TVドラマの記事を書く事は無いかなと思ってたんですが、どうしてもこの回は書かなくてはいけない。
それほど凄い回でした。
ネタバレ度90%
まだ未見の方はUターン!配信とかで見て!
今回の大河ドラマは源平合戦から北条氏が覇権をとるまでを描きます。
この第二十話は誰もが知る源義経の最期を描いた回で、ネットは絶賛の声で溢れました。
もちろん、私も絶賛です。
というより、その完成度に恐怖しました何ですかこれ。
この回は義経が奥州藤原氏の平泉に帰ってきたところから始まります。
見どころだらけの回なのですが、個人的に感銘したのは四ヵ所。
まず、捕われの身の静御前が舞を披露するシーン。
その正体がばれないよう、頼朝の前でわざと下手に舞えと主人公、北条義時に諭される静。
最初は従っていたが、何を思ったか突然、見事な舞を披露、頼朝たちに見せつける。
芸への誇りか。己の矜持か。
北条政子は「女子の覚悟です」と言ってました。
格好いいです静御前!
演じる石橋静河さんの凛とした美しさに圧倒されます。好きです。
脚本としてはベタですが、やはり歴史ファン、ドラマファンとしては欲しいシーン。
さすがわかっています三谷さん!
義時は平泉に出向き、義経を追い込む策謀を巡らします。
頼朝と敵対する気は無いのに、徐々に追い込まれていく義経。
次の見どころです。
死を覚悟し、「ここらが潮時だ」と正室の里に語る義経。
ここで里は義経に己の罪を告白します。
「京で義経に刺客を送り込んだのは頼朝ではなく、自分だ」と。
告白を受けて、義経は怒りにまかせて里を殺してしまうのですが、その瞬間、我に返り、懺悔します。
義経が里を殺したのは史実とされていますが、
心中のように殺したのではなく、罪の告白を絡ませるのが上手いです。
小さな史実をドラマ的なエピソードに変える、まさに匠の技。
里は罪を悔いており、義経に断罪してほしかったのではないでしょうか。
静御前のエピソードを物陰で聞いていた彼女は、自分も「女子の覚悟」を見せました。
そんな事まで考えさせられます。
里を演じる三浦透子さんの表情が素晴らしかったです。
更にはここで頼朝とのすれ違い、それは自分の誤解が引き起こしたものだったと知る義経。
人生の皮肉さ、儚さまでも感じられる、良いシーンでした。
そして邸を軍勢に取り囲まれ、もはや自害するしかない状況に追い込まれる義経。
その邸に現れ、対峙する義時。
この回のクライマックスですね。
視聴者も感動的な義経の最期を見せてくれと期待するところです。
さあ、三谷さんは義経の最期をどう描くのか!
工夫の無い脚本家なら、二人がお互いの無念や憎悪をぶつけ合い、涙ながらの別れになるようなシーンを書くでしょう。
驚きましたよ、それがどうだ。
何と義経、義時や頼朝への憤りを語る事など一切せず、鎌倉への攻め方を嬉々として語りだします。
自分なら鎌倉をこうおとすと。どうだ、見事な策だろうと。
これも静御前同様、戦に生きた義経の、己の矜持か。
そして義経は話は終わったとばかり、外で奮闘する弁慶の姿を眺めます。
義時はその場を辞します。
義時と同様、視聴者が見た最期の義経は、奮闘する弁慶を眺め、「いいねー」とはしゃぐ姿です。
湿っぽさなど微塵も感じず、むしろ清々しい。
私はこれ以上魅力的な義経を、見た事がありません。
菅田将暉さん最高でした! ありがとう!
ベタな涙の別れとかより、1億倍素晴らしい。私なら絶対ベタなの書いてた!
更に言うと、
有名な弁慶の立ち往生を、ただ義経が眺めているだけ、全く映像で見せる事無く、歴史ファンの視聴者に想像させているのも見事。
こう描くか!と唸ります。私なら絶対ここで泣かせてやるぜ!と息巻いて書いてます。
そして最後の見どころ。
頼朝が義経の首に語り掛けるラストシーン。
「よく頑張ったな。さあ、話してくれ、九朗。一の谷、屋島、壇ノ浦、どのように平家を倒したのか」と語り掛けます。
ただ頼朝に誉めてほしかった義経の笑顔が視聴者の脳裏に浮かびます。
やがて頼朝は慟哭し、「許してくれ」と首に縋ります。
はい、ここにきてがっつりベタです。しかしそれがいい。
ベタを待っていた視聴者(私もその一人)、もう涙腺崩壊状態。
「いや、殺したのはお前だろ!」というツッコミもちょっと脳裏を掠めるのですが、そこは無理矢理抑え込みます。
ここでタイトル回収。「帰ってきた義経」。
上手い。
上手すぎる。
何やねんこれ…。
他にも義経と弁慶の別れ、「世話になった」「やめてください」という短いやり取り。
藤原秀衡を演じる田中泯さんの演技など、見どころ満載。
他の脚本家は自信無くすので見ない方が良いんじゃないかというレベルです見るけど。
あらためて凄いです、三谷さん。
以上です。だから私は感動しました。