「悪い奴ほどよく眠る(1960)」感想。社会悪に挑む孤高の男を描く、黒澤監督の骨太サスペンス!

邦画
引用元 Amazon



黒澤監督が黒澤プロを設立して製作した社会派ドラマ。

黒澤作品の中でも傑作とされているけど、代表作には選ばれない微妙な立ち位置。
それでも個人的には好きな作品です。


ネタバレ度90%
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分析


社会悪が題材で、現在でこそ強く響く内容。
とにかく役者陣の重厚な演技が楽しめる力作です。


森雅之さんへの復讐に燃える三船敏郎さんという構図なんだけど、この対決は「羅生門」以来かな、強烈なオーラを発する二人なので迫力十分。


前半、三船敏郎さんが正体を隠して森雅之さんの娘、香川京子さんと結婚し、じわじわと内側から追い込んでいくドラマは緊張感たっぷり。

傑作の予感にワクワクします。




そして後半、森雅之さんと志村喬さんの悪党コンビが三船敏郎さんの正体に気付く。


彼こそ、かつて自分たちが自殺に追い込んだ男の息子なのだと。
復讐のため、自分たちに刃を向けているのだと。



しかし三船敏郎さんは自分の正体がばれた事をまだ知らない。



ここからは森雅之さんと志村喬さんのターンになるのがサスペンスの定石です。普通なら。


今までやられた分、一体どんな仕返しをするのか?

三船敏郎さんはどんな形で追い込まれるのか?

黒澤映画なら圧倒的な迫力で魅せてくれるだろうとクライマックスへの期待が募る。




だが、この映画は違う。





森雅之さんと志村喬さんの会話を盗み聞きしていた森雅之さんの息子が、怒りのあまり、いきなり三船敏郎さんに発砲。



三船敏郎さんはその場を逃げ去り、自分の正体がばれた事を知る。



え?



ここがこの作品の評価を分ける分岐点です。



黒澤監督、せっかく盛り上がるサスペンス要素があるのに、ここで見事に放り投げてます。


こうなるともう、定石から外れているため、展開は予測不能。


観客としてはここからどうなるのかと、前のめりになります。
ここで想像以上のものを出せば、傑作になる。



しかしだ。




この作品では、想像以上のものが出てこなかった印象です。


三船敏郎さんは復讐の道具として結婚した香川京子さんを愛してしまった事で、復讐心が揺らぎ、甘さが出てくる。

ここまで高めてきたサスペンス感は薄まり、人間ドラマの色が濃くなる。

まあ、黒澤監督らしいけど。


そのまま、ちょっと拍子抜け感のあるバッドエンドになります。





少し勿体ない気がする。

後半、定石通りにサスペンスで盛り上げようと、この名のある脚本家たちがアイデアを出し合えばどれだけのものが出来上がったかと思う。


と言いつつも、あえて定石を選ばなかった黒澤監督の攻めの姿勢、その作家性も評価したい。


独立プロを設立して、いきなりヒット狙いのエンタメ作品を作るのは観客に対して失礼という思いがあったそうな。流石です。


まあ、この作品がヒットしなかったせいで、次に「用心棒」というヒット狙いのエンタメ作品を作るわけだが。





以上です。だから私は感動しました。



そして香川京子さんのポジションが非常に重要で、面白い。
男が身を滅ぼすのはいつだって女の存在だ。

可憐だ。


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