「善き人のためのソナタ(2006)」感想。一級のサスペンス、そして特級のホラー!

ヤ行
引用元 映画.com

アカデミー外国語映画賞受賞など、様々な映画祭で高い評価を受けた傑作サスペンス。


東ドイツの監視社会を題材にしているが、個人情報漏洩や管理社会化が進む現在こそ、見ておきたい。



ネタバレ度50%
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。

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分析


東ドイツの諜報機関に勤める主人公が反体制と思しき劇作家を盗聴、監視するという内容。


設定だけ聞けばよくある話と言うか、張り込みや盗聴を題材にした映画って結構あります。

そして張り込みの過程で驚愕の事実が明らかになるとかして、娯楽作に仕上げていくのがオーソドックスなんだけど。



この映画はちょっと違う。




驚きの事実とか、そんなものは無い。



ただ主人公が、対象者を盗聴しているうちに影響を受けて変化していく。



権力者の犬となって働く自分。そんな自分は本当に正しいのか?

この主人公の葛藤。そこをテーマに据えているのが珍しく、とても面白い。




やがて主人公は反体制である劇作家とその恋人の女優を助けるようになる。

そのために主人公まで窮地に立たされるという展開。


ここ、サスペンスが一気に増していくクライマックス、登場人物たちの思惑が交錯する様子が本当に出色です。見事な脚本。



やがてベルリンの壁が崩壊し、東西ドイツは統合。

主人公たちの人生も大きく変化します。

人が人を救う、その正しさ、優しさが結実するラストカットはとても感動的だ。





更に、映画序盤に主人公の冷徹さ、優秀さをしっかりと描写しているのも上手いです。


大学で尋問の極意を教えているシーン、実際に尋問しているテープを流し、学生と問答する。


「尋問は忍耐強く、40時間続ける事」
「一睡もさせないのはあまりに非人間的では?」
「時間が経過すると無実の囚人は苛立ってくる。不当な扱いに対して大声で怒りだす。その一方で、罪を犯した囚人は泣き出す」

泣きながら同じ言葉を繰り返す犯罪者の言葉を流し、

「真実を話す者は言葉を変えて表現する。だが嘘つきは、圧力をかけられると用意した言葉に縋りつく」

そのまま、しっかり白状させる様子を流し、尋問のレクチャーを終える。


短いシーンですが、ここ、主人公のキャラ紹介としてこれ以上は無い。

ここで冷徹な印象を観客にしっかりと与えているからこそ、後の彼の変化が感動的になる。見事です。



監督、脚本のフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルクはこれが長編映画デビュー作、33歳にしてアカデミー賞受賞。恐ろしい筆力だ。



東ドイツという社会主義国家、その描き方も非常にリアル。


庶民も日常の会話から気を付けなければならない恐怖がしっかりと描かれています。

国を批判しているのを聞かれたが最後、家族まで不幸に陥る様子はもはやホラー。

庶民相手でも軽く「娘さんが退学になりますよ」とか言って脅します。怖っ!

諜報機関の奴ら、出世目当てなので他人を不幸にさせる気満々です。



他にも美人女優に目を付け、その体を貪る権力者の醜悪さたるや、ただの豚にしか見えません。





主人公を演じたウルリッヒ・ミューエはこの作品がアカデミー賞を受賞した後に急逝されています。

感情の揺れを繊細に表現した、見事な演技でした。


対象者のセックスを顔色一つ変えずに盗聴しているんですが、その直後、女性を買っているのが人間臭くていい。

ちなみに私もアパートの隣室から大学生のお盛んな音声がたまに聞こえます。少しは遠慮してくれ。




以上です。だから私は感動しました。

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