刑事ドラマとして最高レベルのサスペンス。
情報量が多く、見る度に新たな発見がある。
アカデミー脚色賞を受賞しているだけあって、次から次へと進む展開は絶対に停止ボタンを押させない。
あと、「ナインハーフ」などで高い人気を誇ったセクシーお姉さん、キム・ベイシンガーがアカデミー助演女優賞を受賞して演技派として復活。
これぞ美魔女というべき色気を巻き散らし、作品を艶やかにしているところも見所。
この作品に一つ不運があったとすれば、同年に「タイタニック」が公開された事。
他の年ならアカデミー賞主要部門総なめだったはず。
そう信じてる。
ネタバレ度50%。
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。
粗筋
舞台はロサンゼルス。
全く違う個性の三人の刑事が、ある猟奇殺人事件を追う。
分析
刑事たちが殺人事件を追ううちに、ロス市警の闇が見えてくる。
刑事が刑事たちを疑い、騙し、追い詰めていく展開が抜群に面白い。
警察の汚職という題材はやはり娯楽映画として魅力。
日本では北海道警の真っ黒ぶりが有名で映画にもなったけど、ただの殺人事件を扱うよりは奥行きのあるストーリーになる。
その分、脚本は難しくなるけど。
この映画ではそんな難しい題材を取り扱った上に、全く個性の違う主人公を三人配置している。
これははまれば最高だが、更に脚本は難しくなる。
そして男ばかりだとむさ苦しいと思ったのか、ヒロインとして映画スターそっくりに整形された娼婦、キム・ベイシンガーをキーパーソンとして配置。
これでもう、とんでもなく脚本は難しくなる。
題材とキャラ配置を知ると、二時間の映画にできるのかこれ、と思う。
欲張りすぎじゃないのか、キャラが多すぎて観客は混乱しないのかと。
このとんだ食いしん坊ぶりを見せる題材を、完璧に整理し、娯楽作として見事に昇華させたのがこの作品。
全編を通して、刑事たちの矜持、ロマンさえも感じさせる傑作になった。
素晴らしい筆力、演出力だ。
何より三人の刑事のキャラ造形が完璧だ。
新人で、法を信頼する正義漢、ガイ・ピアース。
暴力、拷問を辞さない熱血漢、ラッセル・クロウ。
お金大好き、賢く振舞うケヴィン・スペイシー。
当時まだ無名のガイ・ピアースとラッセル・クロウはこの作品で躍進。
二人とも素晴らしいが、私的にはラッセル・クロウがベストアクト。
暴力で荒れ狂う折の迫力には圧倒される。
キム・ベイシンガーを殴るシーンなんて、「お前いつもやってるだろ」と感じるほどだ。
(ちなみにプライベートでも短気と粗暴さで有名な俳優さんでもある)。
全くそりの合わないこの三人が独自に捜査を展開し、紆余曲折を経て、ガイとラッセルが共闘するクライマックスはまさに少年漫画的激アツ展開。
罠にはめられてピンチに陥る中、お互いを相棒として戦うクライマックスの銃撃戦、観客の満足度は絶頂に達する。
ラスト、二人の力のこもった握手。
興奮を覚える観客で渋滞だ。
何処まで原作通りなのかはわからないけど、とにかく台詞が洗練されていて、開始すぐに「この作品は間違いない」と思わせてくれる。
新米警官ガイ・ピアースの初登場シーン。
上司に希望部署を聞かれる。
「どの部に行きたい?」
「刑事部です」
「君は政治家タイプだ。腕っぷしのいる部署にはむかん」
「大丈夫です」
「起訴を確実にするために証拠を捏造できるか?」
「ノーです」
「自白を取るために容疑者を殴れるか?」
「ノー」
「更生の望みのない容疑者を背後から撃ち殺せるか?」
「ノー」
「では刑事になるのはやめておけ」
「お言葉ですが、あなたとは違う刑事を目指します」
いきなりロス市警の実態、刑事の矜持、キャラたちの性格が表現される見事な会話。
やだ、何これ凄い。
私はここで、「あ、これはしっかりと見るべき映画だ」と姿勢を正しました。
キャラも多く、事件も複雑なので、誰が誰と繋がっているのか、初見の時はよく理解できないかもしれない。
それでも観客の興味がストーリーから離れる事は無い。
それは主人公たちが誰に、何に葛藤しているのかをしっかり整理して見せているから。
方向性をしっかり見せて、ぶれないからこそ、理解できなくても混乱はしない。
これはやはり圧倒的な演出力なくしてはできない事。
カーティス・ハンソン監督の生涯ベストの出来だろう。
以上です。だから私は感動しました。
役者陣が豪華で有名な作品だけど、端役も素晴らしい。
有名になる前の「メンタリスト」のサイモン・ベイカーや「エイリアス」のロン・リフキン。
見てて嬉しくなります。
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