今や巨匠とされるパク・チャヌク監督。
「復讐者に憐れみを」「オールド・ボーイ」から続く復讐三部作の最終作とされています。
「オールド・ボーイ」で国際的に評価されてイケイケだった頃だけに、今作も才気あふれる快作で韓国でも大ヒット。
このような陰惨な作品を大ヒットさせただけでも時代の寵児だった事がわかります。
ネタバレ度80%
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。
分析
タイトルの可愛らしさからは想像できない、陰惨な復讐劇です。
まず、冒頭からインパクトがある。
子供を誘拐、殺した容疑で逮捕されたクムジャ(演じるのは国民的人気女優のイ・ヨンエ)をニュース映像で見せる。
逮捕当時二十歳という若さと、圧倒的美貌が話題になった事が紹介されます。
この編集と語り口の上手さ、イ・ヨンエの演技によって、冒頭から一気に惹きこまれます。
そこからクムジャの刑務所での生活、同じ女囚たちに優しくして人望を得た事が描写されていきます。
この優しさには裏があり、出所後に彼らの助力を得るためというのが理由です。
ここでいきなりネタバレになりますが、クムジャは自分の娘を人質に、誘拐殺人の罪を被った事が明かされます。
つまり、クムジャは出所後にこの真犯人を探し出し、殺す事が目的です。
そして仲間たちの協力もあり、出所後に真犯人を捕える事に成功します。
見てるこちらとしては「主人公の目的も達成したし、あとは殺して終わりだな。テンポも良かったし、見せ方も上手くてなかなか面白かったな」と考えました。
しかし時計を見て驚きましたよ、見始めてまだ一時間弱しか経っていない。
え? まだ半分ちょっと?
そう、普通の映画ならここで真犯人を殺し、復讐を完遂して終わる。
だがこの映画は違う。
驚きです、ここからクライマックスに向かっていくんですよ!
私はここから何が起きるんだと前のめり、食い入るように画面に釘付けになりました。
この真犯人は、何人もの子供を殺めています。
クムジャは被害者遺族を集めて、自分たちでこの犯人を殺すか、警察に引き渡すかを決めさせます。
なかなかの唸る展開、そしてこの話し合いが滅法面白い。
被害者遺族たちは自分たちで犯人を殺す選択をするんですが、遺族みんな雨合羽を着て順番を待つその絵面がユーモラス。
刑事から包丁での人体の刺し方をレクチャーしてもらったり、高価な靴に返り血がかからないよう、履き替えたりするディテールも人間臭さが感じられて、本当に上手い。
更には、凄惨に犯人を殺害した直後、みんなで集合写真を撮ったりします。
外連味ある映像と共に独特のユーモア、こんなの、パク・チャヌク監督しか撮れません。
さすが元は映画評論家だけあって、映画を知り尽くした、見事な演出力。
そして主演のイ・ヨンエ、その演技が本当に素晴らしい。
犯人の髪を切るシーン、そのイッちゃってる表情がとてつもない美しさ。
狂ってるシーンが美しい女優さんなんて滅多にいない。
また、優しい笑顔とのギャップも大きく、女優としての力量を存分に発揮しています。紛れもなく彼女の代表作の一本でしょう。
真犯人役の名優チェ・ミンシクも当然、素晴らしい。
子供たちと楽しくお遊戯してる次のシーンでは、食事中に妻をいきなりテーブルに押さえつけてセックスを始める傲慢さ、その二面性はインパクト十分。
DVDの特典映像では彼のインタビューも収録されているんですが、この作品の魅力を「意外性」と語っています。
まさにその通りかと。
先の読めない、驚きの展開が何より魅力的な映画でした。
以上です。だから私は感動しました。
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