「アノーラ(2024)」感想。ストーリーを超えた感動に押し潰される傑作!

ア行
引用元 映画.com

傑作誕生です。




特にラストカットが本当に素晴らしい。



本日、発表になったアカデミー賞でも作品賞、監督賞、脚本賞、主演女優賞など、主要部門を独占しました。おめでとうございます。


主演男優賞も取れてたらアカデミー賞史上四作品目のビッグ・ファイブでした。惜しい!




ネタバレ度90%
未見の方は劇場へ! ネタバレ上等な方はお進みください。


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分析


やはり何と言ってもショーン・ベイカーの脚本が秀逸。



目まぐるしく変わっていくプロット展開が鮮やかです。



全体をサラッと書きます。がっつりネタバレなのでご注意を。




ストリップダンサー、アノーラがロシアの道楽息子と享楽的な時間を過ごし、勢いで結婚。



その事実を知った息子の両親が激昂し、手先の者を使って二人に離婚を迫る。


愛を信じて抵抗するアノーラだが、夫は一目散に逃げ出す。


アノーラ、手先の者たちと一緒に夫を探し回る。←この展開がコメディとしてとても良い。


やっと夫を見つけ出し、ついでに息子の両親も現れて、離婚する。






と、普通ならここで夫をぶん殴るなりして、映画は終わる。コメディだし。






だがこの映画は違う。




アノーラは手先の者の一人、ユーリー・ボロソフに家まで送ってもらう。


少しずつ会話を交わし、お互いを理解していく二人。


家の前に着いた車中で、アノーラは没収されていた4カラットの結婚指輪をユーリー・ボロソフから貰う。彼が隠し持っていたのだ。


金に換えれば相当な額になるだろう。


傷ついてなお強く振舞うアノーラへのユーリーの謝意だ。




そこでアノーラはお礼か好意か、ユーリーのシートを倒し、そのまま彼に跨って繋がる。暫く腰を振った後、ユーリーを殴りだす。そして泣き出し、号泣する。



瞬間、ユーリーはアノーラを強く抱きしめる。繋がったままで(※未確認)。



アノーラのぐちゃぐちゃな感情が見事に表現されている。感動で言葉を失うレベルのラストカットだ。



正直ね、このラストまではコメディの良作というレベルなんですよ。

だがこのラストカットが映画のレベルを二つは上げている。

このためにこれまでの二時間弱があったのだとわかる。






これぞ映画だ。






映画としては放蕩息子と離婚して以降は、短いシークエンスで締めるのが定石。何故ならストーリーは終わったのだから。



だが、この映画ではそれ以降も、丁寧にアノーラを、アノーラに寄り添うユーリーを描く。




ここで感じられるのは監督・脚本のショーン・ベイカーがアノーラに向ける愛だ。

報われて欲しいという、ショーンの祈りにも見える。

どうしようもない人達を愛を持って描くショーンの真骨頂でしょう。






感動的な台詞のある映画はたくさんある。

しかし言葉で説明できない感情を、映画の中で表現できた時、それはもう一つ上の傑作となる。




私にとってはそれは、「ニュー・シネマ・パラダイス」と「いまを生きる」のラストシーンだ。

今後、この作品も入れて、たにもと三大ラストと呼ばせていただきます。





コメディとしては、アノーラが手下の者たちと敵対するシーン、一緒になって夫を探すシーンなどは非常に秀逸。

声を上げて笑った。映画館ではそんなの私一人だったけど。






アノーラのじゃじゃ馬ぶりを見事に演じたマイキー・マディソンはアカデミー主演女優賞受賞も納得です。

生きるエネルギーが凄まじく、見てるだけで元気になりますね。




そしてこの映画を傑作にした大きな要因、手下の男の一人を演じるユーリー・ボロソフが素晴らしい。

映画後半からは彼の片思いの映画にも見える。

それほどにアノーラを見つめる視線、振る舞いに意味を持たせていました。


朴訥な中、時折見せる笑顔、これは女性はたまらんでしょう。私と全然違う、禿げ方は似てるのに何故だ顔か。




アカデミー賞受賞と共に、私の今年暫定ベストです。ありがとうございます。






以上です。だから私は感動しました。



ちなみにこの映画、客層が老若男女、色々でした。

しかし何故か70、80歳ぐらいの男女で、一人で見に来てる人が多くいて違和感があった。

ディランを描いた「名もなき者」ならわかるのだが。そっちは全然いなかった。


R18の、それ目当てで来たのかもしれん。みなさん、元気です。

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