「教皇選挙(2025)」感想。完成度において数年に一本の傑作!

カ行
引用元 映画.com


アカデミー脚色賞受賞作です。

完成度においては恐らく十年に一本レベルの傑作。

脚本はもちろん、演出、演技、撮影、音楽、美術、衣装など、全てが圧倒的。


エドワード・ベルガー監督、フィルモグラフィは少ないけど、今後も注目の監督ですね。


ネタバレ度70%
未見の方は配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。


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分析

教皇を決める選挙が題材なんですが、映画冒頭、投票権を持つ枢機卿たちの描写がまず秀逸。

喫煙所で煙草を吸いながら談笑する枢機卿たち。

一人、熱心にスマホをいじる枢機卿も。



非常に人間臭い。


聖職者も同じ人間なんだとさりげなく、しっかりと見せつける。



教皇の有力候補は黒人のアデイエミ、保守派のテデスコ、穏健派のトランブレ、リベラル派のベリーニら。

そして選挙を取り仕切るのはレイフ・ファインズ演じるローレンス枢機卿。


映画冒頭はキャラ紹介の描写が続くが、ここで前教皇が死の直前にトランブレを解任していたという噂を紹介したりと、不穏な空気を増長させている構成が上手い。






説明を極力抑えた演出も見事です。

ローレンスに持論を熱弁するテデスコ枢機卿のシーンがあるんですが、「本気で考えられるか?」と黒人のアデイエミ枢機卿を一瞥する。

これだけでテデスコの黒人への差別意識をしっかりと表現しているのがたまりません。


普通の監督なら「黒人の教皇なんてありえない」と台詞にしてしまうところです。上手い。





キャラ紹介が終わり、第一回選挙が行われると、ローレンスが推すリベラル派のベリーニ枢機卿の票が予想よりも少ない。


更にはローレンスを推す票もあり、焦ったベリーニはローレンスをなじる。

「君が野心家だったとはな」
「誤解だ。私は教皇なんてなりたくない」
「嘘をつくな! 誰だって自分が教皇になった時の名を決めている!」






いや、あなたも選挙前は「それほど教皇になりたいわけじゃないけどね」と余裕ぶってたろ。




ローレンスに当たり散らすベリーニの姿、この小物感、人間臭くて最高です。






そして有効得票数に誰も届かず、何度も選挙が繰り返される。


その中で黒人のアデイエミ枢機卿が優勢になっていき、もはや決まりかとなってきた直後、アデイエミ卿の30年前の性的スキャンダルが発覚して失脚。ここがミッドポイントです。



最有力候補が消え、次はトランブレ枢機卿が有力に。

しかし金で票を集めていた報告書が発見され、これも失脚。





有力候補がどんどんいなくなる中、仕切り役だったローレンス枢機卿が教皇になる決心をして、テデスコとの一騎打ちへ。





ローレンスがベリーニに告げます。


「私が教皇になった時の名はヨハネだ」(←決めてたんですね)





ここからクライマックスに入っていくんですが、ここまでははっきり言って、「よくできた選挙映画だな」というぐらいの評価なんですよ。


この映画が傑作になる理由はここからの30分です。





二人の一騎打ちと見せかけて、ストーリーは意外な展開を見せます。

ネタバレはしませんが、教皇が決まってからも、もう一段、意外な展開に。



そこで選挙前に「確信」を嫌い、「疑う」事をみんなに説いたローレンス枢機卿さえ、「確信」に囚われた人間だった事が露呈し、人間の深淵さを知る事になる凄まじいラスト。


ここに至るまでに二時間あったのだと猛烈に感じる。



ただの選挙映画だと思っていたのに、気付けばとんでもない高みにまで連れてこられた。観客はみな、そんな気分だろう。





この映画こそ聖書だ。




見終わった後、深い満足感に浸れる事必至。






何よりもベテラン俳優たちの円熟の演技合戦がたまらない。

ローレンス卿を演じるレイフ・ファインズ。

「シンドラーのリスト」の頃は三十歳ぐらいだったのか。出演するだけで作品の質を保証する名優です。



小物ベリーニ枢機卿を演じるスタンリー・トゥッチ。

「プラダを着た悪魔」のカッコよさが忘れられない。大好きな役者さん。





トランブレ枢機卿を演じるジョン・リスゴー。

古くは「ガープの世界」での名演が忘れられない。





そしておじさんたちの加齢臭が充満した映画の中で凛とした演技を見せる紅一点イザベラ・ロッセリーニ。

わずか七分の出演でアカデミー助演女優賞ノミネート。

昔は色気むんむんの美人女優だったが、今や貫禄十分の大物へ。




更に全編、まるで絵画のような美しいカットの数々も必見です。




鼻息まで効果音として使う音響も見事。

以上です。だから私は感動しました。



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