「スティング(1973)」感想。これぞ娯楽サスペンス、その脚本の最高到達点!

サ行
引用元 映画.com


いわずもがなの名作。

アカデミー賞でも作品賞はもちろん、監督賞や脚本賞も受賞しています。

それほど高い評価なのに堅苦しさは一切無く、気楽に楽しめるエンタメとして見事な完成度。

そして見返す度に新たな発見がある。その奥深さに魅了されます。


ネタバレ度70% 一応、オチを書くのは避けました。
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。


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分析


脚本としては本当に完璧です。

ここまで完璧だと思えるのは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」ぐらい。

どちらも脚本の指南書なんかでは必ず紹介されます。




若き詐欺師ロバート・レッドフォードが黒人の相棒ルーサーと金を騙し取る冒頭からいきなり面白い。

その後に彼の向こう見ずな、少し危なっかしいキャラクターを紹介した後、冒頭で騙した相手が大物ギャングロネガンの一味とわかり、あっという間に相棒ルーサーが殺され、レッドフォードも追われる立場に。

映画開始20分で既に主人公大ピンチです。古い映画とは思えない、この展開の早さが良い。



ここでレッドフォードは大物詐欺師であるポール・ニューマンの元へ行き、相棒ルーサーの復讐をする手助けを乞う。

ここ、殺し屋に狙われてただ逃げ回るんじゃなく、すぐに復讐に動き出す主人公のキャラ造形が良いです。


普通の映画なら追いつめられた挙句、逆讐するしか生きる道が無いと決意するようなドラマ、シーンを作っちゃうところなんですよ。そうゆうのが一切無い潔さ、ザ・70年代。


セットアップは完璧だ。




ちなみにこのポール・ニューマンの初登場シーン、良い味出してます。

大物詐欺師とは思えない落ちぶれ感を細かい演出で表現しつつ、貫禄だけはやたらある。

ポール・ニューマンのはまり役だと一目でわかる。



そしてルーサーと友人だったポール・ニューマンはレッドフォードと共に、大物ギャングロネガンを破滅させるため、動き出す。

そこに一切葛藤が無い。この潔さ、ザ・70年代。こうゆうテンポ感、今の映画ももっと取り入れて良いと思う。

そして二人の計画を聞きつけ、ルーサーを慕った詐欺仲間たちが続々と集まってきます。


ここが良いんですよ。


普通に二人が大物に立ち向かうだけのストーリーじゃなく、友情と義侠心で人が集まり、その他大勢のみんなと戦う展開が熱いです。

この点、少数のチームで戦うよくある詐欺師映画と大きく違うところで、この脚本の上手いところ。




そして動き出すレッドフォードとポール・ニューマン。

ポール・ニューマンは大物ギャングロネガンに単身近づき、ポーカーで対決します。


ここ、ただ対決するだけじゃなく、まず油断させるために顔に酒を塗って匂いを撒き、酔っ払いを演じているのがミソ。

更に対決中には相手の名前をわざと間違えて不快にさせるという細かい演出も上手いです。ディテールに映画の神が宿ってる。


このポーカー対決自体も見せ方が上手いです。

ロネガンは最後、イカサマで勝とうとするんですが、ポール・ニューマンは更に上を行く。鮮やか!

悔し気に財布を取り出すロネガン。だがポケットにあるはずの財布が無い。

事前にポール・ニューマンの仲間がスッているんです。


改めて金を受け取るという事で、ポール・ニューマンの使いとして、ロネガンの元にレッドフォードが出向く。



レッドフォードが自然と絡んでくる上手い展開です。


相対するレッドフォードに対して、「お前のボスが強いのは何故なんだ」と尋ねるロネガン。


「イカサマ」とあえて暴露するレッドフォード。更に事前に財布をスッた事までばらします。


観客は「ええ!?」と驚きですよ。何でばらしちゃうのレッドフォード!と。

ここでレッドフォードはロネガンに自分を信用させ、ポール・ニューマンを陥れようと協力を頼みます。

そう、このポーカー対決なんてほんの序章、ただの伏線なんです、物語はここからなんですよ。

恐ろしい脚本だぜ…。




そしてポール・ニューマンが運営する賭場場を舞台に、ロネガンをはめる作戦が始まります。


この賭場場にいる人間たちは全てポール・ニューマンの仲間たち。

まるごと作り上げる、その過程もテンポ良く、ユーモアを交えて見せて面白いです。



もちろんロネガンも美味い話には用心しており、レッドフォードの提案には簡単にのってきません。

そのあたりのレッドフォードとロネガンの駆け引きも面白いです。



更にこの物語に冒頭から大きく関わっているのはレッドフォードを追っている刑事と、殺し屋です。


このスナイダー刑事がFBIと協力し、クライマックスを前に、レッドフォードを捕らえます。

そして人質をとり、ポール・ニューマンを裏切るよう、脅迫する。

レッドフォードは泣く泣く承諾するしかない。

唸る。唸る展開だ。




同時に謎の殺し屋もレッドフォードに迫ります。この殺し屋のプロットはサブ的扱いなんですが、展開に関してはこの作品一番の衝撃です。本当に上手いなあと感心しますよ。



そしてクライマックス、全員の思惑が交錯する最後の決戦を迎えるんですが、観客は一体どうなるのか、全く先が読めません。

詐欺は成功し、ロネガンを破滅させる事はできるのか?

本当にレッドフォードはポール・ニューマンを裏切るのか? そのままFBIに捕われてしまうのか?




そんなワクワクを抱えながら迎える決戦、その興奮ときたら!


全てが鮮やかにまとまるラストはもはや芸術と言っていいレベルです。


特にスナイダー刑事の使い方が上手いんだよなあ。





何てお洒落で粋な映画だ。

大ヒットした軽妙なテーマソングといい、作品全体を包むユーモアも本当に素晴らしい。




何より主演のロバート・レッドフォードとポール・ニューマンの黄金コンビですよ。

ポーズだけでも真似させてくれ。



名作は古びない。むしろ新しい。


以上です。だから私は感動しました。






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