異例のヒットとなった今作。
見ればなるほどと頷ける。シナリオの上手さもさる事ながら、時代性が圧倒的だ。
ネタバレ度50%
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。
分析
この作品について語るなら、まずその時代性が最重要かと。
内容はアメリカ国内の内戦。ifの世界を描く。
トランプ再選と共に、大きく報道されている「アメリカの分断」。
もしかしたらこの先、内戦もあるんじゃないかと危惧される現在、非常にタイムリーです。
映画やドラマって、企画に関して、その時代性が先ず問われます。
つまりは何故今、この映画を、ドラマを作るのか?という問いに対する答えが必要。
面白ければ何でもいいだろうと思ったりもしますが、やっぱり時代とリンクした映画というのはヒットに直結します。
数年前、「ジョーカー」が話題になりましたが、あれも格差が広がる社会に対して非常にタイムリーで、異例の大ヒット。
先日、邦画の「告白」は少年犯罪が大きくクローズアップされていた時期だった事で異例の大ヒットになったと、ブログで書きました。
時代とのリンク、やっぱり大事なんですよ。
現在、日本一の脚本家とされる野木亜紀子さんはこの点が抜きんでていて、「ラストマイル」なんてタイムリーで前評判以上の大ヒット。
「逃げ恥」や「アンナチュラル」とか、代表作はやはり凄いです。
現在、日曜劇場で放映中の「海に眠るダイヤモンド」については聞かないでくれ。
というわけで、この「シビル・ウォー」は企画の魅力がやはり際立っています。
だが待て。凄いのはこれだけじゃない。
このアメリカの内戦という内容で、主人公が報道カメラマンというのも凄いです。
普通なら兵士を主人公に据えるでしょう。
一般人が義憤に駆られて兵士になる、アメリカの正義を求めて、みたいな序盤が想像されます。
しかし報道カメラマンを視点人物にした事で、内戦を客観的に、俯瞰的に捉える事に成功してます。
更にですよ、その報道カメラマンに百戦錬磨のベテラン、キルスティン・ダンストと、猪突猛進な新人、ケイリー・スピーニーを配置。
戦場の厳しさをまだ知らないケイリー・スピーニーがいるおかげで、観客はケイリーの視点と同化し、共感度が飛躍的に上がっています。上手い。
ベテラン演技派と次代の若手スターを並べるというのは「レインマンシステム」と呼ばれており(※私が勝手に命名)、成功パターンが多いです。
更に、更にです、この映画、この報道カメラマンたちがワシントンを目指すロードムービーというストーリーになっています。
この発想はなかなか持てない。
戦争映画とは思えない、意外性のある切り口が、この作品の大きな魅力だ。
映画中盤、強烈なキャラクターが登場します。
戦争に乗じて、息するように人を殺していく男。
お前、誰やねん。
わずか数分の登場なのに、強烈なインパクト。
いいですね、戦争という狂気の世界、やはりこういったキャラが出てくると、映画としては非常にしまる。
クライマックスはワシントンでの市街戦、ホワイトハウスの攻防は見応えあります。
ラストの余韻もばっちり。全く隙がありません。
そしてベテランカメラマンを演じるキルスティン・ダンストの重量感よ。
「スパイダーマン」のヒロインだったのは今や昔、戦場の血と土埃が似合う、演技派に。
素晴らしい存在感を発揮しています。
そしてひよっこカメラマンを演じるのは次代のスター候補、ケイリー・スピーニー。この初々しさよ。
最近は「プリシラ」や「エイリアン」の新作などに抜擢されて、イケイケ状態。
今後の活躍は必見でしょう。ええ、タイプです。
以上です。だから私は感動しました。
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