「犬も食わねどチャーリーは笑う(2022)」感想。「旦那デスノート」というパワーワードが魅力の企画だけど、消化不良な点も。

邦画
引用元 映画.com

岸井ゆきのさん、中田青渚さん目当てで鑑賞。


「旦那デスノート」というパワーワードにも強く惹かれる。

人間の表と裏を描く題材として申し分なく、シリアスでもコメディでも面白くなりそうな企画だと思います。



そして実際、楽しく見れたんだけど、消化不良感が少し残りました。

その点を少し書きたい。


ネタバレ度80%
未見の方はDVDか配信で! ネタバレ上等な方はお進みください。


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粗筋


日和ひより(岸井ゆきの)は裕次郎(香取慎吾)に隠れて、旦那への不平不満をネットの「旦那デスノート」に書き込んでいる。

その書き込みに気づいた裕次郎は?

分析


開始すぐに裕次郎は日和の「旦那デスノート」の書き込みに気づく。
それが自分の事だとも。


お、展開早いな、いいぞと、期待が上がる。





そして裕次郎は日和の書き込みを読みつつ、表面上は何ら変わらぬ夫婦生活を続ける。


そう、裕次郎は日和の書き込みに対して、大きなアクションはしない。

職場の中田青渚さん演じる女性社員に迫られて、ちょっと不倫に気持ちが傾くぐらい。


そして不倫を疑った日和の「夫が不倫している、離婚は近い」という書き込みを見て、やっと爆発する(ミッドポイント)。

「これを書いてるのは日和だろ!」と。


そして喧嘩して険悪なまま、日和は更に書き込みを続ける。


だが、裕次郎の後輩の結婚式にて、裕次郎の窮地を日和が救い、夫婦仲は良好に。



めでたしめでたし、です。




普通、ここで終わる。


ちゃんと起承転結できてます(転が弱いけど)。
ちなみにここまでで75分です。



映画の上映時間は118分。



え、あと何するの?




ここからどんなストーリーを展開するのか、興味深く見ました。
定石から外れると、意外と傑作になる可能性があるので。


すると、日和は流産した過去を義母に喋った裕次郎に対して激昂し、家出する。
連れ戻そうと奮闘する裕次郎。

さて、夫婦はどうなる?という流れ。


仲直りしたのに、また喧嘩して、クライマックスを作る不思議な構成です。




え、何で?





こうなるともう、「旦那デスノート」なんて、一切出てきません。




この作品、企画の肝である「旦那デスノート」の面白さを軸に見せるのが、定石と言うか、必須だと思うのだが。



ミッドポイントの夫婦喧嘩で、裕次郎は「よくこんな事書き込んで、笑ってられるな!」と詰り、日和は「こんな事書き込んでるから、笑ってられるのよ!」と反論。



これは非常にドラマになる良い衝突だと思う。


コメディにするにしろ、シリアスにするにしろ、このすれ違いをこそ、突き詰めるべきじゃないの?


表と裏の顔、本音と建前、「旦那デスノート」への書き込みを使った夫婦の攻防とかを、手を変え品を変えて見せていくのがこの映画の面白さじゃないの?



観客はそこを見たいと思うのだが。



例えば裕次郎がネカマになって、自分を擁護する書き込みをする、そうすると妻と仲間たちが猛反論、議論が白熱すればするほど、現実の夫婦生活は穏やかになっていく、とか。

「鬼嫁デスノート」を出すとか。

他にも無限に色んな展開ができると思う。



しかしこの映画はその重要なエンタメ要素を、表層をなぞるだけで終わる。

ミッドポイントで喧嘩した後は、日和が書き込んでいる、裕次郎が読んでいる映像だけで、その内容に触れる事もしない。



非常に勿体ない。





監督はラストの夫婦の話し合い、そして和解を描きたかったんだろうけど、観客がこの映画の紹介文や粗筋を読んで、期待したのはそこじゃない。




この夫婦以上に、作り手と観客の間ですれ違いが生じている。




この企画でまず作り手がする事、それは「旦那デスノート」というアイテムをどれだけしゃぶり尽くすかだ。


そこに挑戦しようという意思を感じられなかったのが残念でした。






実は邦画は非常にこのパターンが多い。

キャッチーな企画をせっかく考えたのに、展開や掘り下げが中途半端なまま、終わる。



そこがハリウッドや韓国エンタメに比べると圧倒的に劣る。

(まあ、実際、ハリウッドや韓国映画も選別された映画しか入ってこないから、実際、目も当てられないのもあるんだろうけども)。





と、厳しい意見を書きましたが、ホームセンターに勤める裕次郎の商品知識や蘊蓄を上手く生かしているところや、岸井ゆきのさんの表情、余貴美子さんの存在感など、見所もたくさんありました。


だからこそ市井監督、次作も期待しています!




以上です。だから私は感動しました。



しかしまあ、「旦那デスノート」なんて、結婚してるから書かれるわけで。

誰からも書かれない身としては羨ましい限りですよ。


その意味では、結婚してからもう一度見てみたい作品です。




そうなると、もう見る機会は無さそうだ。

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