リュック・ベッソン監督の「レオン」と並ぶ代表作。
やはりこの時期のベッソンの映像センスは凄まじい。
「レオン」以降は正直なところ、特別好きな作品は無いんだけど、「レオン」以前の才能の煌めきは眩しいほどだ。
そして脚本家としても一流である事をこの「ニキータ」は教えてくれる。
ネタバレ度60%。
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。
でもオーソドックスなプロットだから、読んで見ても面白いと思います。
粗筋
警官殺しの罪を犯したニキータ(アンヌ・パリロー)は、逮捕後に素性を消され、政府御用達の殺し屋として生まれ変わる。
分析
何より素晴らしいのはニキータのキャラ造形。
弱さと凶暴さを併せ持ち、殺し屋になってからも感情の起伏が激しく、泣き喚く。
感情の赴くまま、自由奔放。
かなり幅のある役柄をアンヌ・パリローが見事に演じている。
ビジュアル的にもミニのワンピや下着姿で殺しをして、画的な魅力も抜群。
公開当時、こんなスタイリッシュな女殺し屋は新鮮であり、発明だった。
ベッソンが作り出した「ニキータ」は多くのフォロワーを生んで、今や女殺し屋の雛形。
ハリウッドではリメイクされ、ドラマシリーズも。
この点だけでもベッソンは偉大です。
プロットの展開も秀逸だ。
ニキータが初デートと思って出かけると、その先で初の殺しを指示された挙句、大ピンチに。
笑顔が一転、泣き顔に変わる。
婚約のお祝いで旅行券を貰って出かけ、さあ、セックスだと盛り上がってるところ、仕事の指令が入る。
この折には一瞬で笑顔が消えて、仕事モードに。
ニキータの表情が変わるたび、観客も感情を揺さぶられる。
中だるみを絶対に許さないこの展開、ベタながらもやはり上手い。
映像センスだけに頼らない、ベッソンの練られた脚本作りに感心する。
そしてニキータの恋人となる一般人、ジャン=ユーグ・アングラードの存在がポイント。
殺し屋としてのニキータだけじゃなく、女としてのニキータの顔を見せる事で、作品に奥行きを与えている。
更には彼に正体がばれないように殺しを遂行するため、サスペンスの緊張感が増している。
今回見直してみて、このキャラ配置の上手さに唸った。
初見の時は前半の訓練のシーンが印象的だったんだけど、後半も素晴らしい出来だ。
ラストはビターな感じで終わる。
ここは好みが分かれそう。
クライマックスではニキータ、ほとんど活躍しないからね。
クライマックスを「レオン」のような派手なガンアクションで終われば、この「ニキータ」の評価はもっと上がったと思う。
でもやはりフランス映画らしさがあって、これはこれでいいけども。
以上です。だから私は感動しました。
ベッソンは「レオン」以降、自分の性癖をあまり出さなくなって、個性が薄まった気がする。
エンタメ指向になっていったためだろうけど、アンヌ・パリローやジャン・レノのようにベッソンをよく知る人たちに囲まれて、もう一度好き勝手に撮ってほしいな。
おすすめリュック・ベッソン監督作品
〇「グランブルー」
ダイバーたちを描いた、映像の美しさに息をのむベッソン初期の傑作。
フランスでの大ヒットを受けて、色んなバージョンがあります。
〇「レオン」
もはや説明不用のアクション映画の傑作。
ナタリー・ポートマン演じるマチルダとジャン・レノ演じるレオンのコンビは映画的魅力に満ちている。
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