンスシーン。
ミスター・ブロンドがさらった警官を拘束し、のりのりで耳を切り落とすシーンです。
このサイコっぷりは当時かなりセンセーションでした。
気の弱い方は見ては駄目です、ドン引きだと思います。
今見てもインパクト大。
これほどのバイオレンスをポップに描く事って、他に無かったんじゃないかなあ。
こうゆうインパクトの強いシーンが一つでもあるとやはり映画としては強いです。
ブロンドを演じたマイケル・マドセン、やばさしか感じません。
たとえ本当はいい人でも、道でばったり会えば目を逸らします。
それほどの迫力。
そして私がこの映画で特に気に入っているのはラストシーンです。
スパイはミスター・オレンジです。
ごめん、言っちゃった。まあ、中盤には明かされますけど。
最後まで命懸けで自分をかばったホワイトに、自分は刑事だと打ち明けるオレンジ。
でもこれ、言う必要無いんですよ。
警察に囲まれていて、黙っていれば助かるんです。
でも自分を信じてくれたホワイトに対して言わずにはいられない、その誠実さに自分も応えたいという心理。
スパイとして嘘ばかりついてきた彼が、たまらず見せる仁義。
いい。
ここは任侠映画を見てきた日本人にはたまらないところです。
日本映画好きのタランティーノも当然と思って描いたのでしょう。
でもこれ、当時のタランティーノがインタビューで「わからないアメリカ人が多かった」と言ってました。
「何故刑事だと言う必要があるんだ?」と。
言わなければ自分は助かるだろと。
そんな事を言う奴とは友達にはなれませんね。嫌いです。
このラストで私はタランティーノが大好きになりました。
以降の作品、好きじゃない作品もあるけど、公開時にはまず劇場で見ています。
ほんと、あらためてラストシーンって大事。
終わり良ければ全て良し。
「いまを生きる」の時も書いたけど、良い作品で終わるか、名作になるかの大きな要素だと思います。
あと、この作品は低予算映画なので、あらためて見ると、ほとんど室内の会話劇です。
何故か感じるスケール感。役者の力量が大きいのか。
会話もタランティーノ得意の小話です。
これ、何で見入っちゃうんでしょうね。
他の脚本家が書いたものと一体何がそんなに違うのか。
実は私にはよくわからない。だれか解明して。
まあ、タランティーノ作品でも退屈な小話の時もありますが。
以上です。だから私は感動しました。
しかしこの作品、低予算映画でわずか90万ドルで作られたとありますが、日本円で一億円以上ですよ。
日本ならそれなりの大作です。
そうゆうの聞くと、ほんと嫌になる。
まあ、市場の大きさが違い過ぎるからしょうがないんだけど。
おすすめタランティーノ監督作品
○「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」
当時ハリウッドを震撼させたシャロン・テート殺害事件を題材にしたフィクション。
あの事件をこう描くかという驚きを感じて、あらためてタランティーノって凄いなあと思った作品。
○「トゥルー・ロマンス」
これは脚本担当作品で、監督は「トップガン」のトニー・スコット。
若いカップルの逃避行。勢いあっていいですよ!
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